アポロ AL-1020 (カセット)
ティーンエイジャー編全集 最新歌謡界速報!!
発売: 1974年?
A1 魅力のマーチ (郷ひろみ) 🅵
A2 ちぎれた愛 (西城秀樹) 🅳
A3 ひとりぼっちの部屋 (高木麻早)
A4 胸いっぱいの悲しみ (沢田研二) 🅺
A6 色づく街 (南沙織) 🅸
A7 草原の輝き (アグネス・チャン) 🅼
A8 中学三年生 (森昌子)☆
B1 みずいろの手紙 (あべ静江) 🅲
B2 わたしの青い鳥 (桜田淳子) 🅳
B3 コーヒーショップで (あべ静江) 🅱
B4 早春の港 (南沙織)☆
B5 青い果実 (山口百恵) 🅲
B6 アルプスの少女 (麻丘めぐみ) 🅵
B7 ひとりっ子甘えっ子 (浅田美代子) 🅸
B8 ひなげしの花 (アグネス・チャン)☆
演奏: アポロ室内レコーディングオーケストラ (☆-歌入り、歌手名不明)
編曲: 無記名
定価: 2,000円
昨年5月1日以来のカセット登場、しかも得体の知れないマイナーレーベルものだ。74年あたりの記憶を紐解くと、父のカーステレオに搭載されていたのは依然8トラックで、カセット市場はまだ発展途上といったところ。自作テープを容易に車内で再生できる喜びを味わったのは、少なくとも76年より後のことで、その時でさえ主流は未だ8トラックだったはず。故に、この時期のパチカセットが今浮上してくるケースは稀で、8トラックの再生環境が絶滅していることも併せて考えると、こういうテープに接するのは実に、禁じられた扉を開けるようでどきどきする(当然、レコード市場にまではこの手のネタが侵食しきってもいなかったわけだし)。
タイトルの「ティーンエイジャー編」という定義がよくわからないが、要するにアイドル歌謡を中心としたコレクションで、家族団欒向きの内容ではない。けど、ガソリンスタンドなんかでは息抜きの素としてよく買われたのでしょうか。シングル盤16枚から自作テープに録音するという行為も、そこまで軽々と行われてはいなかったし。テレコの内蔵マイクをステレオのスピーカーに近づけて、必死に録音したはいいけれど、片方のチャンネルの音しか入ってなくて腑抜けだったって記憶は自分にもありますよ…
例によって、ステレオ再生する環境がなく、侘しく聴いていますが、その聴取態度に迎合したような演奏で、これでよかったんだと思わされる。1曲目の「魅力のマーチ」も、決して骨抜きされた演奏ではないのだけど、「逢いたくて~」のところの譜割が決定的に違っていてずっこける。真価を確かめるためには、シリアスなステレオデッキを買ってくる必要がありますけど…こんなテープではありますが、当時リアルタイムでレコードを買うほどヒットを実感していた「ひとりぼっちの部屋」が今日の今日まで出てきてなかったというのも驚愕で、それを選曲しただけでも鋭い。ただ、メジャーより数歩遅れていた結果かもしれないけれど(爆)。中途半端に演奏が終わってしまう…せこい演奏の割にテンポがかなり上がっている「色づく街」とか、ありがちなアレンジの割に終わり方が普通と一線を画している「草原の輝き」とか、聴き進めていくと、A面の最後で唐突に歌が出てきて意表を突かれる。この「中学三年生」、急に演奏の調子も場末色濃厚になり、特に「蛍の光」の直後の展開にずっこけるのだけど、別のプロジェクトから引っ張ってこられたのだろうか。パチ歌謡の威力に突然別の空気を味わされることになるのだが、まだ「序の口」だった…
B面トップの「みずいろの手紙」はリリカルなピアノが先導し、歌心溢れるフルートが潤いを与えるなかなかの出来で、また元のペースに戻される。「わたしの青い鳥」のイントロもわざわざ超高音を通常のフルートで出していて、敢闘賞ものだ(ピッコロやテープ早回しには聞こえないし、グリッサンドも軽やかだ)。しかし…この鮮やかな展開を「早春の港」が急転させる。これも歌入りなのだが、歌はおまけだ。マイナーレーベルものの演奏の破壊力がイントロから全開である。エルム盤「哀愁のページ」といい、シンシアの曲は一種のリトマス試験紙と化していたのだろうか。歌の間のブラスのオブリガートも怪しい感じだが、この間奏のフルートソロ…これでよくOKが出たよな。先立つ3曲のフルートの印象をぶち壊す、場末ポーツマス・シンフォニアを体現する超珍演奏だ。故に何度でも、巻き戻して聴いてしまう(汗)。以後、この曲を測る物差しはまずフルートソロになってしまった。しかし…ここまで言ったんだから、いざ「吹いて」と言われた時に自分でもちゃんと吹けるようにしておきたいものである。まずは写譜からだな…(汗)
「アルプスの少女」も残念な演奏だけど、これはメジャーにさえこなし切れてない例がいくつもあるので仕方ないとして、「ひとりっ子甘えっ子」は侘しさの体現という点で合格。ラストの「ひなげしの花」でまた歌が入るが、これら3曲全部同じ人が歌ってるやんか。歌手根性があらわになってるといえば聞こえがいいが、それぞれに違う温度差が感じられて、それが「パチ歌謡」の醍醐味なのだ。歌無歌謡と同じまな板の上では、とても語りたくないですけどね…(これら歌入りの3曲に関しては、ヴァージョンカウントの対象外にしてあります)。ああ深い、パチテープの世界。野平ミカや柏野みちや沢和代といったメジャー経験組も、一応録音を残しているし、元しん&ブルー・キャロットの冴草まなみが歌った音源はダイエー・マイパックでLP化されていて、その分容易に耳に入れやすい環境にありますけどね。