黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

改めて、追悼…三浦徳子さん

コロムビア KZ-7133

ビート・ポップス’84 星屑のステージ/十戒 (1984)

発売: 1984年11月

ジャケット

A1 星屑のステージ (チェッカーズ)

A2 ラ・ヴィアンローズ (吉川晃司)☆

A3 マスカレード (安全地帯)☆

A4 ミス・ブランニュー・デイ (サザンオールスターズ)

A5 原宿メモリー (高田みづえ)

A6 ニュアンスしましょ (香坂みゆき)

A7 夏の日 (オフコース)☆

A8 東京Sugar Town (堀ちえみ)

A9 恋人も濡れる街角 (中村雅俊) 🅳

A10 顔に書いた恋愛小説 (田原俊彦)

B1 十戒(1984) (中森明菜)

B2 ピンクのモーツァルト (松田聖子)

B3 哀しみのスパイ (小林麻美)

B4 ヤマトナデシコ七変化 (小泉今日子)☆

B5 いつか誰かが (渡辺典子)

B6 唇のプライバシー (河合奈保子)☆

B7 NEVER (MIE)☆

B8 噂のルーズガール (中井貴一)

B9 雨音はショパンの調べ (小林麻美)☆

B10 桃色吐息 (高橋真梨子)

 

演奏: コロムビア・ポップス・オーケストラ

編曲: 大川友章、前田俊明(☆)

定価: 2,000円

 

ナイアガラ関連曲に目が眩み、昨日はついつい「今宵踊らん」を引っ張り出してしまいましたが、もう1枚用意していたこちらの方に3曲も、三浦徳子さん作詞の曲が含まれているではないですか…不覚でした。レコード番号順という目論見が崩れましたが、どうか許してということで。それにしても、80年代でありつつこの鮮烈なリリシズム。改めて、ご冥福をお祈りします。

1984年に出された歌無歌謡アルバムを取り上げるのは、これが初めて。昨年5月31日に紹介した盤の後、コロムビアから2枚出ていて、惜しくも大瀧作品や「君に胸キュン。」は選から漏れたのだけど、「い・け・な・いルージュマジック」とか期待できる選曲もいくつかあって、探す価値ありそう。なぜか「モニカ」が『歌謡ムード大作戦』に選曲されていたけど。

それらに続くのがこれで、『ビート・ポップス』シリーズとしては2作目。どの辺の層を狙っていたのだろうか…ライトなBGMという点では、最早喫茶店のタンテに似合うレコードという範疇を超えてる感があるし、例えばゲーセンで流れていても違和感ないと思うけど。この軽いサウンドを聴きながら、「ハイパーオリンピック」の筐体に定規を走らせ…おっと、そういう話をしちゃいけませんね。

わけありで歌謡曲に回帰し始めた時期だけあって、個々の曲に対する思い入れも豊富にあるし。「ニュアンスしましょ」に対しては立場上dis感半端なかったけど、この曲が入ってる同じ香坂みゆきのアルバムに山口美央子さんが提供した2曲がめちゃいいので、ある程度中和されたのかなという思い出も甦ってきたし。ビート・ポップスというだけあって、打ち込みドラムも生のドラムも鮮やかに駆け回っているし、特に三浦徳子さん作詞の3曲に、疾走感と王道歌謡タッチが同居してるところにはっとさせられる。奇遇なんでしょうかね。で、耳あたりがいい曲の連なりの末にたどり着いた目玉曲「雨音はショパンの調べ」。これ目当てで買ったようなものだけど大当たり。主旋律がパンフルートだもの。乙女心を覆い隠せない音色で1コーラスのAメロと終盤を吹き切る。ガチミュージシャンの歌心と、がんばって吹いてみたよみたいな恥じらいが同居した名演だ。この音で、例えばワーナーの「華麗なる~」シリーズみたいなのを1枚丸ごと聴いてみたい。

レコード発売年度を記す「N~」表記が初登場した歌無盤は、恐らくこれでしょう。思わず、広島の自販機で見かけた「桃色吐息」というドリンクに手を出したくなる1枚。