黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

遠藤実さんの誕生日は7月6日

ポリドール MR-8421~22

最新歌謡ヒット・ベスト28 ロンリー・ウルフ~銀河鉄道999

発売: 1979年10月

ジャケット

A1 ロンリー・ウルフ (沢田研二)Ⓐ

A2 勇気があれば (西城秀樹)Ⓐ 🅰→10/15

A3 おもいで酒 (小林幸子)Ⓑ 🅳→10/15

A4 夕陽のなかで (岸田智史)Ⓐ

A5 惑いの午後 (ジュディ・オング)Ⓐ

A6 新宿みなと町 (森進一)Ⓐ 🅳

A7 マンデー・モナリザ・クラブ (ピンク・レディー)Ⓐ

B1 微笑の法則 (柳ジョージ&レイニーウッド)Ⓐ 🅱

B2 思い過ごしも恋のうち (サザンオールスターズ)Ⓐ

B3 舟唄 (八代亜紀)Ⓑ 🅵

B4 サンタモニカの風 (桜田淳子)Ⓒ

B5 よせばいいのに (敏いとうとハッピー&ブルー)Ⓐ 🅱→10/15

B6 チャンピオン (アリス)Ⓒ 🅱

B7 他人船 (三船和子) 🅳

C1 銀河鉄道999 (ゴダイゴ)Ⓐ

C2 しなやかに歌って (山口百恵)Ⓐ 🅱→10/15

C3 夢追い酒 (渥美二郎) 🅵→10/15

C4 青春の一冊 (野口五郎)Ⓐ

C5 燃えろいい女 (ツイスト)Ⓒ 🅱

C6 みちづれ (牧村三枝子) 🅵

C7 夢想花 (円広志)Ⓒ 🅵

D1 魅せられて (ジュディ・オング)Ⓕ 🅳→10/15

D2 ガンダーラ (ゴダイゴ)Ⓒ 🅳

D3 花街の母 (金田たつえ)Ⓒ 🅶

D4 カサブランカ・ダンディ (沢田研二)Ⓒ 🅲→10/15

D5 与作 (北島三郎)Ⓒ 🅴

D6 美・サイレント (山口百恵)Ⓒ 🅲

D7 北国の春 (千昌夫) 🅶

 

演奏: ポリドール・オーケストラ

編曲: 京建輔Ⓐ、しかたたかしⒷ、伊部晴美Ⓒ、只野通泰Ⓓ、竹村次郎Ⓔ、川上了Ⓕ

定価: 2,500円

 

「人は中二の時にハマったものに人生を左右される」というけれど、自分の場合もそうで、現在にまで引きずる音楽的嗜好の中核は、まさにその時期に形成されたものだ。最新のヒット曲のみならず、廉価盤アルバムなどで味わった「旧譜の重要性」然り、なんに対しても吸収したい年頃ですから。そういう音楽を集めてセットリストを組んで、いろんな世代の友人に同趣の選曲をしてもらい「リアルチュウニズムナイト」というDJイベントをやったこともあるし。もちろん、最新歌謡ヒットに対してもそう。積極的に聴くことはなかったけれど、多くの曲が脳裏に染み付いているし。そういった曲の多くが、この歌無コンピレーションに収録されている(ここで改めて計算式を実行しないこと!)。先のイベントでかけた「虹とスニーカーの頃」は入ってないけど、アリスとピンク・レディーの別の曲はかけたし。

79年はそして、遠藤実先生にとってまさに実多すぎの年でもあった。ここには彼のキャリアを代表するクラシック曲が4曲入っている。さすがに演歌は敬遠したい年頃だったけれど、父がはまっていたのもあって親しみはあったし。その14年後、道を誤ってミノルフォンマニアになり、中古シングルを買い集めることになるのですから。これこそ「2度目の中二」の為せる技でしょうか。

クラウンが歌無歌謡乱発をやめて半年経った後のリリースだけに、余計密度の濃い印象で、ほぼ全ての曲に大ヒットというイメージがある。先の「虹とスニーカーの頃」や、夏休みに米国に3週間ホームステイしていて帰ってきたら社会現象化していて腰が抜けた「関白宣言」は間に合わなかったものの、自社の財産ジュリーの最新曲というアドヴァンテージが決めてとなった「ロンリー・ウルフ」をタイミングよく1曲目に持ってきて激推しだ。ジュリー本人もお気に入り、「阿久悠時代」最後の曲となった記念碑的同曲、自分も大好きなんだけど、気合入ったサウンドなのに1コーラス半で終わって物足りない。国民的アイドルからの脱却を見せ、本人たちのお気に入りという同じような立場の曲がピンク・レディー「マンデー・モナリザ・クラブ」。こちらも相当がんばった歌無化で、70年代のおしまいを痛烈に感じる。

76年までのポリドールからは考えられない、芸風を匿名化した上複数のアレンジャーを招いての「クラウン化」した作りのわりに、サウンド的実験性はそれほどでもなく、ソリーナを多用しての簡素化がかえって印象を曖昧にしている部分もある(「勇気があれば」のイントロとか)。リードをとるサックスの音も、情念は何処へやらフュージョンの風に吹かれて軽やかな響き。クラウンのカラフルな音が恋しくなってしまうし、「しなやかに歌って」「夢追い酒」もコーラスのあるヴァージョンに負けてしまう。それでも、カラオケ対応ヴァージョンに終わっていないのは、伊部御大に率いられた老舗の意地だろう。曲によってフルコーラスのものもあり、端折られたものもあり(主に前者が演歌の場合が多いが、「新宿みなと町」「サンタモニカの風」など逆パターンも)、その辺も印象を散漫にしてるような。それでも、ガンダーラから「花街の母」に落とすような展開が、やっぱ歌謡曲が豊潤だった頃のアナーキーを感じさせて、あの時代の甘酸っぱさを思い出させる。クラスのマドンナが、例え「燃えろいい女」「与作」(このヴァージョン、サックスの人が最後に意地を見せてハッとさせる)みたいな曲でさえリコーダーで奏でながら駆け寄ってくる、あのときめきを猛烈に音像化してみたい。あんな純真な時代でさえも、「あなたの◯◯◯◯が欲しいのです」の「◯◯◯◯」に、平然と「右によっちゃったもの」を入れて歌ったりしていたな(爆)。