黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無ベスト10・第2位

上位7曲中、唯一69年でない曲が滑り込み!色々とミステリーが渦巻くヴァージョンが並び、ほんと歌無歌謡って奥深いと思い知らされる。そして、まさかのワンツーフィニッシュ(ネタバレ)!

 

2位

瀬戸の花嫁

歌: 小柳ルミ子

作曲: 平尾昌晃

作詞: 山上路夫

編曲: 森岡賢一郎

72年4月10日発売/オリコン最高位1位(4週)

 

🅰山下洋治とハワイアン・オールスターズ (編曲: 山下洋治) 21/4/17、22/11/5

南国ムードに違和感ないことは、後の「恋にゆれて」登場により立証されたことを予感させるヴァージョン。飾らないプレイで曲の良さが引き立つ。スチールで律儀にカモメ音を出し、ウクレレのさりげないリズムも魅力的。

🅱ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 21/4/19

ちょっとだけテンポアップ。奥行きの深い4chミックスが南国的爽やかさに誘う。高く舞うフルートが乙女心をアピールし、四方からブラスが押し寄せる。

🅲ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: 無記名) 21/5/8 

フォーク色が加わった演奏に乗せ、鍵ハモが誘うミラクルサウンズの真髄。片隅でどっしり構えるコンガの存在感にも注目。

🅳ジャパン・シンフォニー・オーケストラ (編曲: 無記名) 21/5/22

マイナーレーベルならではのせこいサウンドだが、歌無歌謡としてどの線を意識したかが明確になりなかなか興味深い。Bメロでドラムが無駄に走ったり、カウンターメロディを入れたりでなめられないが、手持ちの盤ノイズまみれで哀しい…

🅴市原明彦 (ドラムス)/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/5/28、10/18、22/3/31 

自社ネタながらさりげない実験心が生きた、ビートニックスの面目躍如なヴァージョン。ドラムは派手に自己主張するのを抑え、シャープな響きを押し出すことに専念。最後ブレイクビーツのみになり、フェイドアウト

🅵エマノンストリングス楽団 (編曲: ピーター・ギブス) 21/6/12

こちらもピーター・ギブスにしては抑え気味のアレンジで、曲の良さに飲み込まれていない。コンガは珍しくアタック音が効いている。Bメロで地味にベースが暴れる。

🅶金成良悟 (フォーク・ギター)、ビクター・オーケストラ (編曲: 舩木謙一) 21/6/13 

カントリー・ロード」(JTの方)的感触を活かしたフォーク・ムード。この洗練された70年代感は王道曲故の楽しみ。Bメロのフルートに『さわやかなヒット・メロディー』のリコーダーの予兆も。全体的にメロディを跳ね気味にしていて、一瞬薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべたくなる展開も(爆)。

🅷山内喜美子とオーケストラ・プラッツ (編曲: 竹田喬) 21/7/23

一気にせこい和風サウンドに超転換。左右で琴がフレーズを分け合い、中央で京琴が異様なタッチをもたらす。直感でこなしているような音選びに山内さんの意地が。さりげないパーカッションも聴き逃せない。このヴァージョンが「京のにわか雨」に影響をもたらしたのか?

🅸原田寛治(ドラムス) オールスターズ (編曲: 前田憲男) 21/8/18、22/4/10

大暴走するドラムを軸に激しくテンポアップ。タムのチューニングを下げまくり、音場をせわしく駆け回るドラムには純情をもてなす素振りもない。フルートも怯え気味。

🅹三笠輝彦 (テナー・サックス)/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 小谷充) 21/8/22 

こちらは自社なりに慎重な扱いが伺えるが、イントロの3・4小節目が1・2小節目の繰り返しになっていてちょいしらけ。三笠輝彦とまぶち・ゆうじろうの中の人が同じというのは真相なのだろうか…ここではかえって奔放気味の演奏だ。

🅺奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 21/9/11

『今宵踊らん』らしく、跳ね回る予感のイントロながら、曲に入るとむしろオリジナルに忠実な解釈だ。ここで🅳に戻ってみると、このヴァージョンと🅹がアレンジに何となく影響を与えているという気もするが、これでは終わらないのである…ラストは例によって大敬礼モード。

🅻アート・ポップス・オーケストラ (編曲: 無記名) 21/10/27

こちらもマイナーならではのせこさがあるが、🅳ほどではない。場末のビッグバンドという印象で、78年のカラオケ盤に入っているという感じが希薄。メロを奏でるギターの音量も通常。大団円の大敬礼モードが取ってつけたような感じだ。

『カラオケレコード 青春のうた』

🅼ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 土持城夫) 21/12/1、22/3/14 

イントロのカモメ音は果たして何で出しているのだろう、ピッチに安定性がない…TNKを聴いて研究した素振りもない。こちらも🅳に影響を与えてそうな妙なオルガンなど、不思議と耳に残る要素が多いブルーナイト・サウンド

🅽MCAサウンド・オーケストラ (編曲: 無記名) 22/01/10

🅼よりガチなサウンドながら、アレンジの印象が酷似(妙なオルガンの音色設定も同じ)しているので、こちらも土持城夫アレンジと思われる(MCAの前作には彼のクレジットがある)。ストリングスの力の入れ方に、ビクタースタジオの意地が伺える。カモメ音はどうやらテープ逆回転で作っているようだ。TNKを聴いて研究した成果か?(爆

🅾マーキュリースタジオグランドオーケストラ (編曲: 無記名) 22/3/7 

🅻とオケが同じながら、メロを奏でるギターがオクターブ低く、こちらの方がせこくつまずき気味。Bメロがリコーダー的タッチのフルートなのも違う。オンタイムで世に出たのはこっちなので、オケだけのトラックに新たにメロを乗せたのが🅻と見ていいか。まさかマルチが6年も残ってるはずないし。マイナーレーベル界にはこういうミステリーが多く、めっちゃ悩まされそう。時にミノルフォン等メジャーも絡んでくるし。

🅿︎大野雄三 (ハーモニカ)/ワーナー・ビートニックス (編曲: 青木望) 22/3/19 

ワーナー3つ目のテイク(ツウィン・ギターズと口笛盤もあるので都合5種類! 早く集めなきゃ)。ハーモニカの美味しさを活かすため、控えめなアレンジでまとめているが、「嫁いで」のとこのコード変更にこける。マリンバがさわやかな印象をもたらしている。バス・ハーモニカが炸裂し始める2回目のBメロで唐突にフェイドアウトするのが惜しい。

🆀前田憲男とそのグループ (編曲: 前田憲男) 22/3/20

一気にお洒落感を増したアレンジで、大爆走する🅸と同じアレンジャー仕事なのが信じられないが、いずれにしても異色。ブレイクビーツ感に溢れるドラムや、メジャー7thの多用など、この曲のイメージを破壊するタッチながら嫌味になっていない。2番のBメロの料理法はさすがにヤバすぎだが、ダメ押しのように再転調してBメロをもう1回追加している。 

🆁山内喜美子 (琴)/キャニオン・オーケストラ (編曲: 小杉仁三) 22/4/19 

派手なテイクの後聴くと身に染みる山内サウンド。🅷の実験性がない分、曲の良さがストレートに伝わる。こちらは「京のにわか雨」が同じ盤に入っているので、ついでにサービスといった印象。

🆂稲垣次郎 (サックス、フルート)/コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 荒川康男) 22/5/1 

こちらもウエスト・コースト・サウンドのニュアンスが持ち込まれた洗練されたアレンジ。ヴェンチュラ・ハイウェイに飛び出したくなる。次郎サックスは下世話さを持ち込んでいるというより、ジャズタッチを控え目に加えている感じだ。アルバムの他の荒川康男アレンジ曲の野性に囲まれると、清涼剤的な印象。

🆃吉岡錦正、錦英 (編曲: 竹村次郎) 22/5/20

最後は守りに入っての大正琴ヴァージョン。必要以上にIに戻りすぎるコードアレンジに違和感があるが、心が落ち着くサウンド

 

以上、20ヴァージョン (25枚収録)

おまけ: 🅳のイントロの気まぐれなギターの出所、この寺さんヴァージョンだった!抜け目ない。