黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1969年の今日「紅白歌のベストテン」が放映開始

大映 DAL-12

トランペットとテナー・サックスでヒット歌謡を… 夜明けのスキャット

発売: 1969年6月

ジャケット

A1 夜明けのスキャット (由紀さおり) 🆃

A2 みんな夢の中 (高田恭子) 🅽

A3 私にだって (矢吹健) 🅲

A4 風 (はしだのりひことシューベルツ) 🆇

A5 港町・涙町・別れ町 (石原裕次郎) 🅸

A6 不思議な太陽 (黛ジュン) 🅴

B1 時には母のない子のように (カルメン・マキ) 🆆

B2 だけど愛してる (梓みちよ) 🅳

B3 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🆂

B4 うしろ姿 (矢吹健) 🅱

B5 愛の奇跡 (ヒデとロザンナ) 🅹

B6 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅼

 

演奏: 伏見哲夫、ジョージ高野/ザ・サウンズ・エース

編曲: 池田孝

定価: 1,500円

 

1969年のレコードもこれで88枚目…同年のヒットを収録しながら、発売が翌年に持ち越されたものも含めると、100枚は行ったかもしれません。歌無歌謡を量産するに向かわせる最良のシーズンだったのかも。その年の10月に、70年代中期までを象徴するベスト10番組の放映が始まったのもシンボリックだったのでは。ただ、そこに出演する歌手のセレクションが必ずしも民意を100%反映したものではなかったことも重要で、その辺りは77年に始まったライバル番組にあっさり覆されてしまいましたし、その辺りから歌無歌謡の意味合いも変わってきたのははっきりと解ります。やはりプロダクションの政治力が全て、でしたよね。歌無歌謡の選曲も然り、時々レコード会社の猛烈な推しであまりヒットしたと言えない曲が入ってくることもありましたけど(それが自分を強烈に引き付けるのですよ)。

 

この大映レコードからの盤は、販売を担当したテイチクのカラーも幾分かは入っているけれど、あくまでも「うちらは映画会社ですんで」という視線で水平にヒット・チャート界を視察し、慎重に選曲したという印象。既にここで20ヴァージョン以上取り上げている曲が3曲も入っているし。知ってる曲が多いと売りやすい、というのは確かにありましたね。ただ、尺八をフィーチャーした盤や、コンボとオーケストラの演奏を別々のチャンネルに入れた盤に比べると、あくまでも基本的姿勢に忠実。それでも、トランペットとサックスをほぼ均等にフィーチャーしている例は珍しく、意外にもキマッている演奏が多い。アレンジ仕事をフル回転でこなしつつ、アルバムの性格決めに際しては常に新しい視点をぶつけてくるのは池田孝氏の特性の一つ。「夜明けのスキャットも、既に2種類池田アレンジヴァージョンを取り上げているけれど、それらとまた違ったカラーを出してきている。特に1番から2番に向けて転調するところがかなり不思議。場末的な演奏で始めながら、2コーラス目で突如キャバレー的に盛り上げ流アレンジになる「みんな夢の中」もユニーク。おなじみの曲だからこそ、感情移入して耳に入れられるんですよね。職人的な演奏とこじんまりした場末感で、69年の空気に思う存分浸れます。