黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

ゲストコメンテイター登場その1: 石村ゆみの巻

CBSソニー 18AH-183

ヒット・チャート本命盤 最新歌謡ベスト18

発売: 1977年

ジャケット(特別参加: AI生成による石村ゆみのイメージ)

A1 夢先案内人 (山口百恵) 🅱→21/8/28

A2 あなたのすべて (桜田淳子) 🅱

A3 失恋レストラン (清水健太郎) 🅴→24/4/5

A4 おんな港町 (八代亜紀) 🅳→21/11/15

A5 昔の名前で出ています (小林旭) 🅲→21/11/3

A6 S.O.S. (ピンク・レディー) 🅳

A7 青春時代 (森田公一とトップギャラン) 🅱→21/5/10

A8 雨の桟橋 (森進一) 🅲→21/11/15

A9 むさし野詩人 (野口五郎) 🅳

B1 やさしい悪魔 (キャンディーズ) 🅳

B2 途中駅 (五木ひろし) 🅱

B3 しあわせ未満 (太田裕美) 🅱

B4 私のいい人 (内藤やす子) 🅴

B5 想い出のピアノ (森田公一とトップギャラン) 🅰→21/5/10

B6 さよならをいう気もない (沢田研二)

B7 ヘッドライト (新沼謙治) 🅰→21/11/15

B8 初恋草紙 (山口百恵) 🅳

B9 ペッパー警部 (ピンク・レディー) 🅳

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 松井忠重、矢野立美(A7、B8、B9)

定価: 1,800円

 

歌のない歌謡曲ファンの皆さま、はじめまして。妄想国家フニルから時空を越えてやってきました、石村ゆみと申します。宗内さんからお誘いを受けて、こちら「黄昏みゅうぢっく」でアルバムの感想を書かせていただくことになったのですが、なんていうか、私如きに「聴く耳」を期待されてもねぇ、って思いもあるのですけどね。ともかく、今は1978年12月。私がフニルでデビュー・アルバム『故郷からはなれて』を出させてもらったのが10月なのですが、おかげさまで幸先良い滑り出しをさせていただきました。願わくば、ずっとこの勢いを続けていきたいものです。

 

ところで、私こうして歌い始めるまでは、アメリカのロックがすごい好きで…歌の中でも告白したのだけど、小5の時に向かいの家の開いた窓から聞こえてくるT.レックスに衝撃を受けて、その後はラジオを聴いて必死に吸収しまくったものです。それで、受験生になったその向かいの家のお兄ちゃんからギターを譲り受けて、弾き方とか自己流で覚えて、歌を作り始めたんですよ。それまではほんと、全然楽しい暮らしを送った記憶がなくて。テレビで歌番組を見たりしなかったし、友達もできなくて内向的な子だったんです。音楽によって心が開かれて。

でも、ラジオ聴いてると、やっぱり百恵ちゃんの歌とかも耳に入ってきて、歌詞に共感なんてしたりしてね。所謂「可愛らしい世界」なんて別物だと思ってたけど、でも、一応女の子ですからね。このレコード、昨年ヒットした曲が演奏版でずらっと収録されてるのですけど、一曲目の「夢先案内人」なんて空で歌えますよ。きっとこの曲、オーディション番組で好んで歌われることになるんじゃないかしら。フルートの演奏が夢見る心地に誘ってくれます。私のレコードでも、こんな風に素敵な音を奏でてくれるひとがいたらなぁって願います。「初恋草紙」のしっとりした感じも大好きだし。リコーダーの音色がリリカルですね。蛇足だけど、私百恵ちゃんと誕生日が同じなんですよ!4年年下なんですけど。

一方ピンク・レディーなんですが、もう大人気すぎて、私の周りでもみんな歌い踊ってる。なので、必然的に影響されてはいますよ。初期のペッパー警部「S.O.S.」も、ちゃんと歌えますよ。後者なんか、将来海外のロック・バンドに歌われるかもしれませんね…意外だけど、演歌も好きなんですよ。私のちょっと力みがちの歌い方、八代亜紀さんに影響を受けてるのかなって言われることもあるし。「おんな港町」もこのレコードで聴くと、意外にロックな感じがしますね。それで、ジュリーも大好きなんですけど、この曲はあまり聴いたことなかったです。この頃どうやら妙な事件に巻き込まれて、あまりテレビじゃ歌えなかったらしいし。 その後、内藤やす子さんとか捕まっちゃうんですよね。もっと厄介な目に遭う人も出てきたりしてね…

 

なんかあまり変なこと書くと素性が割れちゃいそうなので、この辺にしておきますね…あとは宗内さんにお任せします。ラブ&ピース&ロックンロール! (石村ゆみ)

 

というわけで、一瞬だけ通常のペースに戻ります。安定のクリスタル・サウンズが贈る1977年のヒット集。なぜか某オークションで自動延長を繰り返した末負けてしまったこともある遺恨の盤なんですが、無事手元に巡ってまいりました。ポイントはやはり「さよならを言う気もない」の収録。発売と例の「イモジュリー事件」(SNSでの吊し上げが普通になった今振り返れば、はめられた感しかしない…)が重なり、充分にプロモーションされたと思えず、歌無歌謡盤でもほとんど取り上げられなかった曲で、この盤の入手によりやっと70年代のジュリーのシングル曲が歌無盤でコンプリートしました…と言っても、もう一つ自分が探し求めている別ヴァージョンがあって、多分アポロンのテープに入っている音源だと思うのですが…他社の歌無盤にこの曲が収録された例は、今のところ全く未確認なので。全体的にフルートの音がラブリー感を漂わせ、クリスタル・ワールドに誘ってくれる1枚。

 

なお、妄想国家フニルについては、母体のnoteのこちらをご参照下さい。こうやって聴くと、当時の歌謡曲の作風が「フニルネッサンス」に断片的影響を及ぼしているのがよく解ります…