黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1971年、今日の1位は「知床旅情」(4週目)

コロムビア ALS-4574

オール・ヒット・パーティ! 花嫁/無駄な抵抗やめましょう

発売: 1971年4月

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ジャケット

A1 花嫁 (はしだのりひことクライマックス) 🅺

A2 京都慕情 (渚ゆう子) 🅳

A3 望郷 (森進一) 🅶

A4 ビューティフル・ヨコハマ (平山三紀)

A5 すべてを愛して (内山田洋とクール・ファイブ) 🅳

A6 抱擁 (ヒデとロザンナ)

A7 止めないで (いしだあゆみ) 🅲

B1 無駄な抵抗やめましょう (ちあきなおみ) 🅱

B2 卒業させてよ (和田アキ子)

B3 空に太陽がある限り (にしきのあきら) 🅳

B4 めまい (辺見マリ) 🅱

B5 愛でくるんだ言訳 (安部律子) 🅳

B6 バラの革命 (弘田三枝子)

B7 知床旅情 (加藤登紀子) 🅷

 

演奏: 稲垣次郎 (テナー・サックス)、木村好夫 (ギター)/新室内楽協会

編曲: 河村利夫

定価: 1,500円

 

おお、これはいいジャケットだ。『さわやかなヒット・メロディー』や『ギター/フルート歌謡ベスト20』よりも好き。完全に唇を隠しきってないところがかえっていいし、でもこれは「笛のアルバム」じゃないんですよね。主に保守路線の歌無歌謡アルバム作りを貫いてきたコロムビアのALS品番が、『オール・ヒット・パーティ』のコンセプトを掲げ、一気に若返りに転じたその第1弾。洋楽制作部から発展してのHS品番シリーズに挑戦状を叩きつけたわけで、社内競争も活発だったんでしょう。売る側としては大変だったと思われるけど。

従来の稲垣/木村/河村体勢は保たれているけれど、若干ノリが軽くなったというか、若々しい躍動感めいたものが出ているイメージだ。と言っても、「花嫁」はまだまだおとなしい。ユニオン盤の狂気に比べたら当然だけど、革新的なポップ路線を捉えるにはまだ形にはまりすぎてるというイメージで、フィーチャーされている二人の固い部分が出ちゃってる印象。対して「京都慕情」には適度にドライヴ感が与えられ、新しい感触をこのシリーズに植え付けている。1曲置いて、どう料理しようが拒めない「ビューティフル・ヨコハマ」。当然自社アドバンテージがあるので、半端なサウンドになるわけないし、名曲だもんね。B面に行くと「無駄な抵抗やめましょう」「卒業させてよ」と、歌手のイメージ的には相対的に地味な曲ながら、快調に飛ばしまくりだ。手堅い演奏を乗せるバッキングのまとまりの良さがポイント。「めまい」はブレイク早々新興のワーナー=パイオニアが奪っていった辺見マリへの、涙ながらの古巣リベンジだが、そこまで手厳しいものではない。「バラの革命」で気合入れて歌いまくるサックスとギターを堪能した後は、最後の到達地点…でもやはりコロムビアのこと、曲名表記は「しれとこ旅情」になっている。去っていった歌姫への惜別より、オリジネイターの意地の方がずっと大事だろう。優しいフルートの響きは、ジャケットの印象の音像化。今はもう、この曲を素直に聴けない…黙って思いを馳せるのみ。ただ一言、歌手に罪はありません。罪なき者を傷つける奴に天罰が下ればいい。