黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

彼女を育てたキングの黄金期を侮ってはいけません

キング SKK-405

あの人の足音 ニュー・ポップス・スペクタクラー

発売: 1968年1月

ジャケット

A1 あの人の足音 (伊東ゆかり)

A2 世界は二人のために (佐良直美) 🅱

A3 霧のかなたに (黛ジュン) 🅳

A4 バラ色の雲 (ヴィレッジ・シンガーズ) 🅴

A5 ブルー・シャトウ (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅴

A6 愛のこころ (布施明) 🅱

B1 恋のフーガ (ザ・ピーナッツ)

B2 モナリザの微笑 (ザ・タイガース) 🅳

B3 マリアの泉 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅴

B4 恋のギターラ (梓みちよ)

B5 北国の二人 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅱

B6 小指の想い出 (伊東ゆかり) 🅳

 

演奏: レオン・ポップス

編曲: 石川皓也

定価: 1,500円

 

昨日の盤の次の番号でリリースされたアルバムですが、1967年と1968年ってだけでも質感に大違いなんですよね。ポップス・リスナーとしてはそれは当たり前の考え方なんですけど。どうなんでしょうか、歌無歌謡リスナーとしては。

名門レオン・ポップスがいつもの調子で送る快活なヒット・セレクション。こちらの題字もストーンズのシングルのジャケとかで見慣れたタッチ(「この世界に愛を」が近いか)で、曲も5曲重なっていますが、こちらはポップス色濃いと言えども従来の歌謡路線に忠実に、ミポリンの大先輩にあたる自社タレントの曲も半数近い(「世界は二人のために」は翌年、コロネードスのカバー盤がリリースされているため、それを含めると半数)。若々しいイメージに囚われることなく楽しめますが、さすがに年季の入ったユニークなサウンドメイクはこちらでしか味わえません。名物である電気処理をかました鍵ハモは大活躍しているし、フルートの溶け込み方も全体のイメージに見合ったものになっている。そして、雄大なストリングスはやはりこの名義の特色。爆走するドラム・サウンドとこれらの要素が一体化した「バラ色の雲」が特に素晴らしく、昨日のアルバムの若々しさと一味違う。

今まで登場してなかったのが不思議な恋のフーガ(自社曲なのに作曲者をミスクレジットしてる…でも実は、これはキングあるあるなんですよね。通常の歌謡シングルでもざらですから。「恋の呪文」とか)も疾走感がオリジナル以上で、聴きごたえ充分。モナリザの微笑」はなんと3日連続登場(当初の予定ではそうでした)で、当時のタイガースの勢いが窺える。クラシカル度全開でここでの解釈が最もしっくり来るな。「マリアの泉」も昨日の盤以上にGS度が高い。キングらしいドラムのビッグな音が、エレガント度をより強調している。思えばあの名曲、三井里子「これだけは云いたくない」もこの月のリリースだった。同じような面子が演奏しているはず…この辺もサブスクフル解禁に期待したいところ。もちろん歌無歌謡も。