黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

サイケ時代に「うちで踊ろう」を提唱した意味とは

キング SKK-404

ビート天国 二人だけのダンス・アルバムVol.2

発売: 1967年12月

ジャケット

A1 霧のかなたに (黛ジュン)Ⓐ 🅲

A2 マリアの泉 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)Ⓑ 🅳

A3 好きさ好きさ好きさ (ザ・カーナビーツ)Ⓑ 🅱

A4 夕陽と共に (ザ・ワイルド・ワンズ)Ⓑ 🅱

A5 北国の青い空 (奥村チヨ)Ⓐ 🅳

A6 甘いお話 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)Ⓐ

A7 バラ色の雲 (ヴィレッジ・シンガーズ)Ⓑ 🅳

B1 青空のある限り (ザ・ワイルド・ワンズ)Ⓑ

B2 太陽の翼 (ザ・スパイダース)Ⓑ 🅲

B3 北国の二人 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)Ⓐ

B4 シーサイド・バウンド (ザ・タイガース)Ⓑ 🅱

B5 モナリザの微笑 (ザ・タイガース)Ⓑ 🅲

B6 いとしのジザベル (ザ・ゴールデン・カップス)Ⓑ 🅱

B7 風が泣いている (ザ・スパイダース)Ⓑ 🅱

 

演奏: キング・イージー・リスナーズ

編曲: 小川寛興Ⓐ、高田弘Ⓑ

定価: 1,500円

 

今回の復活月間はGS度の高いアルバムが多く、実にときめきますが…これも当時のキングらしい、高貴かつグルーヴィな感じが伝わってくるジャケット。このレタリングもストーンズのシングルのジャケとかでよく見たタッチ(「ランターン」が最も近いか)だし、親しみが持てますね。それで「二人だけのダンス・アルバム」ですか…「ダンス専科」シリーズのような社交ダンス推奨イメージはなく、むしろ二人っきりの部屋での雰囲気づくりを狙ったというか、狭い部屋で身体を寄せ合いダンスするのは当時の生活環境的にどうだったんでしょうかね。これで飽きたらなくなった時のために、ビクターの一連の大人向けの盤を引っ張り出すとか…おっと、そういう話はなしですね。あくまでも健全な感じで踊りましょう。「今宵踊らん」のようなダンスの種類で区分ではなく、大雑把に「High Beat」と「Medium Beat」に分けられ、申し分程度に「Bossa Nova」が入っているというのもいかにも若人向け。

で、1曲目が「霧のかなたに」ってのは地味でしょ…場末感が強調されて若々しさがどっかいっちゃってる。若さの象徴としてのジュン人気に乗ったのだろうけど、ここはやはり「君なき世界」とか「ウォーキン・ザ・バルコニー」とか自社推しで行って欲しかったな。でもやっぱポピュラリティ的に逆効果か…「マリアの泉」からはちゃんとGS感が出てきて、イカしたドレスで踊れる。「好きさ好きさ好きさ」ゾンビーズの曲と捉えれば唯一の自社曲ということになる。敢えてムーディに演っているのだけど、途中「好きさ」の回数が減ってたりしておかしなことになる。「夕陽と共に」はちゃんと12弦ギターを使っていてなかなかの出来。全体的にフルートの使用がラブリー感を編み出していて、寄り添う二人のイメージを描いてくれる。テンポアップしての「北国の青い空」の通俗感には違和感はなく、フルート効果も増大。「甘いお話」はまさかの大変身だ。

B面トップの「青空のある限り」はファズ使用がないが、その代わりに大爆走モードになっていて、これは二人の部屋が荒れそう。シーズやカウント・ファイブを出していたキングの意地が伝わってくる。その代わりに「太陽の翼」がムーディに変換されている。もっと爆走しているのが「シーサイド・バウンド」。これはセーフティ・ダンスどころの騒ぎじゃないな(爆)。ピアノを配しつつもなかなかワイルドに処理しているタイガース曲を経て、「いとしのジザベル」はさすがにワイルド度が足りない。それでもいいか、というわけでラストは「青い影」とかでムーディに締めくくらず、フルートが咽び泣いて「風が泣いている」で大団円。

こんな二人だけのピースフルなダンス・モードに向け、この翌月にドロップされたのがかの「スナッキーで踊ろう」だったのである(なわけない)。