黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

日高富明さんの誕生日は2月22日

マキシム MM-1513 

最新ヒット歌謡20

発売: 1973年

ジャケット

A1 十五夜の君 (小柳ルミ子) 🅻

A2 君が美しすぎて (野口五郎) 🅶

A3 てんとう虫のサンバ (チェリッシュ) 🅶

A4 絹の靴下 (夏木マリ) 🅳

A5 恋する夏の日 (天地真理) 🅹

A6 おんなの涙 (八代亜紀) 🅴

A7 他人の関係 (金井克子) 🅳

A8 裸のビーナス (郷ひろみ) 🅶→9/3

A9 夜間飛行 (ちあきなおみ) 🅴

A10 ふるさと (五木ひろし) 🅹

B1 胸いっぱいの悲しみ (沢田研二) 🅽

B2 燃えつきそう (山本リンダ) 🅷

B3 わたしの彼は左きき (麻丘めぐみ) 🅷

B4 君の誕生日 (ガロ) 🅹

B5 ひとりっ子甘えっ子 (浅田美代子) 🅺

B6 情熱の嵐 (西城秀樹) 🅳

B7 女のゆめ (宮史郎とぴんからトリオ) 🅶 

B8 遠い灯り (三善英史) 🅴

B9 草原の輝き (アグネス・チャン) 🅷→9/3

B10 くちべに怨歌 (森進一) 🅸

 

演奏: ジョージ高野 (テナー・サックス)、野口武義・村上三雄 (ギター)/ブルーシャドウズ

編曲: 山口順一郎

定価: 1,500円

 

昨年最後に入手した歌無歌謡アルバムがこちら…なのだが、ブツが届いた時でさえその手の気配に全く気付かなかった。しかし、いざデータ化を始めてみたら…ほんの3ヶ月前に同じアルバムを買っていたことを忘れていたではないか!そそくさと棚をチェックしたら、確かにある。しかも同じように帯付き。過去、ジャケは違うが同内容の盤(ユピテル)、同じ盤で帯無しを買った後帯付き入手(クリスタル)というケースはあったが、完全に顔も一緒だし…確かに、昨年末は個人的に心身共に相当逝っちゃってはいたけれど(年内更新分の黄昏は、実のところ月の前半の段階でほぼ書きためていた位である)、そこまで擬似アルツ状態加速してたとは。『マキシム版「ひとりっ子甘えっ子」だって、聴かなきゃ!』という感情が瞬間的に、無意識に高まったのかもな。既に聴いていたのに。9月の段階でリップすることさえしていたのに!こうして、少しずつ人生の末路が見えてくるのである。ブレーキだと信じてアクセルを踏むような段階がな…(瀧汗)。

そんなわけで、そこまで印象が薄い盤だったのかと再度ひっぱり出してみたら、案外そうでもない。ジャケットも明朗だし、かなり強力なサウンドの1枚である。印象が薄れた原因は、特にその前の年の『幸福泥棒』が良すぎて、マキシムに期待したレベルにそこまで達してないと感じたせいか、もしくは収録曲の多くに関してトリオの『魅力のマーチ・小さな恋の物語』ヴァージョンを決定盤として捉えていたため、それらに比べると弱いと感じたせいだろう。まぁ、そのアルバムに関する総論は、最終回でじっくりと語り尽くそうと考えておりますので、あと12日後をお楽しみに…

『幸福泥棒』のピーター・ギブス(?)仕事ほどエッジは立っていないものの、オープニングから快調で、十五夜の君」もトリオのモーグ・ヴァージョンの妙さはないながら、曲の良さを引き立たせるアレンジ。だが、耳が止まるのは「君が美しすぎて」だ。オリジナルや他の歌無ヴァージョンを聴いても気付かなかったけれど、この曲ってあのAllanの迷曲、「I Need You So Bad」の影響を受けているのでは?馬飼野兄はこの曲の存在を知っていたのだろうか。このヴァージョンの、特に左のチャンネルに入っているストリングスのピチカートに、その曲の色が濃厚に出ている。日本盤が出たという話は聞かないので、オリジナルのフランス盤ないしドイツ盤か米国盤が、ひっそり入ってきたのでは。以上、存在を知ってから13年間悶々とした末、昨年遂に坂戸・芽瑠璃堂にてこの曲の米国盤シングルを発見し飛び上がった者の報告でした。この発見(100円でした)に比べたら、同じ盤を2度買いするなんてかすり傷程度でしかありません。

まぁ、快調なサウンドではあるけれど、妙な楽器を使っているとか、アレンジの調合が面白いとか、そういう面で語りにくく、楽しくノスタルジアに浸れるのみ。全体的に女性コーラスを押し出したアレンジになっていて、「情熱の嵐」みたいに余計な印象を与える曲もあるけど、なかなかいい効果だ。「他人の関係」の最後ぎりぎりのところで、ちょっと乱れ気味なのが気になるな。「ふるさと」も、楽器の選択という面では物足りないが、ブルーナイト版に匹敵するいいアレンジで、コーラスなんかそれを凌ぐ出来かも。「ひとりっ子甘えっ子」は、トリオ盤と比較すると相当オリジナルに近づけているが、やはり保守的な出来かな。ラストの「くちべに怨歌」は、一転して男性コーラスと口笛をフィーチャー、終末感を演出しているが、これをメロトロンでやったら…と妄想してしまう(爆)。

ただ、ヤバい部分に気付きもするもので、「裸のビーナス」「草原の輝き」がマイパックの「歌謡ヒット・パレード」(DR-0016)に流用されていたのだ。不思議なことに、そっちのテイクの方が音のキレがいい。やはり、このマキシム盤は片面10曲と詰め込みすぎで、ダイナミックレンジが若干薄れているし。マイパックは盤質は落ちるとはいえ、片面6曲だし、案外悪くないマスタリング。ただ、この2曲が入っているA面に比べて相当酷使されたと思しきB面に入っている「わたしの彼は左ききは、この盤と違うぬるぬるな演奏を採用しており(質感的にマーキュリーっぽい演奏)、これもミステリーである。AB面でディレクターが違うとか?この盤の「左きき」は、好調に飛ばしてはいるけれど、イントロ後半のストリングスのメロディーが抜けてたりして、コーラスを聴かせるには効果的かもしれないけれど、ちょっと惜しい。このミステリーにもっと早く気づいていれば、ダブり買いは避けられたかもしれないな。その盤について書いたの9月3日だったのに…別のマキシム盤とのダブりについて書きまでしてたのに…