黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

菅原進さん (ビリー・バンバン)の誕生日は9月21日

キング SKK-510

みんな夢の中 ゴーゴー・タンゴVol.5

発売: 1969年5月

ジャケット

A1 みんな夢の中 (高田恭子) 🅻

A2 華麗なる誘惑 (布施明) 🅵

A3 知らなかったの (伊東ゆかり) 🅶

A4 帰り道は遠かった (チコとビーグルス) 🅵

A5 初恋のひと (小川知子) 🅷

A6 雨の赤坂 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅵

B1 涙の季節 (ピンキーとキラーズ) 🅻

B2 グッド・ナイト・ベイビー (ザ・キング・トーンズ) 🅹

B3 ブルー・ライト・ヨコハマ (いしだあゆみ) 🅽

B4 七色のしあわせ (ピンキーとキラーズ) 🅼

B5 白いブランコ (ビリー・バンバン) 🆂

B6 だけど愛してる (梓みちよ) 🅲

 

演奏: レオン・ポップス

編曲: 石川皓也

定価: 1,500円

 

颯爽と歌無歌謡黄金律、その極みの69年に戻りましょう。名門レオン・ポップスの地味に盛り上がったシリーズ『ゴーゴー・タンゴ』の5作目。どうやらこれで打ち止めとなった模様で、この盤では最早タンゴに拘った感じもなくなり、躍動感に溢れるリズムで当時のヒット曲を料理。「今宵踊らん」に比べるとずっと若者対応の内容になっているし、弟分(?)のグリニッジ・ストリングスに比べるとある程度の場末感もキープしつつ、当時らしい冒険色が余計出ている。キング歌謡の派手な部分に親しみを覚える人にはたまらない音だろう。何せ、この顔ドアップジャケットが魅惑的だし、タイトルのレタリングもポップ。自社ネタなのに。「涙でいいの」みたいにトレースしただけの題字じゃ面白くないよ。

冒頭から3曲が自社曲で、慎重に扱いつついずれにも独自の色を加えているし、特に「知らなかったの」は大胆。オリジナルのアレンジを尊重しながらも、そこここに独自のタッチが効いていて、中でもレズリーをかましたギターが他にはない味わい。グリニッジのレコードで多用された電気アコーディオンや電気サックスも、あちこちで大活躍している。「帰り道は遠かった」のイントロのエスニックなフルートもドキッとする響きだ。「初恋のひと」でやっと、タンゴらしい展開に入る。B面も6曲中4曲が自社ネタで、「涙の季節」はそれこそタンゴとゴーゴーをチャネリングするアレンジ。「グッドナイト・ベイビー」はスローな部分を丸ごとタンゴに改変する大胆なアレンジになっている。「白いブランコ」はどうするのかと思ってたら、普通に8ビート化。アコーディオンがこそばゆい響きだ。カラフルなサウンドで明るい喧騒を表現する、「何過激なこと考えてんのよ、仲良く踊ろうよ」と語りかけてくる1枚だ。