黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

植田芳暁さんの誕生日は2月7日

ユニオン UPS-5160

真赤な太陽

発売: 1967年8月

ジャケット

A1 真赤な太陽 (美空ひばり)

A2 僕のマリー (ザ・タイガース)

A3 ブルー・シャトウ (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅲

A4 太陽の翼 (ザ・スパイダース)

A5 明日への道 (ザ・ワンダース)

A6 君に会いたい (ザ・ジャガーズ) 🅱

B1 シーサイド・バウンド (ザ・タイガース)

B2 なんとなく・なんとなく (ザ・スパイダース)

B3 レッツ・ゴー・シェイク (寺内タケシとバニーズ)

B4 マリアの泉 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅱

B5 太陽のあいつ (ジャニーズ)

B6 夕陽と共に (ザ・ワイルド・ワンズ)

 

演奏: ザ・サンダース

編曲: 無記名

定価: 1,700円

 

リアルタイムで出た「純GS系」のインスト・アルバムは、グルーヴ強度の強さ関係なく、その時代性が濃厚に出ているというだけで、どれもこれも最早容易に手が届くものではなくなっているが(高橋レナの盤なんて5桁越えだし)、これは今年になってからいともたやすく巡ってきた1枚。この種のグルーヴィなエセ洋楽盤ならまかしとき、な日音原盤・ユニオン販売による1枚で、GS濃度9割越え、まさにサマー・オブ・ラヴ真っ只中に出されたやつだ。A1、A4、B3、B6の4曲は、2000年リリースされた「歌のないGS」集大成と言えるCD『GS・ア・ゴーゴー~熱狂のGSレア・グルーヴ』に収録されたが、このCDもまた激レア盤になっている。当時テイチクでこの辺の再発企画に多数関わらせて頂いたのだけど(これは宗内世津がWEB活動を最初に停止する直接の要因になった)、その時期に歌無歌謡を再発見していたら、一体何が起こっただろう…実際、洋楽インストカヴァーものの企画を立てたことはあったけれど、そこまで掘り下げたがる時代にはまだなっていなかったし。黄昏で取り上げたシカゴ11やブルー・ロック・ファイブ(いずれも『ブッダ・ミート・ロック』人脈の末梢)はまだしも、「吹けよ風、呼べよ嵐」を演っている盤まであるのに(これは某オクで5桁に肉薄する激闘盤になった)。

まぁそんなわけで、例によって本作のライナーには、『ギター・ヒット・フラッシュNo.2』(昨年9月9日)同様、「グループ・サウンズ」という語は一切登場しない。社会現象化する前の、徐々に熱へと姿を変えるうごめきが、腰を揺らすサウンドに姿を変えている。ノリのわかりやすさという点では、鉄板曲「真赤な太陽」(歌無だと許されるのだ)、「シーサイド・バウンド」あたりにとどめを刺したいが、むしろ原曲と違う方に引っ張ろうとしている「僕のマリー」「なんとなくなんとなく」、ねっとりとしたノリで原曲にない側面を引き出した「夕陽と共に」あたりが推し曲だ。個々のグループの個性よりも、ムーブメントの持つうねりを重視して、単調にならないように構成している。原曲にそこまでの下世話さが感じられない「明日への道」のいかがわしいノリが意外に拾い物で、これでフロアを沸かそうなんて考える和モノDJがいても別に驚かない。寧ろ「ハンキー・パンキー」との類似性が強烈に出ていていい。「雀の学校」が飛び出してきそうな「レッツ・ゴー・シェイク」も楽しいが、この妙に暴れるギターは一体誰なのだろう。サックスはやはりチャック・ウイリアムズだろうか。「マリアの泉」のギターはちょっぴりエディっぽいけど。いや、「夕陽と共に」の最後の最後でエディの仮面が剥がれたよ…