黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

この木陰には小梅ちゃんの涙が染みている

ミノルフォン KC-149

‘79最新ヒット歌謡 第1集

発売: 1979年5月

ジャケット

A1 惜春 (五木ひろし) 🅴

A2 季節の中で (松山千春) 🅳

A3 美・サイレント (山口百恵) 🅳

A4 YOUNG MAN (Y.M.C.A.) (西城秀樹) 🅲

A5 ジパング (ピンク・レディー) 🅲

A6 天までとどけ (さだまさし) 🅱

A7 北国の春 (千昌夫) 🅹

B1 雨に泣いてる (柳ジョージ&レイニーウッド)

B2 チャンピオン (アリス) 🅳

B3 モンキー・マジック (ゴダイゴ) 🅱

B4 性(サガ) (ツイスト) 🅱

B5 HERO (ヒーローになる時、それは今) (甲斐バンド) 🅲

B6 カサブランカ・ダンディ (沢田研二) 🅵

B7 ヘイ・ダーリン (柳ジョージ&レイニーウッド)

 

演奏: ミノルフォン ・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,800円

 

71年以来引っ張ってきたブルーナイト・オールスターズ名義を封印し、小梅ちゃんシリーズに代わって実写ジャケットを打ち出してのミノルフォン歌無歌謡再始動作。もっともこの路線も年末出した2枚組で一旦元に戻すわけで、なんか不可解な空気が漂ってくる…音の方にもその気が充満していて、1曲目が五木ひろしの曲であるにもかかわらず、オリジナルのオケを使っていない。即ち、76年までの路線に戻っているわけだが、この妙な軽さがミノルフォンの芸風とかなり違うというか、ブルーナイト名義で出されると違和感しか感じないに違いない。B面にはレイニーウッドの曲が2曲収録されているが、それらもオリジナルと別のオケが使われていて、「雨に泣いてる」を颯爽と歌い出そうとしたら全然キーが違い、ずっこけてしまう。とどめに北国の春は、ブルーナイト名義でオリジナルのオケを使用したヴァージョンが2種類あるのだけど、それらとも違う演奏になっている。オリジナルのカラーは捉えているが、微妙にギターのフレージングが違っているし、ピアノが張り切りすぎていて「自社解釈」とは思えない出来。恐らく、新米ディレクターが任された結果じゃなかろうか。もしくは、音源制作を外部に発注した結果かもしれないし。前年のアルバムで、数曲の演奏がMICROの「カラオケレコード 青春のうた」のテイクと全く同じという事例が実際あったし。

それらのミステリーは置いておくとして、気軽に聞き流せる演奏という意味で根本的にブルーナイトの盤とは別物、と捉えたいアルバムだ。B面に並ぶ曲がここまで骨抜きされるとむしろ痛快だし、A面では「美・サイレント」にフィーチャーされるアルトフルートが耽美な味を出しているなど、聴きどころもあるのだけど、それでもやはり小梅ちゃんシリーズの醸し出す雰囲気が恋しくなってしまう1枚。翌年出した実写シリーズ第2作では、力の入れ方もそれなりに変わってくるのだけど。

ところでその盤を語った時に引き合いに出した天までとどけがこのレコードに入っているので、もしやこれこそあのヴァージョンかと胸躍りましたが、残念、違いました…この曲と「さよならを言う気もない」の決定版の探索は、まだまだ続きそうです…後者はやっと、初の歌無しヴァージョンが手に入って、70年代のジュリー曲が遂に歌無コンプリートできたんですけどね。というわけで明後日に続きます…明日は火曜なので…