黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は坂上香織さんの誕生日なので

ミノルフォン KC-80

‘74最新ヒット歌謡 

発売: 1974年8月

f:id:knowledgetheporcupine:20210728092545j:plain

ジャケット+盤



A1 浜昼顔 (五木ひろし)Ⓐ 

A2 恋のアメリカンフットボール (フィンガー5)Ⓑ 

A3 ひとり囃子 (小柳ルミ子)Ⓐ

A4 今日も笑顔でこんにちは (森昌子)Ⓑ

A5 うすなさけ (中条きよし)Ⓐ 🅱

A6 恋と海とTシャツと (天地真理)Ⓐ

A7 灰色の瞳 (加藤登紀子長谷川きよし)Ⓐ 🅱

A8 夫婦鏡 (殿さまキングス)Ⓑ 🅱

B1 ポケットいっぱいの秘密 (アグネス・チャン)Ⓐ

B2 君は特別 (郷ひろみ)Ⓑ 

B3 二人でお酒を (梓みちよ)Ⓐ 🅴

B4 黄色いリボン (桜田淳子)Ⓑ

B5 虹の架け橋 (浅田美代子)Ⓑ

B6 グッドバイ・マイ・ラブ (アン・ルイス) 🅱

B7 隣りの二人 (けい子とエンディ・ルイス)Ⓑ

B8 わかれ花 (渡哲也)Ⓐ 🅱

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ

編曲: 京建輔Ⓐ、土持城夫Ⓑ

定価: 1,800円

 

70年代歌無歌謡全盛期の曲をシングルでカバーしている場合は、80年代アイドルの誕生日も盛大にお祝いしちゃいますよ、というわけで今日はブルーナイト・オールスターズの過渡期の一枚、74年のヒット曲集をお届け。ちょっと際どい水着ガールのジャケですが、個人的にはイラスト路線になってからのブルーナイトに余計魅力を感じてるので…と言えども、これはこれで魅力的なところもある。「ひとり囃子」は「禁じられた恋」を進化させた、というか郷愁色を強めたみたいな曲で、寧ろ今になってから良さに気付くような。さりげなく入っているリコーダーに、もっと前に出てきてとお願いしたいアレンジである。対して「今日も笑顔でこんにちは」はお祭り色が強すぎて、今じゃ正当に省みられてないような。この種の曲は堀ちえみの「Wa・ショイ!」位ぶっ飛んでくれないとね。フルートが清涼感を醸し出すアレンジはなんか不釣り合いな感じ。「夫婦鏡」はやはり、水谷公生&トライブの衝撃的ヴァージョン(本来、同曲が4週連続1位の1週目を記録した15日に語るはずでしたがお流れに…もう少々お待ち下さい)を前にすると、他のやつが全部蒼ざめますね。B面はのっけから「ポケットいっぱいの秘密」、めちゃがんばってるヴァージョンです。ファンキーに盛り上げる「君は特別」もいいけど、中盤のガーリー曲連発はもうちょっとラブリーさが欲しかった気も(ええ、あの音が足りない…汗)。恒例の自社推し枠にはピンキラから派生したユニット、けい子とエンディ・ルイスの通好みの曲「隣りの二人」が。フルートを中心にポップにこなしているけれど、さりげなく入るディストーションが軽くかかったエレピに耳を奪われる。これも平尾昌晃作品…なんだけど、「グッドバイ・マイ・ラブ」を最後に持ってきて、平尾2連発ですっきり締めて欲しかったという感もある。最初と最後って、意外に肝心なんですよ、歌無歌謡のアルバムでも。めちゃ印象が変わる場合ありますから。

今日は大滝詠一さんの誕生日なので

ユピテル YL-1023

マスター・オブ・ポータサウンド

発売: 1981年

f:id:knowledgetheporcupine:20210727044213j:plain

ジャケット



A1 ルビーの指環 (寺尾聰) 

A2 君は天然色 (大滝詠一) 

A3 恋のハッピーデート (ノーランズ) 

A4 パープルタウン (八神純子) 

A5 ダンシング・クイーン (ABBA) 

A6 想い出の渚 (ザ・ワイルド・ワンズ) 🅱

A7 ランナウェイ (シャネルズ) 

A8 スモーク・オン・ザ・ウォーター (ディープ・パープル) 

B1 シャドー・シティ (寺尾聰) 

B2 春咲小紅 (矢野顕子) 

B3 ひとり上手 (中島みゆき)

B4 ダンシング・オールナイト (もんた&ブラザーズ) 

B5 順子 (長渕剛)

B6 異邦人 (久保田早紀) 

B7 ライディーン (イエロー・マジック・オーケストラ) 

B8 黄泉の国へ (プライベート・ドクター) 

 

演奏/編曲: 川島裕二

定価: 2,000円

 

さて、迎えた「ナイアガラ記念日」だ。一体このブログで何をすればいいのだ(ちなみに来年3月21日は、普通に「加藤和彦さんの誕生日」で行きますとも!ネタバレ!)。『今宵踊らん』シリーズに「探偵物語」「Tシャツに口紅」「冬のリヴィエラ」がそろって収録されている盤があることは既に触れたし、「冬のリヴィエラ」は普通に歌無演歌のアルバムに入っている例も多そうだけど(「熱き心に」も)。かえって『ロンバケ』収録曲をリアルタイムで取り上げた盤が手許に2枚あることが驚異的に思えるのだ(いずれも、所謂「オーケストラもの」ではないが)。そんなわけで、今日はその片方を選んでみました。

歌のない歌謡曲として扱うには異端すぎる本盤は、寧ろ「実演推進盤」と呼ぶべきもの。70年代までありがちな「フォーク・ギター入門」(と謳いながら、取り上げている曲の多くは最新フォーク・ヒット曲というやつ)みたいなのの延長線上にあるものだ。70年代末期に勃発したテクノポップ・ブームをきっかけに、電子キーボード界が一気に足取りを軽くする傾向に突入し、大ヒットしたカシオ計算機の「カシオトーン」に続けと、ガチメーカーの本家ヤマハ「ポータサウンドを市場に送り出したのは1980年のこと。このアルバムは、そのデモンストレーション盤のようなものである。最新ヒット曲を軸に懐メロまで交えて、このキーボードで何ができるかを極限まで突き詰めたもので、他の楽器によって発された音は一切入っていない(勿論、オートリズムを除くと自動演奏的な要素も一切ない。MIDI登場は本盤発売とほぼ同時期で、一般化はまだまだ先のこと)。セッティング図、コード譜(歌詞まで!)、簡単なアドヴァイスまで添えられており、MTRを使用しての多重録音から、複数の楽器を持ち寄ってのアンサンブルまで、幅広く応用できることを謳っているが、その割に相当トリッキーな技を使って音が構築されており、「スイッチト・オン」シリーズの如き偏執狂的な姿勢さえ伝わってくる。イージーリスニングにするには、かなりの変わり種だ。 

ルビーの指環はなんとなく雰囲気の近いプリセットリズムに乗せて主旋律を奏でるという基本ユースのお手本のような感じで、イントロとしてはちょうどいいけど、この洗練感を一発演奏で出すのは実に難しそう。2曲目に早くも君は天然色が登場。こまめにリズムを切り替えて、エコーやら謎の音も駆使しての「ナイアガラ的」雰囲気作りが醸し出されているけれど、好き者としては原型通り、Bメロを転調して弾いてみたくなるんだよね…それって結構難しいのだけど、それを知らない人にとってはこのエンディングは「謎」だったんだろうな。「ダンシング・クイーン」ではなんとストリングスの音を11回重ねるという荒技が使われていることが明記されているけど、その繊細な音と倍速で使用されているオートリズムの滑稽さの対比が何とも言えない。GS、オールディーズと何でも来いの姿勢を見せた後、一気に激化しての「スモーク・オン・ザ・ウォーター」ディストーションかましての反則技、自分もカシオトーンしかない時代に、よくやりました(瀧汗)。この曲の当ブログ登場はこれが最後ではありません…(しかも、火曜日ではないという)

こんな風にめちゃ楽しく実践例を並べられて、挙げ句の果てにお約束のライディーンまで持ち出された後、最後に実験的トラックが登場。恐らく本ブログで紹介する唯一の「カバーではない曲」だと思われるが、エフェクターに関する理解がないと何が何だかわからないトラックである(汗)。「君は天然色」に顔を出した謎の音の正体は、「電源スイッチをon/offする音」であることが、このトラックを聴いてわかる仕組みになっているのだ。さすが、この辺は編曲/演奏者のセンスの賜物としか言えない…敢えて、この方がその後のJ-pop界に果たした音楽的功績に対してここで触れるのは避けることにしておきますが…というかこのアルバムが黒歴史なんでしょうね(瀧汗)。

歌謡フリー火曜日その16: 日本のメロディー

コロムビア KKS-20116~7

母と子のシャンペン・ミュージック からすの赤ちゃん

発売: 1973年5月

f:id:knowledgetheporcupine:20210726052533j:plain

ジャケット



A1 からすの赤ちゃん

A2 七つの子 🅱

A3 夕日

A4 やさしいお母さま

A5 めえめえ小山羊

A6 砂山 🅱

A7 かぜさんだって

B1 てるてる坊主

B2 さようなら

B3 あの子はたあれ

B4 しかられて 🅱

B5 金魚のひるね

B6 蝶々のお夢

B7 お花のホテル

C1 かわいいかくれんぼ

C2 通りゃんせ

C3 雨降りお月

C4 かなりや

C5 ゆりかごのうた

C6 夕やけこやけ 🅱

C7 月の砂漠 🅱

D1 赤い靴

D2 浜千鳥

D3 どんぐりころころ

D4 花嫁人形

D5 しゃぼん玉

D6 小さい秋みつけた

D7 山茶花

 

演奏: 安倍圭子 (マリンバ)/コロムビア・オーケストラ

編曲: 横山菁児

定価: 2,000円

 

怒涛の二枚組週間は火曜も続きます。月一恒例となった「日本のメロディー」シリーズ。今回も心揺さぶられる、まさに親子のためのラブサウンズ。学芸部門からのリリース、主にクラシック界を舞台にガチな演奏家として世界的活躍を見せる安倍圭子さんをフィーチャーということで、肩に力を入れて聴く覚悟を要しそうだけど、リラックスしたイージーリスニング作品のテイストも強く、お子様の楽器に対する関心を呼び起こすにも最適のアイテム。『日本の郷愁 ベスト・セレクション』でもモダンにアレンジされていた「七つの子」にまず耳が揺さぶられる。こちらも負けちゃいませんよ。ちっちゃな鉄琴でファンシーに奏でられる調べを、華麗なオーケストレーションが色付け。目の前に広がるのは一体どこの夕暮れ…「夕日」もフルートによる装飾が蝶々の舞のようで、2コーラス目のアドリブを盛り立てる。「てるてる坊主」「通りゃんせ」なんかは最早歌のない歌謡曲に同化した世界で、ここまでポップな解釈の後者は考えられない位だ。強靭なミュージシャンシップに裏打ちされた親しみやすさ、それを最大限に活かしたアレンジで理想的な響きのアルバム。奇をてらった方向に引っ張るより、こんな解釈の方がずっといいし、もっともっと作られて然るべきと思う。ところで、ファンカデリックの ”A Joyful Process” ってもろ「しゃぼん玉」ですよね、とここでの演奏を聴いてさらに思わされるんですけど…

今日は萩原健一さんの誕生日なので

ミノルフォン KC-5005~6

最新ヒット歌謡 BEST30

発売: 1975年11月

f:id:knowledgetheporcupine:20210725053336j:plain

ジャケット



A1 ふたりの旅路 (五木ひろし) 🅱

A2 時の過ぎゆくままに (沢田研二) 🅱

A3 白いくつ下は似合わない (アグネス・チャン) 🅱

A4 至上の愛 (西城秀樹) 🅱

A5 天使のくちびる (桜田淳子) 🅱

A6 みれん心 (細川たかし) 🅱

A7 あなたを待って三年三月 (森昌子) 🅱

A8 お前に惚れた (萩原健一) 🅱

B1 となりの町のお嬢さん (吉田拓郎) 🅱

B2 北へ帰ろう (徳久広司) 🅲

B3 裏切りの街角 (甲斐バンド)

B4 旅仕度 (小椋佳) 🅱

B5 漂泊浪漫 (海援隊)

B6 絵日記 (チェリッシュ) 🅱

B7 想い出まくら (小坂恭子) 🅱

C1 ロマンス (岩崎宏美) 🅲

C2 中の島ブルース (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱

C3 心のこり (細川たかし) 🅰→5/13

C4 夕立ちのあとで (野口五郎) 🅰→5/13

C5 人恋しくて (南沙織) 🅱→5/13

C6 はだしの冒険 (アグネス・チャン) 🅱→5/13

C7 ともしび (八代亜紀) 🅰→5/13

C8 さだめ川 (ちあきなおみ)

D1 貴方に尽くします (八代亜紀)

D2 シクラメンのかほり (布施明) 🅴→5/13

D3 やすらぎ (黒沢年男) 🅱

D4 巴里にひとり (沢田研二) 🅱→5/13

D5 いつか街で会ったなら (中村雅俊) 🅱→5/13

D6 千曲川 (五木ひろし) 🅱→5/13

D7 昭和枯れすゝき (さくらと一郎) 🅱→5/13

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ&ストリングス

編曲: 無記名

定価: 2,000円

 

萩原健一さん、つーよりショーケンショーケンと言わないと気分がすっきりしません。テンプ、PYG時代を別にすると、歌無歌謡界で取り上げられたのは「お前に惚れた」と「大阪で生まれた女」位ですが、やっぱ通俗的な部分と別のところに魅力があった人なわけで。というわけで今日は前者を収録した75年のヒット曲集を引っ張り出してみました。そして、なおも懲りずに4日連続で2枚組。語る曲が多いとさすがに疲れます…

ミノルフォンの歌無歌謡盤はジャケットの美学も語り甲斐があるけど、これは何とほぼ文字オンリーという異色ジャケ。といっても、やけくそ感がないし、夢があるレイアウト・配色になってると思う。あと、この辺りから帯のデザインも楽しくなってきてるし。帯無し盤を買ってしまうと「しまった~」と思っちゃうんだよね。

この盤は選曲的に6月30日紹介のクラウン盤『ささやかな欲望・ふたりの旅路』と似たり寄ったりで、実に20曲が重なっている。その分、両者のカラーを比較するのが楽しいけれど、両社とも保守的な方向に入ってると感じさせつつ、独自の面白さを出してるのが感じとれる。こちらの方が比較的に落ち着いて、かつ攻めてきてる印象。残念ながらアレンジャークレジットがないので、誰の仕業か読めないのだけど。「時の過ぎゆくままに」は「アンジー」のテイストが効いていてかなり攻めた音作りだ。歌い出しが「神田川」と化しているクラウン盤と全然印象が違う(爆)。肝心の「お前に惚れた」もこっちの方がロック色が強い。フルートの優しい音も何故か違和感ないし。思えば2年後からミノルフォン所属になりましたからね、ショーケンは。「あなたを待って三年三月」は2コーラス目にリコーダーが登場し、それだけでこちらの圧勝(汗)。クラウン盤はダメダメさが目立った「ロマンス」もこちらはなかなかノリ重視した演奏。2枚目は3ヶ月前にリリースの前作から引き続く収録曲が多いが、やはりエフェクター多用ギターが目立ちまくり。1枚目ではあまり使われてないんだな。

クラウン盤と重なっていない曲の中でも、注目すべきは「裏切りの街角」。大ヒットした割に、歌無歌謡(フォークさえ)盤で取り上げられるのは稀で、「HERO」以前の甲斐バンドの曲全体に対しても言えることである。主旋律がヴァイオリンという意表をついたアレンジで、うっすら漂うヴィレッジ・グリーン感が堪能できるが(爆)、意外とリズムセクションもがんばってる。「漂泊浪漫」もレアだが(「贈る言葉」以前の海援隊の曲全体に対しても…つーか「母に捧げるバラード」の歌無盤ってあるのか?)、こっちは特に語るべきところないな。「となりの町のお嬢さん」はしっかりレゲエ色を出してるけど、やはり『フォーク・ムード2』版に軍配が上がる。

ちなみにこの盤はうちにある歌無歌謡盤でほぼ唯一、ジャケ・盤共々新品と全く変わらない状態で手許に巡ってきたアルバムです。45年間もどこに隠れてたのだ?

今日は古賀政男大先生を偲んで

JACK JW-1017~8

昭和大演歌30選

発売: 1979年?

f:id:knowledgetheporcupine:20210724061405j:plain

ジャケット



A1 影を慕いて (藤山一郎)

A2 人生劇場 (村田英雄)

A3 おもいで酒 (小林幸子) 🅰→6/11

A4 女の意地 (西田佐知子) 🅳

A5 夜霧よ今夜も有難う (石原裕次郎) 🅰→4/28

A6 ついて来るかい (小林旭)

A7 千曲川 (五木ひろし) 🅰→4/28

B1 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅲→4/28

B2 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅵

B3 なみだ恋 (八代亜紀) 🅱→4/28

B4 別れの夜明け (石原裕次郎八代亜紀)

B5 心のこり (細川たかし) 🅳

B6 うそ (中条きよし) 🅱

B7 純子 (小林旭)

B8 北国の春 (千昌夫) 🅲→6/11

C1 くちなしの花 (渡哲也) 🅲→4/28

C2 唐獅子牡丹 (高倉健) 🅰→4/28

C3 よこはま・たそがれ (五木ひろし) 🅵

C4 日暮れ坂 (渡哲也)

C5 北の宿から (都はるみ) 🅰→4/28

C6 津軽海峡冬景色 (石川さゆり) 🅲

C7 ひとり (渡哲也) 🅱

C8 すきま風 (杉良太郎) 🅱

D1 与作 (北島三郎) 🅲

D2 花街の母 (金田たつえ) 🅲→6/11

D3 みちづれ (牧村三枝子) 🅰→6/11

D4 舟唄 (八代亜紀) 🅰→6/11

D5 夢追い酒 (渥美二郎) 🅲→6/11

D6 惜春 (五木ひろし) 🅱

D7 港夜景 (細川たかし) 🅱

 

演奏: レッド・ポップス・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 2,200円

 

考えてみれば、2枚組を3日連続で取り上げるのは初めて。コスパ的に便利ではあるけれど、曲数が多いと全体を把握するのが疲れるのだ…ましてや「昭和大演歌」となれば余計。その業績を正当に讃えると変な方向に波風が立ちそうな古賀政男先生を、普通の歌無し歌謡レコードで偲ぶとなるととても無理だし、そんな時こそこんなレコードの出番なのだ。79年当時までの演歌の軌跡をバランスよく辿る、なんて内容ではないけど、冒頭2曲の収録に免じて許してやって。

「影を慕いて」と言えば、このブログの趣旨からかなり離れているため候補盤から外れてもらった、とあるセミプロバンドの自主制作盤に収められているこの曲の解説を、こっそり引用せずにいられない。

「青春の苦悩をこの曲に寄せた古賀政男、25才の作品。戦前、戦後を通じ、これ程若者を共鳴させた曲はまずないであろう。」(恐らくバンドリーダー執筆)

そのレコードが出たのは恐らくその初出の36年ほど後のことと思われるが、その当時でさえこれである。若さを象徴する音楽という意識は、どう移り変わってきたのだろうか?来年で誕生90周年だ、この曲。クラビオリンと並び、古き良き演歌を象徴する音色となったと思しきコルネット・ヴァイオリンが先導しつつ、モノトーンなオルガンも加わってモダンな音構築が行われているこの盤のテイクは、恐らくこれのための新録音だろう。個人的には「夕陽が泣いている」のイントロに続けて歌いがちになってしまう(汗)「人生劇場」も、大正琴と尺八をフィーチャーしながら、オルガンの音が近代のカラーを醸し出す。それ以前にステレオの定位が、最早レトロでもなんでもない。

冒頭2曲の後、いきなり「おもいで酒」へと大胆にタイムワープするが、ここでこの盤の供給元がJackである事実を思い知る。当然、6月11日紹介の『最新ヒット歌謡』に入っていた、「2番の頭でベースが思いっきり間違えるヴァージョン」を流用しているのだ。他にも4曲、78~79年のヒット曲が同アルバムから抜粋されているが、さらに7曲は4月28日紹介の『昭和演歌』と同じヴァージョン。そちらの発売元がエルムということを考えると、この辺の曲の原盤権って一体どうなってるんだろうかと不思議な気分にさせるのだ。今日初紹介のテイクも同じように怪しいのが多くて、「女の意地」は淡々としたオーケストレーションが実にフィルム・ノアール的光景を映し出す。『昭和演歌』と同テイクの「唐獅子牡丹」と同じプロジェクトから引っ張って来られたのは確実で、一体誰のアレンジなのだろうか。「君は心の妻だから」は、キーボードの音色から判断して新しめの録音と思われるが、1コーラス目の演奏のタイミングが完全にずれている。正にJackマニアを狂喜させそうだが、よくOK出たよな。左側のアコギの演奏も所々危なっかしいし。「別れの夜明け」からの3曲で聴けるのは確実に好夫ギターだが、いつ頃の録音なのか読めない。「純子」は珍しくウクレレ使用。よこはま・たそがれも確実に好夫ギターだが、キレのいいピアノの演奏が印象に残る。71年当時のテープメーカー用の録音かもしれない。「日暮れ坂」はまるで正統派エレキコンボのような演奏に、カラオケ仕様のキーボードの薄い音を加えた仕上がりで異色。フォークっぽい歌を乗せれば、海外のマニアがアシッド・フォークの自主制作盤音源と思い込んで狂喜するかも(爆)。「すきま風」のイントロのフルートがあまりにもいい音で、もったいない感も。「与作」はあの調子の演奏だが、両チャンネルに配されたギターが何故か「ホテル・カリフォルニア」色を現出させるシュールな響き。何やかんや言っても、Jackですから、利点を探すのが楽しいのですよ。やはり、ここにもいてくれてよかったです、「夢追い酒」のコーラスのねえちゃん達。改めて聴くと、3番の「捨てた~」でうち一人がやけになってるのがはっきり聞き取れる(爆)。ジャケットも風情でいいですね。

今日は河合奈保子さんの誕生日なので

東芝 TP-72374~5 

今宵踊らん ベスト・ヒット’82~’83

発売: 1982年

f:id:knowledgetheporcupine:20210723045304j:plain

ジャケット



A1 セーラー服と機関銃 (薬師丸ひろ子)

A2 ラ・セゾン (アン・ルイス)

A3 6番目のユ・ウ・ウ・ツ (沢田研二)

A4 北酒場 (細川たかし)

A5 夢の旅人 (松山千春)

A6 哀愁のカサブランカ (郷ひろみ)

A7 悪女 (中島みゆき)

B1 ハロー・グッバイ (柏原芳恵)

B2 ウエディング・ベル (シュガー)

B3 匂艶 The Night Club (サザンオールスターズ)

B4 NINJIN娘 (田原俊彦)

B5 ハイティーン・ブギ (近藤真彦)

B6 100%…SOかもね (シブがき隊) 

B7 なめんなよ (又吉&なめんなよ)

C1 ダンスはうまく踊れない (高樹澪)

C2 心の色 (中村雅俊)

C3 聖母たちのララバイ (岩崎宏美)

C4 涙をふいて (三好鉄生)

C5 契り (五木ひろし)

C6 暗闇をぶっとばせ (嶋大輔)

C7 けんかをやめて (河合奈保子)

D1 待つわ (あみん) 

D2 小麦色のマーメイド (松田聖子)

D3 ビギン・ザ・ビギン (フリオ・イグレシアス)

D4 シティ・イン・シティ (マッドネス)

D5 アイ・オブ・ザ・タイガー (サバイバー)

D6 完全無欠のロックンローラー (アラジン)

D7 い・け・な・いルージュマジック (忌野清志郎&坂本龍一)

 

演奏: 奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ

編曲: 高野志津男、山本有信、五十嵐謙二

定価: 4,600円

 

遂に登場、由緒ある舞踊音楽の殿堂シリーズ『今宵踊らん』。60年代前半にスタートし、67年以降は歌無歌謡の方法論を取り込んで確実にダンス・ファンの心を鷲掴み。何せ、ダンス・フロアにいること自体が「若き嗜み」だった時代だ。いくらロカビリーだ、ゴーゴーだと騒ごうが、紳士淑女が集まる空間に流れていたのは軽快なラテン・リズム。特定のステップに囚われず、音楽に身を委ねながらコミュニケーションに興じ、時に恋のきっかけを掴むなど。ハイソで無邪気な時代だった。

それから10余年、ディスコだフィーバーだ色々あろうが、社交ダンスで若さを保ちたい人々の精神性は決して歳を取ることなく、このシリーズも時代の流行うたのエッセンスを取り入れながら、しぶとく受け入れられ続けた。そして迎えた1982年。1年を飾った大ヒットナンバーを集大成し、あの色に染め上げてのアルバムが恒例の登場。たとえ歌無歌謡スピリットは息絶えようが、このシリーズはそんなのお構い無しに突っ走る。これのどこが若さなんじゃいと突っぱねようにも、自然に体が動いてしまい、パートナーを探しに街に繰り出したくなってしまう。罪なやつである。

なにせのっけからセーラー服と機関銃という強力アイテムである。曲のアレンジがどうとか、そんな考えモードなんてどうでも良くさせる、さあ踊りましょうという強烈なメッセージだけが発信されており、気がつけば「カ・イ・カン」である(爆)。耽美な「ラ・セゾン」も、病的な「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」も、ひたすら「さあ踊りましょう」である。決して「踊ろうぜ!」じゃないのだ。後者のエンディングなど、笑って「ご苦労様でした」と言うしかない。北酒場(当然細川たかしの方です、念のため)にそんなに違和感ないのは、対象の年齢層が読めてるからだろうか。こればかりは70年代歌無歌謡を聴く時とそんなに変わらない心構えで接せる。「哀愁のカサブランカも元がオールドファッションな洋楽なので、スムーズにチーク向きのヴァージョンに生まれ変わっている。けど「悪女」には、ニヤニヤするしかない。B面後半もそんなまさか曲のオンパレードだけど、「NINJIN娘」(当時トシちゃんファンの間では炎上騒ぎめいたことになってたとか)は元からチャールストンだけに違和感ないし、本ブログに於ける山下達郎初登場ハイティーン・ブギもジェット団感が出ていて悪くない。1枚目の締めは選曲そのものに笑うしかない「なめんなよ」。猫が出した唯一のヒット・レコードである(笑)。

対して「ダンスはうまく踊れない」で2枚目を始めるのは嫌がらせか(笑)。大凡チーク向きではない「涙をふいて」「契り」でなんか荒れそうなムードを「けんかをやめて」が緩和するし、「待つわ」なんて踊りながら歌ったりしたら嫌味でしかない(爆)。とてもムカデ・ダンスなんてできそうにない「シティ・イン・シティ」とか、意外とテンポ感だけオリジナルに似せている「アイ・オブ・ザ・タイガー」など洋楽曲を経て、最後に大爆弾「い・け・な・いルージュマジック」。おもちゃの偽札を巻き散らしつつ、陽気に踊りまくりたいものです。

音楽的に分析するとネタ作でしかないけど、とにかく心を揺らすにはもってこい、老若男女問わず受け入れられるべきアイテム(さすがに2つ目に対してはキツいかな)。ちなみに翌年出た盤には探偵物語」「Tシャツに口紅」「冬のリヴィエラが揃い踏みしています。無闇に価値を高めないでね…

今日は朝丘雪路さんの誕生日なので

テイチク ST-301~2 

歌謡ポップス・リクエス

発売: 1972年

f:id:knowledgetheporcupine:20210722053637j:plain

ジャケット



A1 太陽がくれた季節 (青い三角定規)Ⓐ 🅳 

A2 悲しみの日曜日 (野口五郎)Ⓑ

A3 恋の追跡 (欧陽菲菲)Ⓓ 🅴 

A4 許されない愛 (沢田研二)Ⓓ 🅲 

A5 ふたりは若かった (尾崎紀世彦)Ⓓ 🅵  

A6 今日からひとり (渚ゆう子)Ⓓ 🅴 

A7 回転木馬 (牧葉ユミ)Ⓐ

B1 結婚しようよ (吉田拓郎)Ⓔ 🅳 

B2 北国行きで (朱里エイコ)Ⓒ 🅱 

B3 ハチのムサシは死んだのさ (平田隆夫とセルスターズ)Ⓔ 🅲

B4 ふりむかないで (ハニー・ナイツ)Ⓒ

B5 恋の町札幌 (石原裕次郎)Ⓕ

B6 だから私は北国へ (チェリッシュ)Ⓔ

B7 新しい冒険 (フォーリーブス)Ⓔ 🅱

B8 緑の季節 (山口いづみ)Ⓓ 🅱 

C1 波止場町 (森進一)Ⓒ 🅴 

C2 この愛に生きて (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓔ

C3 お別れしましょう (朝丘雪路) 🅲

C4 別離の讃美歌 (奥村チヨ)Ⓑ 🅳 

C5 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子)Ⓑ 🅷 

C6 哀しみをこえて (沖雅也)Ⓑ

C7 恋祭り (森本英世)Ⓐ

D1 ひとりじゃないの (天地真理)Ⓑ 🅷

D2 純潔 (南沙織)Ⓒ 🅶 

D3 黄色いシャツ (浜村美智子)Ⓖ

D4 旅立つ船 (グラスロード)Ⓖ

D5 朝の恋人 (本郷直樹)Ⓖ

D6 夜が明けて (坂本スミ子)Ⓗ

D7 誰も知らない (伊東ゆかり)Ⓗ 🅳 

D8 夜明けの夢 (和田アキ子)Ⓗ 🅱 

 

演奏: 山内喜美子とオーケストラ・プラッツⒶⒷⒸ

松浦ヤスノブとテイチク・オーケストラⒹⒺⒻ

バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ

小泉幸雄とクインテット

編曲: 柳ヶ瀬太郎Ⓐ、竹田喬Ⓑ、山路進一Ⓒ、北野ひろしⒹ、山倉たかしⒺ、松浦ヤスノブⒻ、バッキー白片Ⓖ、小泉幸雄Ⓗ

定価: 2,400円

 

テイチク名物、インストシリーズから美味しいとこどりをしての2枚組なのだが、針を落とした途端最大級の衝撃に襲われる…なんなんだこの太陽がくれた季節は。いきなりの「サイコ」としか表現しようのない謎のサウンド、左右から畳み掛ける琴の調べ。淡々としたパーカッシヴなバッキングがアシッド感を助長し、2コーラス目に入ると琴による意表を突きまくりのアドリブ、煽りまくるサックスとパーカッション。太陽さえ目が眩むサイケデリック感に、思わず琴インストへの情熱が覚醒。山内喜美子さん凄すぎる!アレンジを手掛けた柳ヶ瀬太郎氏は、ローヤルの末期に活躍しまくったが、一気に要注意人物の仲間入りを果たした。

この調子で山内さんをフィーチャーした(彼女の仕事にしては異端度高すぎではあるが)曲が、実に13曲収録されているからたまらない。これらは全て、7月にリリースされた『琴&京琴ニューヒット歌謡14 ひとりじゃないの』(SL-1383)が初出。14ということは1曲だけ、ここに流用されていない曲があるわけで、こともあろうにそれが「恋の追跡」なのだ(ここでは無難な松浦ヤスノブヴァージョンで収録されている。ファズがかっこいい演奏ではあるのだが…)。一番面白そうなのにねぇ。「別離の讃美歌」のようなしっとり感から、「哀しみをこえて」のようなポップな曲まで、縦横無尽に指を舞わせ(後者はオリジナル歌手のその後を思うと、「涅槃感」という言葉しか出てこなくなるのだが)、果ては「ひとりじゃないの」でアイドルになりきってみたり…唯一、前月にビクターから出た『惚れた/琴のささやき』と同じ選曲「波止場町」があるが、こちらの方が冒険色が薄いアレンジで(2コーラス目は『惚れた』版が篠笛、こちらはハーモニカで演奏されている)、聴き比べるのも面白い。そんな山内さんの演奏に目が眩みすぎて、例えば「結婚しようよ」のような曲の淡白さに物足りなさしか感じないのだが、アレンジャークレジットに目を疑った…山倉たかし、ですか…時代は変わったのだ、としか言いようがない。「緑の季節」はクラウンの山下洋治盤のようながっかり感のない、爽快な演奏なのが救い。

和の嵐が過ぎ去った後はバッキー白片御大が清涼感あふれる空気を送り込む。韓国メロディーに意外にハワイアンサウンドが馴染む「黄色いシャツ」、これって「ザ・モンキーズ」のある回の冒頭で披露されていたピーターの自作曲が元ネタなのではと思わせる「朝の恋人」など、ガチハワイアン色が濃い故に、もっと聴いていたい気がするが。『ニューヒット歌謡14』(SL-1381)に頼るしかないか。あとはチージーなオルガンをフィーチャーしたものが3曲。大胆なサウンド構築で歌無歌謡界を震わせたテイチクも、翌73年には深い沈黙に入ってしまう。勿体無い。