アトランティック L-6044A
華麗なる口笛・ベスト・ヒット20 幸福への招待
発売: 1972年3月
A1 幸福への招待 (堺正章) 🅳
A2 さすらいの天使 (いしだあゆみ) 🅹
A3 涙 (井上順) 🅴
A4 ちいさな恋 (天地真理) 🅼
A5 愛があれば (湯原昌幸) 🅳
A6 終着駅 (奥村チヨ) 🅺
A7 雨の御堂筋 (欧陽菲菲) 🅹
A8 別れの朝 (ペドロ&カプリシャス) 🅽
A9 何故 (布施明)
A10 望郷子守唄 (高倉健) 🅵
B1 ともだち (南沙織) 🅹
B2 雪あかりの町 (小柳ルミ子) 🅺
B3 ちょっと待って下さい (ゴールデン・ハーフ) 🅴
B4 恋ごよみ (安部律子)
B5 夜明けの夢 (和田アキ子) 🅴
B6 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅺
B7 君をのせて (沢田研二) 🅲
B8 さよならのロ笛 (加藤登紀子) 🅱
B9 なのにあなたは京都へゆくの (チェリッシュ) 🅳
B10 流れのブルース (森進一) 🅶
演奏: こだまたかし/ワーナー・ビートニックス
編曲: 原田良一
定価: 1,800円
ワーナー・ビートニックス6枚目にして、初めて突入する異端の領域・口笛。それこそ、それをフィーチャーしたレコードは、世界的にもイージー・リスニングの範疇で多数作られていたし、「口笛天国」のようなヒット曲を生み出してもいる。我がCD棚にも早々に(?)2008年発表された分山貴美子さんのアルバム『くちぶえ天国』が常駐していたし。その音楽的魅力は、決して音色やテクニックをメインにして語れるものではない。人として気軽に出せる音だからこそ、ナチュラルに入り込めるか否かが勝負。だから、「歌のない歌謡曲」とも親和性は抜群である。レコードを聴いてて、歌詞が思い出せない曲に合わせてついつい吹いてしまうことが自分にも度々ありますし(汗)。
それを20曲、立て続けに聴かせてしまうのには、余程の体力と技量と勇気が必要。だからこそ、ワーナー・ビートニックスの意地の見せ所。こんな冒険的なアルバムが出来上がってしまうわけで。その後さらに1枚、そしてギターと均等にフィーチャーされたアルバムが1枚作られてもいる。レコードに針を落とした途端、いきなりの高周波攻撃…個性的側面を一瞬提示されてたじろぐ間もなく、落ち着いた音の流れに吸い込まれていく。やはりテクニシャンじゃないと、ここまで的確に囀ることはできないし、それでもある程度聴く側も疲れることを意識したのか、他の楽器の演奏もバランスよく配して、異端ながら心地よく聴ける1枚に仕上げられている。時に自分もつられて音を出さずにいられなくなるけど、やっぱ無理だ、となるのだよね。リコーダーに換算すると、クライネソプラニーノの最高音域に匹敵するところまで、楽々と奏でられているし、それをレコードに刻み込むのも相当の試練だから。ものすごくダイナミックに針を動かす罪な盤だ。
時にダブルトラックにしたり、「ちいさな恋」や「別れの朝」ではレズリー・スピーカーに通したりと、意欲的なトリックを使いカラーを広げているところもニクい。決して同じように振動することが2回以上ないからこそ、同じフレーズを多重録音するとかなりのスリリングな効果が生まれる。「雨の御堂筋」のイントロのトランペットに既聴感を感じて、『雪あかりの町/華麗なるドラム』のヴァージョンをひっぱり出してみたが、基本的アレンジは同じとはいえテイクそのものは完全に変えてあり、細かい配慮も伺える。アイドルから仁侠まで、同じ地平線に乗せて人体の魔力で調理してみせる異色の1枚。我がバンドのフジツボマスターにも聴かせてあげないとね。思えば、楽器演奏まで含めて、これほど男女差を意識させない音ってないのでは?易々とナンパなんかに使っちゃいけないよ。
なお今日のジャケ画像は、申し訳ないですが拾い物を使用させていただきました。やっと手に入れたとうきうきする中届いたジャケの窓あき部分に、某フランスの女性シンガーのシングルジャケから切り抜いた画像がもろ貼り付けられていたからです(汗)。せっかく買った歌無歌謡のレコードになんて仕打ちをしてくれるのだ…もっとも、どういう目的でこれを買ったのかが気になりますね、前の持ち主が。