黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その52: ちょっと遅れたけどジョージを偲ぶ

テイチク BL-1002

ニュー・ヒット・ポップス・ベスト10/霧の中の二人

発売: 1971年

ジャケット

A1 愛のプレリュード (カーペンターズ) 🅲

A2 虹を架けよう (オリジナル・キャスト)

A3 あなたのとりこ (シルヴィ・ヴァルタン) 

A4 愛の喜び (メリー・ホプキン)

A5 霧の中の二人 (マッシュマッカーン) 🅱

B1 移民の歌 (レッド・ツェッペリン) 🅲

B2 悲しき初恋 (パートリッジ・ファミリー)

B3 ピノキオ (ダニエル・ビダル)

B4 バイ・バイ・ラブ (サイモン&ガーファンクル)

B5 ミスター・ロンリー (レターメン) 🅲

 

演奏: ニュー・サウンズ・オーケストラ

編曲: 池田孝

定価: 1,000円

 

テイチクのお手軽な「BEST and BESTシリーズ」はついつい手が出てしまいます。曲数の少なさ故になんか安心できる重量感があって…音質面ではまさしくそうなんですけど、時に意表を突かれる凄い演奏もあったりしてね。

この盤は1971年初頭にヒットした洋楽を取り上げたもので、ポピュラー性の高い選曲に手堅い演奏、付き合いやすさは抜群。A面トップはロジャニコの名曲(ここでのクレジットはポール・ウィリアムズのみになっているのが解せない!)ですがずっこける要素もなく、続く「虹を架けよう」へとピースフルな展開を導きます。「あなたのとりこ」は、同じシリーズで取り上げられた「ガラスの部屋」同様、当時よりむしろ21世紀になってから知名度が上がったような気がしますね。続く「愛の喜び」はタイトル的には馴染みがないけどかなり有名な曲だ…解説ではメリー・ホプキンの曲となってますが、彼女の録音はアップル入社以前、ウェールズのインディーズに残したものが紹介されていて、公式なヒット曲とは言い難い。そしてお馴染み「霧の中の二人」で威勢よくA面はおしまい。最早イントロがカットされた状態で聴く方(日本シングル・ヴァージョン仕様)に違和感がありまくるのですが…

こんなポピュラー性の強い選曲の中にそびえ立つZEPの「移民の歌」。これで3つ目のイージーリスニング・ヴァージョンですが、全部テイチク。どれもがんばってはいるんですけどね。ここでは池田孝氏らしいホーン・アレンジがむしろ、滑稽な感じを編み出しております。続く「悲しき初恋」も、この流れで聴くと「黒ネコのタンゴ」感が現出してしまう…フルートでラブリー感を強調しまくるピノキオ」には「ほほにキスして」や「Miracle Love」の歌無盤を幻聴してしまうし、最後の加速しまくるところは「おさい銭」にも通じるな(汗)。そして最後2曲は所謂オールディーズ・リバイバル曲。当時に於いてみれば無意識だったんだろうけど、徳間からニューハードのインスト盤が出てたり、スパイダースやブルコメも再発見アルバムを録音してたりして、静かな動きはあったはず。ソフトロックからハードロックを経て、ここにたどり着くというのがいかにも、60年代への挽歌感がありますね。最後の曲で期待通り、微睡の世界へ…城達也の声が聞こえてきそう(サックスで演ると違和感ありますが…)。重複している3曲のアレンジのカラーが明確に違うので、4月2日取り上げた『トップ・オブ・ザ・ポップス』のアレンジは池田孝氏かもという推測は取り消しておきましょう(汗)。