黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

音の侵略者の功績を蔑ろにしないでね

ワーナー L-6050W

ベンチャーズと踊ろう!

発売: 1972年4月

ジャケット

A1 雨の御堂筋 (欧陽菲菲) 🅽

A2 長崎慕情 (渚ゆう子) 🅺

A3 名古屋特急 (アン・ルイス)

A4 霧のめぐり逢い (桐山和子)

A5 京都慕情 (渚ゆう子) 🅷

A6 北国の青い空 (奥村チヨ) 🅵

B1 明日へ走る (一番星) 🅱

B2 京都の恋 (渚ゆう子) 🅺

B3 二人の銀座 (山内賢和泉雅子) 🅵

B4 異国の人 (小幡桂子) 🅱

B5 東京ナイト (山内賢和泉雅子)

B6 この道を歩こう (ザ・ベンチャーズ)

 

演奏: 鈴木邦彦/ワーナー・ビートニックス、ザ・ウィルビーズ

編曲: 鈴木邦彦

定価: 1,800円

 

23年6月15日に取り上げた『ロマンティック・ベンチャーズサウンド』に5ヶ月先駆けてリリースされた、ベンチャーズ歌謡に焦点を絞ったアルバム。一連のアトランティック盤とは違うコンセプトでありながらも、大野良治プロデュースでワーナー・ビートニックス名義を採用していることで「箔」をつけてる感はあり。ただ、収録曲を12曲に押さえてるところには色々な思惑が絡んでいそう。そして、バンド・リーダーに鈴木邦彦先生を起用しているのが美味しい。色々と面白い絡みがあるんですよね。

まずは、シングル・カットされていない「知る人ぞ知る」楽曲「名古屋特急」が収められているところ。2月リリースされたアンのファースト・アルバムに収録されているのだけど、なかにし礼氏が書き下ろしたその歌詞に近いものが、11月リリースされた泉まりの「京都特急」に惜しげもなく転用されているのだ。その作曲を手掛けたのが、他ならぬ鈴木邦彦先生…当然、大胆なベンチャーズ歌謡のオマージュに仕上がっていて、これはこれでいい曲なんだけど、このインスト・ヴァージョンが二つの点を線で繋いでるなんて、出来過ぎの話じゃないですか…もう一つ因縁のコネクションとして、邦彦先生初の作曲家仕事となった「ユー・アンド・ミー」(今やみんな大好きB面曲「エレキ・ファンタジー~二人の虹~」に隠れがちになっちゃってますが)でデュエットデビューした山内・和泉コンビの曲2曲を取り上げたところも。

あと、スリーパー気味の曲として、デビュー(厳密には違うが)から3曲連続でベンチャーズ歌謡を歌ったがパッとしなかった桐山和子の「霧のめぐり逢い」の選曲が目を引く。ただこれはオリジナルから逸脱しすぎていてかえって面白くないな。自社推しの「明日へ走れ」から始まるB面はほぼテンポを揃えてコンセプチュアルな展開。厳密にはベンチャーズのオリジナルではない「異国の人」もこの通り、原曲の悲壮さが消え去っている。ラスト曲は歌謡ヴァージョンが確認されていないが、「京都の恋」のシングルB面に入っていたもの。全編をラブリーに彩るウィルビーズのコーラスは、歌無歌謡に新たな色合いをもたらしている。しかしこの帯、何も考えてなきゃ本家のレコードと思ってしまいそうで怖い…実際メル・テイラーのソロ録音はワーナーで出してましたし。