東芝 TP-40173~74
ポップス最新ベスト・ヒット30
発売: 1983年
A3 ちょっとなら媚薬 (柏原芳恵)
A4 純愛さがし (高田みづえ)☆
A6 少女A (中森明菜)
A7 けんかをやめて (河合奈保子) 🅱
B1 すこしだけやさしく (薬師丸ひろ子)
B3 ジェームス・ディーンみたいな女の子 (大沢逸美)
B4 だいじょうぶマイ・フレンド (加藤和彦) 🅰→4/16
B5 19:00の街 (野口五郎)
B7 夢・恋・人 (藤村美樹)
C1 めだかの兄妹 (わらべ)
C2 通りすぎた風 (高田みづえ)
C4 Invitation (河合奈保子)
C5 春なのに (柏原芳恵)
C6 セカンド・ラブ (中森明菜)
C7 花梨 (柏原芳恵)
C8 約束 (渡辺徹)
D1 1/2の神話 (中森明菜)
D4 夏をあきらめて (研ナオコ)
D5 ラ・セゾン (アン・ルイス) 🅱
D7 ダンスはうまく踊れない (高樹澪) 🅱
演奏: 東芝レコーディング・オーケストラ
編曲: 丸山恵市、薗広昭(☆)
定価: 3,000円
先月16日紹介した「ニューミュージック編」の姉妹編となる、アイドル中心の83年歌無ヒットグラフィー。時期的には同年5月新譜あたりまでがカバーされているので、明菜の「トワイライト」がギリギリ間に合わないという様子。もうちょっと遅かったら、NM編にTHE ALFEEのブレイク作「メリーアン」も入ってたに違いないし、それでも3月発売の「君に、胸キュン。」がいずれにも漏れたのは合点行かないな。とは言いつつも、黄昏始まって以来初めての明菜登場には心躍る。「スローモーション」以外の当時の全シングル曲が網羅されたのは、勢いの証以外のなんでもないし。
NM編の時に触れたけど、当時台頭していたアイドルに対しては、ほぼ醒めた視点しかなくて、それでも周りの環境故多少は意識せずにいられなかったのだ。友達の多くがそれぞれに「推し」を持っていたし。家にビデオデッキがないのに、早々とリリースされたVHSソフトを買った伊藤麻衣子ファンのM君が、それを持参して観るためにうちに遊びに来たり、お礼にイベントで撮影したつちやかおりの写真をもらったりしたなぁ。あと、親戚の絡みで距離感が縮まったのが堀ちえみ。彼女に対しては好感しかなかったけど、レコード買ったりにまでは至らず。そんな生温い状況が瓦解したのは、翌84年8月。遠くにいた好きな子への好感情がぶっ壊された時だ。その年にデビューしたユッコと桃子に、レコード購買者としても惹かれまくることになる。以上、恥ずかしい話だけど、自分史に於いては避けて通れない「ブロークン」な出来事。
そんなわけでのっけからフレッシュスターたちの古典的名曲が続く。のっけの「探偵物語」こそ、サックスでアンニュイなムードを出しているが(バックのオケもガチ。この辺は「まずカラオケありき」の成果だろう)、「天国のキッス」からはガーリーなフルートが先導。バックに妙なシンセドラムの音が入っているが、本当は歌いたかったのと言いたげな俯き加減の音が実に乙女だ。大瀧・細野ツートップで快調な滑り出し。「ちょっとなら媚薬」でちょっとデジタルな方向にひとっ飛びするが、フルートの響きは益々純情度を増していていい感じ。「夏色のナンシー」はしっかりコーラス入りで、フルートの音に「Yes!」と答えるのは滑稽としか思えない。この曲の元ネタはアメリカン・ブリードなんて暴論をかますのは、自分くらいしかいないだろう(汗)。「少女A」はさすがにサックスの方が似合うが、仁侠な音にはなっていない。「すこしだけやさしく」はやはりフルートでよかった。Aメロ(サビメロではなく)のこなし方を聴くと、リコーダーも合いそうって気がするな。それ以上に名曲だし。「時をかける少女」も知世ボーカルを見事にフルートで描写している。時に低い音混じりになるのがアンニュイでいいし。B面には83年組の貴重なカバーも2曲ある。KYON2やちえみより、純新人の方に遥かに期待がかかってたんでしょうな。今から振り返ると信じられないけど。「ジェームス・ディーン~」のフルートにはエフェクターがかまされていて、他の曲とちょっとタッチが違うが、硬さが残っているな。「だいじょうぶマイ・フレンド」は、当時出演俳優たちのレコードが競作された関係か(その内の一人が渡辺裕之さん…合掌)、唯一NM編と共通する選曲。1枚目のラストは再び細野作品「夢・恋・人」。元キャンディーズの意地が場の空気を引き締める。
2枚目のトップ「めだかの兄妹」はフルートで演られると本当「優等生のお姉さん」という感じになってしまうが、2コーラス目ではばっちり、あの言葉をコーラスが歌ってますよ。なんか恥ずかしそうに…2曲目から「セカンド・ラブ」まではサックスでスムーズに。「花梨」もリコーダーが合いそうな曲だけどなぁ。D面も手堅く進み、フルートが気怠く歌う「ダンスはうまく踊れない」で締める。人の声にニュアンスが近そうな楽器で統一したことで、カラオケにも役立つという主旨を打ち出したと読めるけれど、その分70年代の歌無盤のカラフルさの再現とはいかなかったな。ただ、時代がデジタルに飲み込まれる前の熱い息吹は、確かに感じられる。そういえばジャニーズ系の選曲がないけど、政治的なアレはあったのだろうか…『今宵踊らん』やその他の演奏盤では取り上げられているのに。