黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

緊急哀悼…今は黙って1985年に思いを馳せるだけ

CBSソニー 25KH-1743 (カセット) 

ヒット歌謡全曲集

発売: 1985年10月

ジャケット

A1 HEART OF RAINBOW ~愛の虹を渡って~ (チェッカーズ)

A2 もう逢えないかもしれない (菊池桃子)

A3 魔女 (小泉今日子)

A4 スクール・ガール (C-C-B)

A5 ミ・アモーレ (中森明菜)☆

A6 あなたを・もっと・知りたくて (薬師丸ひろ子)

A7 DANCING SHOES (Seiko)

A8 夢絆(きずな)  (近藤真彦)☆

A9 BOYのテーマ (菊池桃子)

A10 白い炎 (斉藤由貴)

A11 ブルー・パシフィック (チェッカーズ)

B1 SOLITUDE (中森明菜)

B2 Lucky Chanceをもう一度 (C-C-B)

B3 卒業 (菊池桃子)☆

B4 早春物語 (原田知世)

B5 あの娘とスキャンダル (チェッカーズ)

B6 サファイア・ブルー (郷ひろみ)

B7 SAND BEIGE~砂漠へ~ (中森明菜)

B8 天に星、地に花。 (薬師丸ひろ子)

B9 常夏娘 (小泉今日子)

B10 RAIN-DANCEがきこえる (吉川晃司)

B11 俺たちのロカビリーナイト (チェッカーズ)

 

演奏: CBSソニー・グランド・オーケストラ

編曲: 田辺信一、甲斐正人(☆)

定価: 2,500円

 

律儀にレコード番号順に更新するつもりだったけれど、さすがに今は胸が張り裂けそうだ。彼女の歌は入っていないけれど、彼女がデビューした1985年のヒット曲で綴ったカセットをスタンバイしていたので、予定より繰り上げ、このやるせない感情を吐き出させてほしい。

 

1985年にもなると、さすがに歌のない歌謡曲という概念もほぼ廃れたも同然。前半デビューしたいきのいいアイドル勢の曲が、歌を離れて消費されることなど考えられず、雰囲気作りのための音楽はいつの間にかアンビエントとかニューエイジとか、そう言った言葉で括られるものへと主流がシフトしていた。その一方で、若者のレジャーとしてのカラオケが確立されるにもまだ及ばず。貢ぎの対象としてのアイドル音楽という概念は、今となっては当たり前のような面もあるけれど、それでも当時レコードに刻まれた音は、時代を大らかに映し出していた。

前年、遠いところにいた好きな人との絆を永遠に遠いところへ放り投げられたと感じた自分(=宗内の母体)は、そこからの救いを求めるように「アイドルを探し」始めるのだ。勿論、何人か「推し」と呼べる存在を見つけ、熱心に追いかけたけれど、この頃はアイドルを産む磁場そのものが大きく輝いていた。そこにいくつもの名曲が生まれ、今も聴き継がれている。時代を移す鏡として生き残ったのだ。歌謡曲の質が落ちたなんて言ってはいけない。いかなる時代にも、それなりの輝きがあった。

そんな1985年前半デビューアイドルの曲は、ここでは「白い炎」が選ばれるに留まっている。さすがに選択範囲がシビアすぎたのはあるかもしれない。各社こぞって歌無歌謡のレコードを発売しまくる日々なんて、とっくに終わっていたから。それでもなお、洗練されたサウンドで綴られるアイドルソングのメロディーには、愛しさしか感じられない。多くの曲でソロをとるフルートの初々しい響きが、まるで奏者自身がアイドルを演じてるような形相を映し出している。優しく寄り添うバックコーラスは、未来のアイドル達の肩を撫でる風のようだ。そして、依然感じる筒美京平の「強さ」。5曲ここに選ばれている。今の気分でこれらの曲を聴くと、本当に胸が張り裂けそう。もうあの時代に戻ることなんてできない。

 

ところで、まさか存在してないだろうと思われたおニャン子クラブ関係曲のインスト・コレクションが、このテープの翌年にソニーからこっそり、こちらもカセットのみで発売されてるのを知って、びっくりした。しかもオークションでとんでもないスタート価格で出されていた…なんとかして聴いてみたいところでありますが。

 

改めて、中山美穂さん、長い間ありがとうございました。