黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

高田恭子さんの誕生日は10月24日

大映 DAL-14

魅惑のテナー・ヒット歌謡を歌う=2 港町ブルース

発売: 1969年7月

ジャケット

A1 港町ブルース (森進一) 🅾

A2 涙の中を歩いてる (いしだあゆみ) 🅸

A3 星のみずうみ (布施明) 🅲

A4 涙の日曜日 (ザ・スパイダース) 🅱

A5 気まぐれブルース (青江三奈) 🅳

A6 夜明けのスキャット (由紀さおり) 🅾

B1 粋なうわさ (ヒデとロザンナ) 🅷

B2 美しき愛の掟 (ザ・タイガース) 🅱

B3 時には母のない子のように (カルメン・マキ) 🆁

B4 みんな夢の中 (高田恭子) 🅷

B5 京都・神戸・銀座 (橋幸夫) 🅴

B6 七色のしあわせ (ピンキーとキラーズ) 🅸

 

演奏: 尾田悟 (テナー・サックス)/ザ・サウンズ・エース

編曲: 池田孝

定価: 1,500円

 

ユピテルの初期歌無歌謡レコードで演奏者としてクレジットされていた団体「ザ・サウンズ・エース」。その演奏に東宝レコードの「ミラクル・サウンズ・オーケストラ」の音源が使いまわされていることが次々に発覚して、混乱の境地に入っていますが、元はと言えば「ザ・サウンズ・エース」名義は東宝のライバル、大映レコードの所有物で、67年のテイチク傘下での発足から、70年コロムビア傘下に移った後の活動末期まで使われていました。その頃の制作陣がユピテルに移ったとか、そういう事情が考えられますが、実にこそばゆいですね…

歌無歌謡に力を入れていたテイチクに属していただけあり、精力的に歌無盤を制作してはいたけれど、会社のカラーを反映したユニークな盤はあったりなかったり。今日紹介する69年夏のヒット盤は、選曲がコモンな分そこまでそそってくれず、いくつかのシングル盤で聴かれた独創的な音作りの影も感じられない。最も目を引くのは美麗なジャケットで、さすが映画会社だなと感心。美品で巡ってきて良かった。ヴァージョン林立しまくり曲が並ぶ中、GSの2曲がどっちかと言えば貴重だが、「涙の日曜日」は通俗側に寄せすぎていていまいちだし(ここまで賑々しいブラス入れなくても)、「美しき愛の掟」はそうしたことでかえって滑稽な出来で、ネタ的な味が出ている。右側で鳴っているギターがふてくされてるようなプレイでいい。「星のみずうみ」でのギターがもろ好夫フレージングなのだけど、まさかこれも!?。どたどたしたドラムも良い意味で逆効果だし、エンディングの混沌を敢えて再現してないのもいい。「夜明けのスキャットはテンポが相当速く、妙な転調をしまくる上エンディングがフェイドアウトしている(池田氏の元バンドメイト・山倉たかし氏に対抗心燃やしまくったか!?)一方で、「時には母のない子のように」は、異例なほどあっさりと演奏されている。この2曲ではフルートも複数活躍しているけれど、これらを聴くと大映の歌謡シングルの隠れた名作、美幌波子の「わたしの海よ」(69年8月)を思い出す。演奏の内、旋律楽器のほとんどがフルートという鮮やかなアレンジで、曲も名唱名曲だし、歌無盤で聴いてみたかった…さすがに、そこまでの自社推しは慎んだか。なおこの人は皮肉にも、大映で2枚シングルを出した後、美幌恵子と改名し、東宝レコードに移籍している(!)。

さて、明日も大映レコードの盤を紹介することになっていますが、そちらは生半端な盤じゃありませんよ…