黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無ベスト10・第4位

この曲を19ヴァージョン続けて聴くと真に絶望の淵へ…と思われたが、そうでもないのがやっぱり歌無歌謡の魔法。歌い手本人に伝わりますか果たして…(瀧汗)

 

4位

時には母のない子のように

歌: カルメン・マキ

作曲: 田中未知

作詞: 寺山修司

編曲: 山屋清

69年2月21日発売/オリコン最高位2位

 

🅰いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/5/3、8/2、12/22

シンプルに、飾らずに、場末カラー。77年発売のフォークコンピにもこの音源が流用されていて、一瞬異次元の世界へ。

🅱秋山実とニューサウンド・グループ (編曲: 竹村次郎) 21/6/2

ちょっとだけ洗練された感じ。ミノルフォン故、浜恵子の「夏の終わり」に通じるテイストもなんとなく。

🅲テイチク・ニュー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 21/6/9

イントロから幻惑の世界に誘う山倉サウンド。ダウナーなテンポ感、ドラマティックな音配置で、尾花ミキ「文字のない手紙」に与えた影響を露呈する。

🅳ゴールデン・ポップス・オーケストラ (編曲: 森岡賢一郎) 21/7/9

森岡賢一郎らしいゴージャスなカラーを添えて、なかなかの聴き応え。ちょっと「砂漠のような東京へ」のテイストもある(笛は入っていないが)。レーベル故か。

🅴吉岡錦正、吉岡錦英 (大正琴)/クラウン・オーケストラ (編曲: 福山峯夫) 21/7/14

どダウナーなんだけど、曲のカラーのせいで「禁じられた恋」ほどの異常さはない。無表情な大正琴もストレンジな響きを感じさせない、曲の魔法。所々コードが合ってないのはむしろ幻想的だ。

🅵ユニオン・シンギング・オーケストラ (編曲: 無記名) 21/8/1

フルートのアンサンブルがラブリーすぎて、この曲とは思えない華々しさを醸し出している異色ヴァージョン。めちゃ癖になりそう。バファ◯ンが効いてくる…(汗) 2番のアルトフルートが深刻な表情でむしろ妙だ。

『七色のしあわせ/シンギング・サウンド

🅶カンノ・トオル (スチール弦ギター)とフォークギター・グループ (編曲: 福島正二) 21/8/7

律儀に波の音をイントロに入れた、比較的忠実なヴァージョン。フォークを志すと安心して付き合えるな。

🅷木村好夫 (ギター)、宮沢昭 (フルート)/レインボー・オーケストラ (編曲: 大柿隆) 21/9/25

イントロでコードチェンジしているのがむしろ安っぽい。好夫は地味な役回りで、フルートがメインで軽さを醸し出している。Bメロでグルーヴィになったり、2番で転調したりと、意表を突く展開。

🅸バロック・メイツ (編曲: 小川寛興) 21/10/3

『フォークの世界」らしい高貴なタッチ。チェンバロが入っているのがこの曲の絶望感を軽減している。コーラスを入れる余地はなかったのかも。

🅹クイーン・ノート (編曲: ミッチー・シモン) 21/11/13

テンポ的には最もダウナーなヴァージョンで、故に4分近い。イントロから例のオルガンが渦巻き、絶望の世界に誘う。ここまで落とすと「からっぽの世界」を幻聴しそう。エンディングがGSマナーのメジャー締めでびっくり。

🅺黛はじめ(アルト・サックス)とスイング・オーケストラ (編曲: 川上義彦) 21/11/27

柔らかいブラスアンサンブルが、逆説的に明るさをもたらすけれど(2番など賑やかな印象)、「今宵踊らん」のように踊れることはない。ポリドールでドラムが完全に聴こえない演奏は珍しい(入ってはいるけれど)。

🅻荒尾正伸 (トランペット)/オールスターズ・レオン (編曲: 小谷充) 21/12/18

トランペットが低い音で誘惑し、ちょっと他と違うロマンティックな雰囲気。Bメロをハーモニカに譲っているのも効果的。「話せない」のところでコードチェンジするのは不意打ち。2番では多重録音を駆使して盛り上げる。

🅼横内章次 (ギター)/ブルー・ドリーマース (編曲: 横内章次) 22/1/7、4/5

チェレスタに始まりシンプル化。クインノート印のオルガンも入り、フォークギター的要素を取り去っているのがユニーク。さりげない工夫が意表を突く展開をもたらす。

🅽鶴岡雅義 (レキント・ギター)/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 22/3/10、3/26

🅲ほど冒険していないものの、手加減しない山倉サウンド。🅲も鶴岡雅義の演奏に聴こえたが、さすがにこちらの方がガチ。例のノイズ入り。チージーなオルガンも効果的。

🅾Joseph Meyer & Midnight Sun Pops (編曲: Y. Maki) 22/3/16

かなり落としてくる。リズムに捉われない気味のフルートが安堵の要素を持ち込んでいるが、マスターテープの回転を落としたように聴こえる演奏だ。

🅿︎木村好夫/(オーケストラ名記載無し) (編曲: 川口真) 22/3/21

シンプルな演奏ながら、重厚に包み込むストリングスはガチ仕事。2番の演奏に好夫カラーがよく出て、アルバムの他の曲と好コントラスト。アレンジャーのカラーはこの曲の聴き比べに楽しさを提供してくれる。

🆀ザ・フォークセレナーダス・プラス・ストリングス (編曲: 近藤進) 22/3/30

ハーモニカと鍵ハモが左右でやりとりするアレンジが面白い。12弦ギターのリードも含めて、フォーク同好会的なカラーが支配する演奏。工夫がないとむしろ安心して聴ける。

🆁尾田悟 (テナー・サックス)/ザ・サウンズ・エース (編曲: 池田孝) 22/4/24

イントロのギターは「花嫁」的テイスト。予期せぬ軽さとジャジーなサックスが調合してユニークな印象。2番の転調でより明るくなる。フルートのアドリブの音選びがさらなる不思議色に。

🆂ユニオン・シンギング・オーケストラ (編曲: 池田孝) 22/11/10

最後に池田孝2連発。リズムアレンジは🆁に似ているが、ビリー・ヴォーン印のブラスアンサンブルで余計明るさを醸し出す。イントロが完全にないのもユニークだ。

 

以上、19ヴァージョン (23枚収録)