アルティ AM20-5
エレクトーン・ロマンス NEW POPS ON FX-1
発売: 1984年11月
A2 ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ (ワム!)Ⓑ
A3 ニュー・ソング (ハワード・ジョーンズ)Ⓒ
A4 優しき雨に (J.D.サウザー)Ⓑ
A5 スリラー (マイケル・ジャクソン)Ⓒ
B1 ロックバルーンは99 (NENA)Ⓐ
B2 オートマティック (ポインター・シスターズ)Ⓐ
B3 ドント・アンサー・ミー (アラン・パーソンズ・プロジェクト)Ⓑ
B4 見つめてほしい (フィル・コリンズ)Ⓒ
B5 ヒーロー (ボニー・タイラー)Ⓐ
演奏/編曲: 川田祐子Ⓐ/小寺久美子Ⓑ/福岡保子Ⓒ
定価: 2,000円
1年半の沈黙を破り、遂に復活する「歌謡フリー火曜日」!今月用意したセレクションは奇しくも全て、欧米ポピュラーソング系となってしまいましたが、しょうがないですね。息抜きというか、趣味的にもいい感じでクールダウンできるのがこの辺なので。「日本のメロディー」とか、もう少し取り上げたい盤があるので、次の復活の際は忘れずにおこうと思います。
さて、今日紹介するのは黄昏みゅうぢっく初の「80年代洋楽」。これに関しては世代的にもドストライクだし、どうしてもミーハー的贔屓目になってしまいます。84年全米チャートを賑わしたヒット曲に、当時の最先端エレクトーンFX-1でアプローチしたアルバム。さすがにこの時代になると、エレクトーンの仕組みも大幅に変化。高橋レナや西村ユリの頃から爆発的に進化しました。リズムセクションや音色の変化を予めプログラミングでき、生演奏の中にその要素を自由に採り入れることで、ライブ楽器としての魅力も損なわないという、現在に至る路線がこの機種のあたりで形成されているのです。ポップスそのものが打ち込みサウンドに依存する傾向に入り、その流れに乗せられたという感もありますが、演る側には余計センシティヴな面が求められるし、敷居が高くなったという感も否めず。もちろん、そこに至るまでにはDX7という大ヒット商品の登場もあったし、一般的な意味でのキーボード奏者はそのサウンドとコンパクトさに魅せられて、従来の電子オルガンに物足りなさを感じ始めたのも仕方ないところ。そのDX7の長所もしっかり音色面に生かされて、斬新さもメリットの一部にはなっていますが、やはり教育用楽器の域からは逸脱してしまったかも。
なので、その魅力を伝えるには80年代ポップスって格好の素材かもしれません。ここで演奏している3人は、いずれも当時20代半ばのお嬢さん。写真を見ると、当時のイケイケファッションに色気を使ったというイメージが伝わってきますが、いずれも70年代中期からヤマハのJOCで活躍しており、未だに現役で先生をやってらっしゃる方もいるし、決してなめられません。 その音楽家魂で当時の最先端要素を吸収し、細かいところまで意識しながらスムーズな演奏を展開しています。と言えども、1台の楽器からその音が流れ出ているわけだから、響きは実にコンパクト。一言で言えば「カフェバー・ミュージック」なんですよ。黄昏みゅうぢっくでその言葉を使うのは、史上初めて。でも、当時のカルチャーを語る際、絶対外せません。
奇遇にも1曲目はデュラン・デュランの「ザ・リフレックス」。松本伊代が人影のないカフェバーで聴くアーティスト(爆)の大ヒット曲(しかしあの歌詞、どう考えても「学生街の喫茶店」へのオマージュとしか思えませんね。同曲でベースを弾いたの細野さんだし、松本隆氏ならではの視点というか)。これは元になったのがアルバム・ヴァージョンとしか思えないですが、妙に色気を出さず、ショーウィンドー越しに微笑みながら演奏するお姉さんのイメージ。歌謡耳で聴くと、次の曲は「東京涙倶楽部」だし(爆)、その次の曲が流れてくるとついつい「アンコ椿は恋の花」が口をついて出てきてしまいますが(瀧汗)、原曲の魅力を損なわず、付き合いやすいサウンドです。まぁ、どの曲も思い入れが深いし、唱和せずにいられないですね。各演奏者のコメントも当時のお嬢さんらしく親しみやすいですが、小寺さん「フィル・スペクター・サウンドに挑戦」(B3)と堂々と言いましたね…その心意気は讃えたいです。最後は当然、「兄が疲労…」でアゲアゲの極みに持っていっています(爆)。
「ミスDJリクエストパレード」やら「オールナイトフジ」やら、当時のちょい先輩お姉さんのカルチャーにはある意味怯れを感じついていけなかった…そんなセンチな想い出もぶり返してくるアルバムですが、もっと勇気を持てばよかったなと悔やむ…そして、もうちょっとだけ発売が遅かったら、明日誕生日のプリンスの曲も取り上げられてたかもしれません…ちょっと悔しいので、明日もこの雰囲気を引きずりますね。