黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は山本リンダさんの誕生日なので

キャニオン C-3018 

オール・ビッグ・ヒット・ベスト20

発売: 1973年3月

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ジャケット

A1 春のおとずれ (小柳ルミ子) 🅶

A2 劇場 (ちあきなおみ) 🅷

A3 夜の走り雨 (森進一) 🅶

A4 しのび逢い (尾崎紀世彦) 🅵

A5 男泣き (内山田洋とクール・ファイブ) 🅶

A6 若草の髪かざり (チェリッシュ) 🅴

A7 中学三年生 (森昌子) 🅶

A8 夜明け前 (平浩二) 🅱

A9 女の子なんだもん (麻丘めぐみ) 🅴

A10 円山・花町・母の町 (三善英史) 🅶

B1 狙いうち (山本リンダ) 🅴

B2 女のねがい (宮史郎とぴんからトリオ) 🅷

B3 早春の港 (南沙織) 🅶

B4 怨み節 (梶芽衣子) 🅶

B5 おきざりにした悲しみは (吉田拓郎) 🅴

B6 あなたにありがとう (和田アキ子) 🅲

B7 愛さない愛せない (結城大)☆☆

B8 恋人くん (速水栄子)

B9 青春に賭けよう (西城秀樹)

B10 あなたへの愛 (沢田研二) 🅳

 

演奏: キャニオン・ポップ・サウンズ

編曲: 馬飼野康二、都倉俊一(☆)、鈴木邦彦(☆☆)

定価: 1,500円

 

先日、ストリーミング・サービスで配信されている木村好夫とサム・テイラーの音源をチェックしていたら、その多くがポニーキャニオンのコピーライトだった。他社もがんばって何とかしてと言いたいところだが、その音源の中に69年以前としか思えない録音がいくつかあって、これらは確実にテープ専門レーベルだった頃のポニーに残されたもののはず。レコード化を通り越して現在の主流メディアに落ち着いたというのも複雑なところだけど、ともあれ、聴くものが増えるのはいいことだ。寺内タケシの「歌のないエレキ歌謡曲」シリーズも相当な充実ぶりで、それらだけでも歌無歌謡最良の時代をいい感じでおさらいできる。あとは忍耐強く、ジャンクヤードで補填しましょう。

さて、ポニキャンになる前のキャニオンの歌無歌謡といえば、木村好夫シリーズや「ダブル・ドラムで最新ヒット」(悲しいかな、これは内1枚のジャケットしか所持していない)、あと井上大輔先生がさりげなく残した演奏盤2枚(ブルコメと同名異曲「草原の輝き」を、複雑な感情を抱きつつ演っていそう…)がよく知られているが、それ以外の軽量級ヒット曲集もスルーできないところ。73年のこの盤も、「恋人くん」なんて地味に美味しい選曲があるし、自社曲2曲はオリジナルのオケを使用。アレンジャークレジットが、露骨にその事情を物語っている。狙いうちなんて、他の曲と明らかに違う質感のサウンドに、サックスを被せているのみ(御本家に「きりきり舞い」のインスト盤がないの、ほんと惜しい)。もう一つのオケ使用曲は、ニューアイドル結城大のデビュー曲「愛したい愛せない」。鈴木邦彦らしい、GSの残り香漂う派手な曲で、「銀色のグラス」や「クールな恋」からおろしてきたようなフレーズも満載。そこから3曲、畳み掛けるように鈴木邦彦曲が続くのだ。この頃は特に、ヒットしなかった曲に隠れ名曲が多いですね。「恋人くん」も、イノセントなイントロからテナーのメロに入ると、どことなくアダルト色が。この曲を初め、「劇場」「若草の髪かざり」で、ラブリーなリコーダーが大活躍する(但しメインメロ以外)。このところ黄昏ではバズりまくりの「早春の港」も爽やかなこなしぶりで、フルートもしっかり、間奏でがんばっている。先日ひとカラにいって、5分の1くらいのテンポで何とか、この間奏を譜面なしで吹けましたよ(汗)。

クリスタル・サウンズとかに比べると、全体的にリズム勢を際立たせたミックスが若々しさを強調していて、その辺が「キャニオンらしさ」なのかな。80年代中期以降のいかがわしさは、まだまだ遠い未来。