黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

辺見マリさんの誕生日は10月5日

マリオン W-7001 

最新歌謡ヒット・パレード ポップ・ヒット編

発売: 1971年1月

ジャケット

A1 昨日のおんな (いしだあゆみ) 🅶

A2 つぶやき (森山良子)

A3 愛こそいちずに (小川知子) 🅳

A4 初恋の人に似ている (トワ・エ・モワ) 🅴

A5 わたしだけのもの (伊東ゆかり) 🅶

A6 私生活 (辺見マリ) 🅶

B1 X+Y=LOVE (ちあきなおみ) 🅵

B2 そっとおやすみ (布施明) 🅳

B3 手紙 (由紀さおり) 🅵

B4 愛は傷つきやすく (ヒデとロザンナ) 🅶

B5 愛のきずな (安部律子) 🅵

B6 夏よおまえは (ベッツイ&クリス) 🅴

 

演奏: 松本浩とマリオン・ポップス

編曲: 松本浩

定価: 1,800円

 

まだ未開拓の地はあった…ビクター洋楽の第3勢力、ワールド・グループ傘下に発足した第2の邦楽レーベル、マリオン。カントリー指向の強いグリーン・シティに比べるとより歌謡の本流を狙い、大ヒット曲は生まれなかったもののそれなりにカルトなシングルを何作か残し、アルバム界では瀬川洋、成田賢をフィーチャーしたセッション・アルバム『フレンズ』が比較的知られている方かも。W-7000品番には合計5枚の歌無アルバムが残されているが、レーベルの門出を祝っていきなり2枚出した片方の「ポップス編」が今日紹介するこちら。

アレンジャーとして起用されたのは、ビクター本体で洒落たセンスを発揮していた松本浩氏。洋楽レーベルとして育まれた豊潤なサウンドパレットの中で、シンプルながら精度の高いサウンドが蠢いているイメージだ。それぞれの音に存在感があって、くっきりと際立ちながらまとまっている。エフェクトに頼ることを避けつつ、独特のヴァイブレーションを伴って奏でられるギターがまず印象に残る。他の歌無レコードではあまり聴けない性質の音だ。ムーディにまとめられた序盤3曲を抜けると、明朗な「初恋の人に似ている」へ。ギターによる歌い出し早々、いきなりサイドで舞い始めるフルートに胸キュン。2コーラスに差し掛かる寸前あたりでいきなり前に出てきて、純真なその響きでさらにハートを鷲掴み。ちょっと巻き舌混じりのところに尺八的ニュアンスを感じさせながら、まさに初恋の人的カラーを振りまきまくる。やっぱとろけますなぁ…リズムセクションの抜けの良さが印象に残るのは「私生活」「X+Y=LOVEでも、出だしからフルートがラブリーにさえずりまくる。3年後なら、恐らくリコーダーで奏でられただろうフレーズだけど、この複雑に絡み合う喫茶店グルーヴには、横笛の方がお似合い。2コーラス目はめちゃオンマイクで主旋律を繰り出され、余計にドキドキする。スインギーにこなされた「そっとおやすみ」も格別。「手紙」で聴けるサックス、フルートのハーモニーにも萌えまくり。エコー成分が少ないミックスが、余計ダイレクトなときめきを誘発するのだ。まさにいい再生環境を要求する音、理想の響きを実現した1枚。果たして、姉妹編「演歌・ブルース編」では、このカラーをどう生かしているのだろうか?「ニコイチ」で舞い込んだので、答えは必ずお届けしますよ。