黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

名前を出し辛くなった人が提示した「うそ」と「理由」

CBSソニー SOLT-45~46 

歌謡ワイド・ワイド・スぺシャル '74~'75ベスト歌謡ヒット

発売: 1974年

ジャケット

A1 恋は邪魔もの (沢田研二) 🅵→2/2

A2 別れの鐘の音 (五木ひろし) 🅵→2/2

A3 襟裳岬 (森進一) 🅻→21/11/15

A4 しあわせの一番星 (浅田美代子) 🅳→2/2

A5 しのび恋 (八代亜紀) 🅶→2/2

A6 星に願いを (アグネス・チャン) 🅵→2/2

A7 うそ (中条きよし) 🅵→21/11/3

A8 くちなしの花 (渡哲也) 🅸→21/11/3

A9 なみだの操 (殿さまキングス) 🅷→21/11/3

A10 あなた (小坂明子) 🅼

B1 夏の感情 (南沙織) 🅲→3/11

B2 君は特別 (郷ひろみ) 🅴→3/11

B3 夫婦鏡 (殿さまキングス) 🅸→3/11

B4 恋のアメリカン・フットボール (フィンガー5) 🅵→3/11

B5 恋と海とTシャツと (天地真理) 🅲→3/11

B6 ひと夏の経験 (山口百恵) 🅶→3/11

B7 激しい恋 (西城秀樹) 🅳→3/11

B8 さらば友よ (森進一) 🅶→3/11

B9 私は泣いています (りりィ) 🅸

B10 精霊流し (グレープ) 🅸

C1 夜霧の街 (南沙織) 🅱

C2 よろしく哀愁 (郷ひろみ) 🅱

C3 ちっぽけな感傷 (山口百恵) 🅵

C4 追憶 (沢田研二) 🅷

C5 ふれあい (中村雅俊) 🅹

C6 北航路 (森進一) 🅶

C7 岬めぐり (山本コウタローとウイークエンド) 🅲

C8 二人でお酒を (梓みちよ) 🅺

C9 お手やわらかに (夏木マリ)

C10 積木の部屋 (布施明) 🅴

D1 想い出のセレナーデ (天地真理) 🅳

D2 グッドバイ・マイ・ラブ (アン・ルイス) 🅲

D3 ミドリ色の屋根 (ルネ) 🅳

D4 愛の終末 (チェリッシュ) 🅱

D5 理由 (中条きよし) 🅷

D6 みれん (五木ひろし) 🅷

D7 冬の駅 (小柳ルミ子) 🅵

D8 冬の色 (山口百恵) 🅳

D9 甘い生活 (野口五郎) 🅱

D10 おんなの運命 (殿さまキングス) 🅹

 

演奏: クリスタル・サウンズ 

編曲: 土持城夫、たかしまあきひこ矢野立美、名嘉元英磨、いしだかつのり、池田正城

定価: 2,600円

 

クリスタル・サウンズの歴史をおさらいする際、大いなるミステリーゾーンと化していたのが「1974年後半」だった。後々カタログを調べても、この頃のリリース情報が出てこず、石油ショック後のシビアな状況の影響を被ったとは想像できるけれど。ちょい旬を過ぎたヒット曲の演奏ものなんて、誰が欲しがるかという風潮は絶対あったはず。現にクラウンは、それを意識してなきゃあそこまで商品リニューアルを活発にしなかったはず。対してソニーは律儀に歌手の発売ローテーションに寄り添い、ほぼ4ヶ月に1枚ペースを守り1枚ものをリリースし続けた。しかもフルコーラス演奏を片面に10曲入れるという無茶振りで、これは自社商品のクオリティコントロールをしっかりしてた自負がないとできないこと。ちゃんと作っていたからこそ、音質的デメリットを最小限まで抑えられもしたわけで。

そんなわけで、トワイライトゾーンと化していた1974年後半のヒット曲が収められている盤の情報をネット上に見つけてまず安堵。それがあっさり姿を現した。恒例の年末企画「ワイドワイド」の第2弾。何せ前年度の第1弾でクリスタル沼にどっぱまりとなっただけに、これは欠かせないセットである。前後2作の発売時期を考慮すると、これも11月発売と推定できるが、そうとも思えない理由は後述する。

1枚目はA面が主に3月発売のSOLH-39、B面が主に7月出たSOLH-53からのダイジェストとなっていて、両者の間にさえサウンド的に隔たりがあるのが時代の性急さを物語っていることを、改めて聴くと感じるのだけど、この2作の中でのベストトラック「若草の季節」が端折られているのは惜しい。

問題は全曲初登場ヴァージョンとなる2枚目で、12月新譜「冬の色」がいち早く入っているのは自社優遇としても、10月あたりまでの新曲を収めた1枚ものの盤があるのかどうかを確認できていず、この2枚組のための新録音という可能性もなきにしもあらず。ということは「はじめての出来事」あたりにはクリスタル・ヴァージョンは存在しないのかな。この辺、もっとがんばって深掘りしたいところだ。アレンジャークレジットが曲目毎に記されていず(SOLH-39からの再収録曲は、全て土持氏アレンジだが、それ以外が釈然としない)、楽しみが削がれはするけれど、安定のクリスタル節が堪能できるコレクション。1曲目にしては地味かと思われる「夜霧の街」でアンニュイに誘惑するアルトフルートとヴァイオリン、そしてパワフルに支えるドラムで既に掴みはOK。「ちっぽけな感傷」の空回りしてるようなイントロのギターと、ファンシーな音の絡みがまさに青春真っ只中という感じでいいし、「ふれあい」に可憐な色を与えるリコーダーがまさに「女学生の友」的イメージだ。「冬の色」はぎりぎりタイミングで楽譜のみ見てのアレンジなのだろうか、消化されきっていないイメージがあるけれど、逆に初々しさが出ていていい。唯一の当ブログ初登場曲は、意外にも夏木マリ最大のヒット曲となった「お手やわらかに」。この頃の曲が最も映えるのが、このクリスタルな音像であるのは間違いない。