黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は山室(白鳥)英美子さんの誕生日なので

国文社 SKS-015 

ムード・イン・フォーク

発売: 1970年

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ジャケット

A1 白いブランコ (ビリー・バンバン)Ⓐ 🅼

A2 まごころ (森山良子)Ⓐ 🅶

A3 悲しみは駆け足でやって来る (アン真理子)Ⓐ 🅸

A4 フランシーヌの場合 (新谷のり子)Ⓑ 🅴

A5 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🅼

A6 いいじゃないの幸せならば (佐良直美)Ⓑ 🅶

B1 禁じられた恋 (森山良子)Ⓐ 🅹

B2 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー)Ⓑ 🅶

B3 悲しくてやりきれない (ザ・フォーク・クルセダース)Ⓐ 🅱

B4 愛しのマリア (小宮あけみ)Ⓒ

B5 風 (はしだのりひことシューベルツ)Ⓑ 🅿︎

B6 時には母のない子のように (カルメン・マキ)Ⓑ 🅾

 

演奏: Joseph Meyer & Midnight Sun Pops

編曲: S. MoriⒶ、Y. MakiⒷ、S. TanabeⒸ

定価: 未設定

 

アーティスト・ネーム表記に関しては、なるべくデリケートになるよう心がけているんですけど、「トワ・エ・モワ」に関しては不覚でしたわ…大抵はレコード買った時にメモったものをコピペして済ませているので、細かいチェックが行き届いてなかったりして。で、ネット記述はおろか、公式なレコードに於いても結構「トワ・エ・モア」になってたりする例が多いから注意せねばなのです。「ベッツイ&クリス」はずっと気にしていたのになぁ(公式仕事で一度指摘されたからしょうがないです)。というわけで山室さん、いえ白鳥さんすみません…今年に入ってからはちゃんとチェックしてます(注: この文は3月12日以前に書きました。その日の朝にSNSで起こったことに関しては、敢えて触れません)。

3月後半はセンチなムードになりがちだからか、まったりとしたギター演奏の盤を大量にスケジューリングしてしまったのですが、そんな中の1枚で、昨年「歌謡フリー火曜日」で紹介したドラム盤を例外とすると、国文社の第一期配本『ムード・ミュージック・ライブラリー』のアルバムの中で、唯一紹介するのがこの盤。他は半分洋楽だったり全部洋楽だったり、内容的にも新鮮味がないし、ジャンク市場氾濫率もめちゃ高いので、敢えてスルーということになりましたが。69年にありがちな選曲のフォーク・ムード盤ですが、第二期リリースの『フォーク・ムード』の革新性に比べると、あくまでもまったり、安らぎの中を淡々と進んでいくサウンド。2作リリースされている『ムード・イン・ギター』編でも堅実なプレイを聴かせているジョセフ・メイヤーなる人物、たまに他社盤で名前を見ることもあるけれど、やはり誰かの隠れ名義なのだろうか。おなじみの曲がそれ以上でも以下でもなく、空気のように流れていくが、「愛しのマリア」だけは例外で、これは吉屋潤による韓国メロディー。小宮あけみによる日本語ヴァージョンが当時リリースされたが、フォークの文脈で語られるのは珍しいはず。フルートをフィーチャーしたさわやかなアレンジで、全体の中ではいいアクセントになっている。ワールド・ミュージックという概念がない時代に、フォークの枠内で世界各国の旋律を吸収するのは有効な手段だった。地道な貪欲さが、音楽の豊さを広げていったいい時代だった…シンプルな楽器編成で聴かせる歌無フォークは、演る楽しみをも聴き手に植え付けたに違いない。そこに楽器があれば、演りたくなってくるはず…たとえ上手くなかろうが。