黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は湯原昌幸さんの誕生日なので

クラウン GW-5209 

愛する人はひとり・雨のエアポート 哀愁のギター・ムード

発売: 1972年1月

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ジャケット

A1 愛する人はひとり (尾崎紀世彦) 🅶

A2 流れのブルース (森進一) 🅳

A3 愛があれば (湯原昌幸) 🅱

A4 ちょっと待って下さい (サム・カプー) 🅲

A5 純子 (小林旭) 🅱

A6 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅷

A7 涙から明日へ (堺正章) 🅲

A8 終着駅 (奥村チヨ) 🅷

B1 雨のエアポート (欧陽菲菲) 🅸

B2 お金をちょうだい (美川憲一)

B3 水色の恋 (天地真理) 🅶

B4 長崎慕情 (渚ゆう子) 🅳

B5 子供達に聞かせる歌 (ジローズ)

B6 忘れな草をあなたに (菅原洋一) 🅳

B7 ともだち (南沙織) 🅷

B8 遠くはなれて子守唄 (白川奈美) 🅳

 

演奏: いとう敏郎と’68オールスターズ

編曲: 福山峯夫

定価: 1,500円

 

この時期のクラウン盤なのに既紹介の曲が皆無とは、かえってやりづらい…まったり聴けるいとう敏郎単独盤。霧のように居場所を包む場末感の強い音に、ただただ酔いしれるしか術がない…んだけど、この時期の曲がそんな解釈を抱擁できる器の強さを軒並み揃えているだけに、文句は言えないのです。ゆったり進んでいく音の群。今日誕生日の湯原さんの曲は、「雨のバラード」ではなくその次作「愛があれば」。あまり目立たない曲だけど、地味にベースが暴れていたりしていい演奏だ。この曲や「長崎慕情」で聴けるフルートの澄んだ音は清涼感そのものだし、「ちょっと待って下さい」も、無力なソフトロック感がいい感じでチルアウトを催す。「悪魔がにくい」「ともだち」といったやたら取り上げられている曲になると、やはり和楽器版のような特殊なアレンジのものが恋しくなってしまうけど、この手堅い演奏も決して憎めないし。スタンダード以上でも以下でもない故に、雑然とした場所での使用に耐えたこの盤も、結果的に昭和の空気を封印したノイズまみれのアーティファクトと化して、令和のターンテーブル上で再度回されることになるのだ。綺麗な音でリマスターされたこの音楽を、最新のプラットフォーム上に求める世の中が、果たしてやってくることはあるのだろうか…