黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は森山加代子さんの誕生日なので

コロムビア ALS-4489

いつか何処かで…白い蝶のサンバ 

発売: 1970年3月

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ジャケット

A1 いつか何処かで (千賀かほる)

A2 私が死んだら (弘田三枝子🅸

A3 命をかけて (ユミ・ハビオカ)

A4 喧嘩のあとでくちづけを (いしだあゆみ) 🅶

A5 さよならの総括 (新谷のり子) 🅱

A6 ダニエル・モナムール (辺見マリ)

B1 白い蝶のサンバ (森山加代子) 🅸

B2 花のように (ベッツイ&クリス) 🅵

B3 笑ってごらん子供のように (ヒデとロザンナ)

B4 モーニング・ブルース (沢知美)

B5 あれから君は (カサノヴァ7)

B6 朝がくるまえに (ちあきなおみ) 🅲

 

演奏: 木村好夫 (ギター)、河村利夫 (アルト・サックス)/コロムビア・オーケストラ

編曲: 河村利夫

定価: 1,500円

 

元々、沢知美さんの誕生日である昨年10月8日にアップする予定だった内容でしたが、例によってあんなことになり今日まで保留しました。というか、昨年10月7日に起こったことがあまりにもドラマの連続で、今となっても信じられない。それまでに積み重ねたことの一部がものを言ったのかも。願わくばその連続で行きたいところだけど、そこまで身体が許すかどうか。あの夜、地震があったことも思い出したり。

というわけで、森山加代子さんの誕生日、おまけに「白い蝶のサンバ」が3週目の1位を記録したダブルおめでたい日に照準を合わせ救い出しました。天国にいる森山さんに届くように。奇しくも、2日連続木村/河村ワークスになってしまいましたが。

曲名だけ見て、即座に「なるほど…」とピンと来た方は鋭い。この時期にしては異例の、「100%自社推し」インストアルバムである。当時のコロムビア内部で歌謡を扱うレーベルは4分化されており、その全てを代表するポップス系女性歌手(一部混成グループ含む)に的を絞ったというだけでも、相当のゴージャス感が伺える。全曲オリジナルの新曲という点では、既に紹介済みの『ハワイアン歌謡アルバム』や『さわやかなヒット・メロディー』でさえも到達できなかった境地を実現しており、65年以前の歌無歌謡実践史は無駄になってなかったということだ(まさか…)。

誰でも知っている大ヒットと言える曲は2曲かそこらで、あとは特大ヒットの勢いに乗って出されたけどそこまで盛り上がらなかったのが5曲ほど。歌手自体の知名度がそこまででもないのが…数えずにおく(可愛和美とか沢和代とか、取り上げられなかった人達に失礼ですしね)。移籍してきた人が4.5人ほどいれば、じきに他社に移籍してしまう人も2人ほど。そんな、錚々たるラインナップ。故に、均一化されて聴きやすい流れの上に成り立っているアルバムだ。主役が好夫ギターなので尚更。おなじみの曲を余裕綽綽のプレイで聴くのと違う、こんな曲でも持ち味が出せるのねという発見。アレンジに加え、自ら作曲した「いつか何処かで」のセルフカヴァー(?)に挑んでいる河村利夫氏のジェントルなプレイも効いている。個人的贔屓目もあるけど、「ダニエル・モナムール」の出来が出色。滅多に取り上げられなかった曲故、新鮮な歌無解釈である。「白い蝶のサンバ」で左側に固定し、シャープに8分キックを決めるバスドラなど、細かい部分にもついつい耳が行ってしまう、刹那な一枚。