黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

町田義人さんの誕生日は9月21日

コロムビア HS-10010-J

ニュー・ヒット14/人形の家 

発売: 1969年11月

ジャケット

A1 人形の家 (弘田三枝子) 🅸

A2 花と涙 (森進一) 🅵

A3 涙でいいの (黛ジュン) 🅴

A4 まごころ (森山良子) 🅷

A5 海辺の石段 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

A6 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅷

A7 夜と朝のあいだに (ピーター) 🅴

B1 喧嘩のあとでくちづけを (いしだあゆみ) 🅷

B2 可愛いあなただから (ズー・ニー・ヴー) 🅱

B3 朝を返して (伊東ゆかり)

B4 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅺

B5 あなたの心に (中山千夏) 🅵

B6 愛の化石 (浅丘ルリ子) 🅲

B7 恋泥棒 (奥村チヨ) 🅶

 

演奏: ゴールデン・ポップス・オーケストラ

編曲: 森岡賢一郎

定価: 1,500円

 

月並みな同一写真反転技を避けたジャケットが印象的。表は落ち着いた青い瞳美女のポートレイト、裏はどサイケなボディスーツの野生派美女…なのに顔が帯で隠れている。見開きジャケに帯2枚というのはコロムビアのよくやる手 (裏側の帯の推し曲は「愛の化石」)。で、開いて帯裏をみたら、告知されている内容が一緒で興醒めする。これまでリリースされたHS品番のレコードが、収録曲全曲まで含めて全て紹介されてるのは有意義なんですけどね。このシリーズ、内容がいい故にジャンク市場にほとんど出てこないし。似たり寄ったりの選曲でも、ヴァージョンによって違う光景を見せてくれそうで、ユーザーに選択の余地を与えるという点では、なかなか効果的な売り方と言える。『ラテン・フルート』(HS-10009)なんて、切り口的にも他にないし、聴いてみたいものです。ホセ・ルイスって誰やねん、ですが。『レキント・サウンド』(HS-10001)のエディ・ハートは、恐らくエディ・プロコフスキーと同じ人(つまりあの人)と思われますが。聴きゃ解るか。

このシリーズでは2枚目となるサウンドマスター、森岡賢一郎が送る69年ヒット集。遂に初登場となる「海辺の石段」以下、オリジナルも自身が手掛けた曲が「花と涙」「喧嘩のあとでくちづけを」と、計3曲入っている。ポリドール盤を手に入れたのに使用不可で歯軋りした「海辺の石段」は、さすがにオリジナルと違う味付けで、ブルコメはオーケストラ楽器を除く全ての演奏を本人で賄っているはずだから、そうなるのもしょうがないか。この琴は山内さんだろうか。「小田君、甘いわね~」なんて言いながら余裕綽綽で弾いたのかも。カナリー(国産クラビオリンみたいな単音キーボード)は使われていず、普通のオルガンで代用して余計場末的な響きだ。これが聴けるだけでも収穫。他の2曲もオリジナルを基調にしつつ、エレガンスを強調して新しい味付けだ。あとは、競合ヴァージョンが多い手堅い選曲を手堅いアレンジで聴かせるが、やはり職人仕事だけあり決してぬるいサウンドではなく、「夜と朝のあいだに」なんて原曲を凌ぐリラックスムードながら、聴きごたえ充分。2回目の「お前も静かに眠れ」で減速していないのが惜しいが。ズー・ニー・ヴーといえば、このシリーズで出た筒美京平自演の歌無アルバムに「ひとりの悲しみ」が入っていたな…その後、何度も歌無歌謡化された曲(メロは)だけど、そのタイトルが冠されているだけで、ものすごく希少度が高まるから困ったものだ(汗)。