黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

内藤やす子さんの誕生日は9月28日

日本メルシー NDC-5202 (カセット) 

夜の有線大賞

発売: 1976年

ジャケット+テープ本体

A1 さざんか (森進一) 🅰→21/5/23

A2 おゆき (内藤国雄) 🅲→21/5/23

A3 横須賀ストーリー (山口百恵) 🅰→21/5/23 (long) 

A4 どこへ帰る (五木ひろし) 🅲

A5 さくらの唄 (美空ひばり) 🅳

A6 北の旅愁 (細川たかし)

A7 ぼくの妹に (加山雄三) 🅲

A8 旅人 (五木ひろし)

A9 北の宿から (都はるみ) 🅺

A10 夢魔のブルース (八代亜紀) 🅰→21/5/23

B1 聞いて下さい私の人生 (藤圭子)

B2 想い出ぼろぼろ (内藤やす子) 🅴

B3 つくり花 (森進一) 🅴

B4 ふたりづれ (八代亜紀) 🅵

B5 裏町ブルース (殿さまキングス)

B6 あなただけを (あおい輝彦) 🅳

B7 四季の歌 (いぬいゆみ) 🅳

B8 北酒場 (五木ひろし) 🅰→21/5/23 (long) 

B9 東京砂漠 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅳

B10 女の河 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱

 

演奏: ニューレコーディングオーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

B’zのニューアルバムの特典におまけ音源収録のカセットが用意されるというニュースで、益々カセットテープに対する注目度がエスカレート中。中古市場もそれなりに熱くなっているけれど、実物が見えない場所で迂闊に投資するのもリスキーなんですよね。目に見えるダメージは言うに及ばず、ユーザーが勝手に上書きしてるケースとかもあり得るし。人によってはそれこそが快感なんて場合もあるんだろうけど…

歌無歌謡探求者としては、それこそ78年あたりまでのマイナーレーベルのパチ歌謡(歌入りも含む)が出てくれば目の色が変わるのだけど(ポニーや74年以降のアポロンなどの、明らかにレコードで出ていない音源が入っているものなら余計)、76年あたりまでのカーステレオ業界はメインが8トラックだったので、カセットの希少価値は余計高い。オーディオ好きな人が家で歌無歌謡のカセットを高級デッキで再生するなんて、ツチノコ以上に考え難いケースだし(爆)。それでも、出てくる時ゃ出てくる。そんな1本がこちら。いかがわしいジャケでしょ…品川区上大崎に実体を構えていた会社の制作によるブツだが、あくまでも音源は別途制作されていたものをライセンスして使ったっぽい。元々歌入りで出すか歌なしで出すか決めかねていたのだろうか、裏ジャケでは歌手名が記載されていたと思しき部分にテープが貼られ、カムフラージュされている。ライセンス云々が浮き彫りになるのは、冒頭3曲で早々とだ。最初の2曲の段階では何も考えていなかったけど、続く横須賀ストーリーで決定的に。この歯切れの悪さは、まさしくエルム盤『ベスト歌謡ヒット速報』に入っていたヴァージョンと全く同じ…ただ、2コーラス目の途中でフェイドアウトという処理が行われており、レコードに比べると制約が少ないはずのカセットに於いてまで、それをする必然性はないのではないかと、一瞬思いはするけれど、8トラックの各プログラムの長さを合わせるための処置なのかもしれないし。結局、その盤と5曲、全く同じテイク(長さの相違はあれど)が使われていた。「北の宿から」は、バックのオケは同じくエルムの『昭和演歌』と同一ながら、好夫っぽいギターがここでは咽び泣きまくるサックスに置き換えられているし、これも謎。「横須賀ストーリー」以外にも「どこへ帰る」さくらの唄など、不自然な箇所でフェイドアウトする曲が、相当数収められている。

サウンド的には、「どこへ帰る」や「北の旅愁などでここぞとばかり個性を発揮するシンセの音が目立つ。マイナーレーベルの制作現場とはいえ、それなりに新しいものを取り入れて遊びたかったのでしょうか。普通にオルガンを弾くようなメロディーこなしではありつつ、音色の選択が意外と鋭い。クラウンのアルファ・スペースGのような狂気を期待すると、肩透かしに逢うけど。「聞いて下さい私の人生」なんて、クラビオリンに非常に近い音に設定してるけど、音の繋がり具合はまさしく当時のシンセのそれ。イレギュラーのタイアップ・ソングのため、通常の歌無盤ではあまり取り上げられていない「旅人」では、マイナー盤では珍しいリコーダーの活躍も。この手のテープでアイドル曲が取り上げられていたらと妄想したくなってしまうが、あり得ないだろうな…「さくらの唄」はシンプルにまとまりすぎてかえってアシッド色が出てたり、「想い出ぼろぼろ」の悪酔い気味のノリとか、「四季の唄」でリリカルさを撹拌するようなシンセの音色選びとか、それなりにバッド・トリッピーなところもあって、やはりマイナーレーベル侮れないなと。このグラスには、どっかおかしな媚薬が配合されている…