マキシム MM-1007
‘73ヒット・オン・サマー/恋にゆれて
発売: 1973年
A1 恋にゆれて (小柳ルミ子) 🅸
A3 森を駆ける恋人たち (麻丘めぐみ) 🅶
A4 恋の十字路 (欧陽菲菲) 🅶
A5 傷つく世代 (南沙織) 🅹
A6 霧の出船 (五木ひろし) 🅷
A7 若葉のささやき (天地真理) 🅸
B1 赤い風船 (浅田美代子) 🅷
B2 北の恋唄 (殿さまキングス) 🅱
B3 オレンジの雨 (野口五郎) 🅳
B4 夕顔の雨 (森昌子) 🅸
B5 危険なふたり (沢田研二) 🅹
B6 少年記 (三善英史) 🅵
B7 妖精の詩 (アグネス・チャン) 🅷
演奏: ジミー・アンダーソン (ギター)/ニューサウンズオーケストラ
編曲: 竜崎孝路、山口順一郎
定価: 1,000円
何の気なしに、お隣のお国発祥のファッション通販サイトを眺めるチャンスが増えて(汗)、自分的にはこういう構図で歌無歌謡のジャケットが作られればいいのにとか、こういうファッションセンスは音楽活動の見せ場に導入すれば効果的かもとか思いながら、自分が買うわけじゃないのにと罪の意識も感じているのだけど、こうしてジャケ考察に戻ってきて、どこまでが今の考え方の中ではセーフかとか判断するのも面倒になってきて。特にお臍周辺が見えちゃってる場合は微妙なんですよね。この盤みたいに、セクシーというよりヘルシーなイメージが強調される場合は、別にいいじゃないかと思うのですけど、あまりデリケートに言葉を選んでもかえって逆効果だったりして。
あまりジャケに関しては深入りしない約束でしたね、ということでマキシムの1000円価格帯から出ていた1枚をご紹介。1000円で14曲とは大サービスですが、それなりに謎が多いアルバム。ジミー・アンダーソンというギタリスト、例によって誰かの隠れ仕事のような気もするけれど、実際音を聴いてみるとその憶測も外れじゃないかという予感も。前にマキシムが起用したピーター・ギブスは英国に実在するアレンジャーに同名の人がいたけれど、それと同じで、英語圏で活躍するスタジオ・ミュージシャンかもしれないんですよ(当然変名使用の可能性もあるし)。
で、本盤中A3~A7、B3~B7の計10曲は、一昨年5月24日に紹介した『若葉のささやき/春のおとずれ』と同じオケを使い、ギターのトラックを差し替えたもの。そこでは竜崎氏と野口武義氏がアレンジャーとしてクレジットされているが、ここでは野口氏の名前はなく、そのギター演奏も明らかにカラーが違うので、野口氏の変名という可能性は100%ない。そして、タメの効いたフレージングが日本人離れしてるというか、ローヤル的感触をあまり感じさせないのである。暴走気味の演奏が印象的だった「傷つく世代」も、『若葉』ヴァージョンでは主旋律がサックスだった分、バランスがとれたサウンドになっていたが、ここでは軽いディストーション気味のギターが、元々オケに入っている「レイラ」フレーズのギターとクラッシュしていて、なんか歯切れ悪い感じ。「赤い風船」もマイパックのDR-0016『歌謡ヒット・パレード』とオケが同じでギターだけ差し替えしている。さらに「危険なふたり」は『カラオケレコード・青春のうた』にまた別のギター差し替えテイクが収録されているので、同じオケから3種類のギター演奏をフィーチャーしたテイクが作られたことになるのだ!あーややこし。ここでの演奏は、なぜか所謂「輪ゴムギター」的音色になっているのもおかしい。
このジミー・アンダーソンの真髄が体験できるのは、ここまで出てこなかった3曲である。「恋にゆれて」は保守的な演奏ではあるけれど、バックのオーケストレーションが妙に透明感があって、この曲の数ある歌無盤でも出色の出来。対して「芽衣子のふて節」では、妙にロック色を強めたイントロに導かれ、破壊的なディストーション・サウンドが炸裂。これはマーティ・フリードマンが泣いて喜びそうだな…曲が進むにつれて泣きメタル度も深まってゆき、時空を超えた仁侠ワールドに連れて行ってくれる。やはりガチで日本人じゃないかもしれないなこの人…よせばいいのに「北の恋唄」でも同様のプレイを展開してるし。アンプに毒を盛ったようなファズサウンドが、落ち着いたストリングスの壁と好対照。これこそが73年のサグワールドの音像化だったのだろう。ヘルシーなジャケのイメージはどこへ行ったのだ…