黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その53: エーブリバディわしゃこけた~

アイドル 1-1018 (カセット)

ハイウェイをぶっとばせ/ドライブ・コンサート

発売: 1977年?

ジャケット

A1 愛にすべてを (クイーン)

A2 ウォーク・ディス・ウェイ (エアロスミス)☆

A3 星空のふたり (マリリン・マックー&ビリー・デイヴィス・Jr)☆→24/4/23

A4 ウォーク・ドント・ラン (ザ・ベンチャーズ) 🅱

A5 ブルドッグ (ザ・ベンチャーズ)

A6 パイプライン (ザ・シャンテイズ) 🅱

A7 ワイプアウト (ザ・サファリーズ) 🅱

A8 セクシー・ドラキュラ (ムッシュ・ゴラゲール)

B1 ロックン・ローラー (ベイ・シティ・ローラーズ)☆

B2 エスタデイズ・ヒーロー (ベイ・シティ・ローラーズ)☆

B3 男の世界 (ジェリー・ウォレス)

B4 秘密謀報員 (ジョニー・リヴァース)

B5 二人の銀座 (山内賢和泉雅子) 🅲

B6 恋はみずいろ (ポール・モーリア) 🅱

B7 北国の青い空 (奥村チヨ) 🅴

B8 京都慕情 (渚ゆう子) 🅶

 

演奏: ブルーシャドーメンバーズ (☆: 歌入り)

編曲: 無記名

定価: 1,200円

 

今回の復活月間も怪しいテープがてんこ盛りですよ…長旅のお供に最適と適当なタイトルをつけたと思しき、分裂度の高い1本。アイドルというレーベル名だが、恐らく宮崎一男とI・O・Kで知られるレーベルとは別会社だろう(株式会社マニアサウンドというのが製造元)。

いきなりクイーンの「愛にすべてを」だ…この曲はKYO-ONからリリースされている怪盤「ロックでぶっとばせ」に収録されている歌入り版があまりにも酷すぎて、それを流用しているのかと思いきや、イントロから全然印象が違うコーラス。しかも最初の一語が「Hey」だし、こちらもトホホすぎる…と本編に入ったら、妙なシンセ音でメロが奏でられるインストの別ヴァージョン。演奏そのものは「ロックでぶっとばせ」よりちょっとだけガチなんだけど、シンセもコーラスも脱力ものなのは変わりない。中間部以降はそれこそこけまくってるし…そして3コーラス目に入るというタイミングでフェイドアウトする。残念ですが、努力は認めてあげましょう。よりトホホすぎるのは続く「お説教」なのだが、もうコメントなしです。歌無歌謡ブログですので。履いてるアディダスを脱ぎ捨て篝火の中に放り投げたくなる歌と演奏だ。「星空のふたり」は前回の復活月間で紹介した8トラックと同じ歌入りヴァージョン。

そしてこの先は何故かベンチャーズモードのエレキインスト大会。今時のポップ/ロックから唐突に60年代青春へと場面が変換。場末色の強いコンボ演奏がモダン色を一掃してしまう。この方がまったり付き合えはできるけど、やっぱ本家を聴きたくなるしかないですよね。「パイプライン」の謎のポルタメントエフェクト(弦擦りもやっているが)、2本以上のギターで同時にテケテケをやっているとことか、リアルタイムで出せない味もあるけれど。「お説教」同様、後にラップ化されるワイプアウトも、無駄にドラムががんばりすぎる一方で何故かほのぼのとした雰囲気がある。グリグリした音のベースソロは単なるサービスか。そしてA面最後だけ何故かZ級ディスコサウンド。何を根拠にこんな構成にしたのだろう…

B面の冒頭を飾るローラーズ曲で再びボーカルものに突入。せこいサウンドとトホホな歌ではあるけれど、「ロックン・ローラー」ではちゃんとボーカルを3人別々に当てがってたり、解ってるなと思うところもちょっとだけ。全然演出されてない「イエスタデイズ・ヒーロー」も当時の安キャバレーに出る「嫌々ロックバンド」的雰囲気で、早々と終わってしまうのが惜しい。続く「男の世界」は…79年までのオリコン1位曲で唯一、「黄昏みゅうぢっく」にまだ登場してなかった曲だ!厳密には通販盤をバラで買ったやつに入っていたけど、そういうのは対象外でしたので。途中スローな3拍子になるところとか工夫を見せたアレンジが、かえって鄙びた感じを醸し出しているこの曲から再び、場末エレキサウンドに戻る。ベンチャーズモードも「ベンチャーズ歌謡」を取り入れさらなる分裂状態へ。唐突に挟まれる「恋はみずいろ」も全く同じサウンドで演っている。ジェフ・ベックの影はないな(爆)。「男の世界」「京都慕情」の収録、「パイプライン」のエフェクトから察して、これらの録音は70年以前ということはまずないし、72年以降だとこんなステレオセパレーションの感じはあり得ないな…ドラムやオルガンの音の距離感も然り。怪しいテープメーカーの手が届く音源であれば、いかなる形式であれ使っていいんだなと、当時の音楽裏街道を偲ばせる貴重なテープ。