黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

惜春

東芝 TP-40059

インストゥルメンタル シンガー・ソング・ライターの世界

発売: 1977年

ジャケット

A1 君といつまでも (加山雄三) 🅸

A2 青春時代 (森田公一とトップギャラン) 🅸

A3 私は泣いています (りりィ) 🅻

A4 襟裳岬 (森進一) 🆄

A5 シクラメンのかほり (布施明) 🅽

A6 「いちご白書」をもう一度 (バンバン) 🅸

A7 氷の世界 (井上陽水) 🅱

A8 メランコリー (梓みちよ) 🅴

A9 ルージュの伝言 (荒井由実) 🅱

A10 どうぞこのまま (丸山圭子) 🅶

B1 心もよう (井上陽水) 🅼

B2 お嫁においで (加山雄三) 🅵

B3 あの日にかえりたい (荒井由実) 🅷

B4 神田川 (かぐや姫) 🅾

B5 想い出まくら (小坂恭子) 🅹

B6 あばよ (研ナオコ) 🅶

B7 無縁坂 (グレープ) 🅲

B8 旅の宿 (吉田拓郎) 🆃

B9 精霊流し (グレープ) 🅻

B10 旅人よ (加山雄三) 🅳

 

演奏: ファンタスティック ・ハーモニー・オーケストラ

編曲: 斎藤恒夫

定価: 1,500円

 

というわけで、今年もハッタリかまして1ヶ月限定復活月間をお送りしました「黄昏みゅうぢっく」。既に次回復活に向けて新しいネタも入り始めていますが、決して焦らず。自分の人生だっていつ何が襲ってくるかわかりませんからね。そして、お気付きになった方もおられると思いますが、今月のエントリのタイトルは「歌謡フリー火曜日」を除き、全て既存の楽曲のタイトル、しかも漢字のみのものを採用させていただきました。厳密に言えば12日と16日のみ、ちょっとアレンジさせていただきましたが(元は洋楽です)。この26曲のアーティスト名を全て答えていただいた方には、何かいいもの差し上げます…と言いたいところですが、今じゃWEBで簡単に調べられちゃいますからね。

 

つい最近もシンガーソングライターという定義に関して、楽器を弾き語りしてない人をそう呼ぶのに抵抗があるとかいう意見がSNSで物議を醸しましたね。てっきり生腕ゆさゆさ偵察系SSWおじさんが主張してるのかと思いきや、由緒あるハコの経営者が言っていてびっくりしたものですが、そんな定義って曖昧でいいと思うんですよね。というわけで、今回復活期間最後を飾るのは、正にその語が使われ始めた頃と思われる時期に、開拓者の一つ東芝EMIが放ったニューミュージックインスト集。何やかんや言っても、こういった盤に対する需要ってまだあったんですよね。時はレコード誕生100周年ということで、この種の企画が各社から次々と放たれていたのでした。ましてや、いよいよニューミュージック花盛り時代への突入。自分もいろんな方向に目配せしながらも、結構深入りして聴いてたものです。何せ谷山浩子さんをアイドル以上にアイドル視してましたので(瀧汗)。そんな時流をうまく捉えた企画で、その道のパイオニアたる加山雄三を抱える意地で収録曲の中軸に設定。勿論ユーミンも欠かさず注入し、その頃までのニューミュージック・スタンダードを目一杯押さえた内容。ほぼ全曲をフルコーラス演奏しているため、両サイドとも限界突破状態。それでいて音質スタンダードを保てているのだから、当時のレコードカッティング技術に敬服するしかありません。ただ、アレンジ的にはどの曲も手堅く、ここでこう来るかというスリルが期待できません。「襟裳岬」も森進一盤に忠実なアレンジなので、この流れの中では浮いてるかも。寄せ集めを避け、全曲を同じ色で統一したところには好感が持てるけど、やはり国文社の『フォーク・ムード』で聴けたような意表の突き方がないと安心できない。初々しさと色気が両方あるよな「氷の世界」のフルートにちょっとのけぞった位。「琴と三味線」で大フィーチャーされていた女声のようなシンセが「ルージュの伝言」に入っていて、こちらも妙な色彩を編み出している。

 

さて最後に…歌無歌謡と直接関係ない内容のためここで言及するのは控えさせていただきますが、宗内世津より大切なお知らせがございます。7月5日に母体が開催するイベントの告知も兼ねておりますので、本日更新されたこちらのnoteの方を是非チェックして下さい。勿論、こちら黄昏みゅうぢっくは今後も何かの拍子に復活する可能性が大きいので、今後もどうかお楽しみに。それでは、また逢う日まで…

邂逅

コロムビア HS-10028

ニュー・ヒット14/京琴

発売: 1971年4月

ジャケット

A1 この愛を永遠に (由紀さおり) 🅳

A2 知床旅情 (加藤登紀子) 🆁

A3 さいはての女 (藤圭子) 🅵

A4 何かいいことありそうな (ピンキーとキラーズ) 🅱

A5 望郷 (森進一) 🅼

A6 信頼 (伊東ゆかり)

A7 薔薇の革命 (弘田三枝子) 🅱

B1 地球は回るよ (トワ・エ・モワ) 🅴

B2 花嫁 (はしだのりひことクライマックス) 🆁

B3 止めないで (いしだあゆみ) 🅶

B4 すべてを愛して (内山田洋とクール・ファイブ) 🅸

B5 京都慕情 (渚ゆう子) 🅺

B6 抱擁 (ヒデとロザンナ) 🅵

B7 今、今、今 (ザ・シャデラックス)

 

演奏: 山内喜美子と’71ヒット・サウンド

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

今回もありますよ、山内喜美子お姉様のレコード!めちゃ長い間欲しかった1枚でしたが、前回復活前の猶予期間に滑り込み。主に「地球は回るよ」が収録されているという理由でそそったのですが、正に京琴の音のファッショナブルさに焦点を当てたという趣きの1枚で狙ってた通り。アレンジャークレジットがないのが残念ですけど、完全に「ナウい」音の提供を念頭に置いたと推定されるタッチが伝わってきます。とにかくトップの「この愛を永遠に」が強力。ここ最近になって急激にヴァージョンが増加したこの曲ですが、ソフト&メロウ度に於いてはこれが最高かもしれません。とろけるようなサウンドをより助長するこの京琴の響き!サイケ時代のスムーズジャズのアルバムに入っているシタールなんかより、遥かに嫌味なく溶け込んでるし、さりげなく奏でる分散和音が余計セクシーな感触を持ち込んでいて、フルートも思わず飛翔してしまう。これは朝の松屋でかかってても違和感ありませんよ!これに続くと次の曲のイントロもついついスピリチュアルに聞こえてしまいますがこれが「知床旅情」。テイチクの「+琴」のアルバムで唯一フィーチャーし損ねてた曲ですが、その借りを返すような美しい演奏。バックのサウンドのさりげなさもいいですね。売れっ子歌手のスリーパー気味の曲をライトタッチでぶっ放すA面がいい気分を維持して、B面に移ると問題の「地球は回るよ」ですがこれは可哀想。何せ弦の数が限られているから、この激しい転調だらけの曲を一気に弾き切るのはほぼ不可能で、ブラスに主旋律を任せた部分が多いけど、萎縮気味に装飾音を奏でながらも、何とかピースフルなムードが演出されている。これが余程悔しかったのか、次のコロムビア盤やテイチクの「ニューヒット14」で多重録音を駆使しまくる方向に出たのかもしれません。「花嫁」は控え目なバッキングに乗せて乙女心が炸裂。あのユニオンの過激なヴァージョンと絡んだら、完全に潰れちゃいそうですよね(ごめん)。一体何ヴァージョン目の挑戦かと勘ぐらせる「京都慕情」は演奏全体のノリがよく、25日取り上げたエキスプレス盤はやはり山内さんの演奏ではないと確信させてくれます。最後にまたかっこいい曲を持ってきて幕を閉じる最強のアルバム。ラスト近く、演奏全体のバランスが崩れながらもタムの激しい音と競り合うプレイが正にカルミックドリームです。後はジミー竹内とバトルしたアルバムを探したいところ(あればですけど…あるはず…)

歌謡フリー火曜日その62: 真子、もう年頃ですから

エキスプレス ETP-7536

恋愛専科 LOVE IS BEAUTIFUL

発売: 1971年6月

ジャケット

A1 ある愛の詩 🅸

A2 あの愛をふたたび

A3 愛の泉

A4 愛情物語

A5 ロシアより愛をこめて

A6 愛のレッスン 🅲

A7 愛の讃歌 🅱

B1 夏の日の恋 🅱

B2 恋は水色 🅴

B3 ブーべの恋人 🅱

B4 禁じられた恋の島

B5 白い恋人たち 🅸

B6 恋はフェニックス

B7 恋よさようなら 🅲

 

演奏: ジャック・ケラー・オーケストラ

編曲: ポール・レモン

定価: 1,500円

 

フニルの彗星上田真子を迎え、時空を超えてお送りする「歌謡フリー火曜日」も一応今回が最後。1986年7月13日、19歳の誕生日に4枚目のアルバム「あれから何処かで」をリリースしたばかりの彼女が、新しい人生側面にどう向き合っているか。それを誘き出すために突き出したアルバムがこれです。

上田真子フォースアルバム「あれから何処かで」

お待たせしました、上田真子です。晴れて女子大生になりました。映画制作のあれこれを学ぶべく、色々と知識を叩き込みながら、実家から離れて一人暮らしがんばっています。新しい家にレコード会社のお偉いさんがレコーディング用の設備を入れて下さって、音楽制作の方もはりきってこなしています。出たばっかりの4枚目のアルバム『あれから何処かで』の半数の曲は、私一人でそこから出ずに作り上げたんですよ。最新テクノロジーも慣れちゃうとこちらのものです。これは映像作りに関しても役に立ちそうですね。でも今回は、自分のビデオクリップを作ることを敢えて避けました。ジャーニーだって、最新アルバムのビデオクリップの制作を拒否したっていうじゃないですか。まだ見てないけど、プリンスの新しい映画は失敗作、って言われてるそうだし。勉強に集中してるってイメージを持って欲しいんですよ。

学業と音楽で精一杯で、恋愛なんてそんなことにかまけてはいられません!でも、もう19歳だし、そろそろ意識したい年頃なのよね。フニルの先輩方って、みんな22とか23で結婚してるし。恋愛によって磨かれる表現者感覚って、絶対あると思うんですよ。でも、今私の周りにいる男の子って、みんなストイックだし、それが芸術家気質みたいなもんなのでしょうかね。だから私、想像できないようなシチュエーションのラブソングばっかり作ってるし、今度のアルバムにも入れましたからね。そんなわけで、今回もムード音楽のレコードが回ってきました。今はもう、打ち込みとかサンプリングとかでかっちり作ってるレコードが主流になってますけど、こんな流暢なストリングスの調べを聴くと心洗われるんですよ。セカンドアルバムの時、ちょっと大掛かりなアレンジを考えて譜面を書いて、オーケストラの人に堂々と渡したら、「こんな書き方じゃだめ」ってはっきり言われちゃって、その後は先輩に任せるようにしてるんですけど、そんな思い出までが甦ってきます。ほとんどの曲が恋愛映画で使われた曲らしいんですけど、そんなのも観て勉強しなきゃいけなさそうですね。

ところで、この「黄昏みゅうぢっく」って、「歌のない歌謡曲」を中心に扱う読み物って聞いたんですけど、1枚くらい歌謡曲のレコードを回して欲しかったな。こう見えて、私初めて好きになった歌手が藤圭子さんなんです。未だに「新宿の女」なんて空で歌えますよ。流行った時、2歳だったのにね。意味もわからず歌ってたんでしょうね。いつもラジオでかかってたから。彼女の歌もスリー・ドッグ・ナイトの歌も、同じように血肉になって今の私の中にあります。娘の光ちゃんももう3歳になられたんですよね。きっと大きくなったら、私なんかよりずっとすごいスターになるんでしょうね…じゃ、4年間相手をしていただきどうもありがとうございました! (上田真子・1986年)

 

こちらこそ、歌謡曲のレコードを与えられなくてごめんなさい…というわけで、謎めいたクレジット(当然「恋の片道切符」などの作者とは関係ないと思われる…)にはらはらさせられる愛のサウンドに満ちたアルバム。付属物が全く欠けた状態で手中に巡ってきたのだけど、これもまた吉野金次氏絡みの案件か、と思ったりします。保守的な響きながらなかなかシャープなアプローチも見せてくるし、「ロシアより愛をこめて」のスリリングな展開とか、妙に60年代ロック色が出ている「恋はみずいろ」とかがいいアクセント。ベースが暴れていたり、コーラス・アレンジが鋭かったり、これもまたエキスプレス・レーベルならではの意地が出た作品かもしれません。「愛情物語」の男女ソロボーカルの絡みとか、あまり他で聴けない展開も。しかし「愛の泉」の冒頭、思わず大和京子「予感」に空耳した…

さて、「歌謡フリー火曜日」の復活はあるのでしょうか今後。洋楽パチボーカルものの妙ネタも集まってきてるので、その辺も探究したいところですが。

疑問

クラウン GW-8075~6

誰かさんと誰かさん ドラム・ドラム・ドラム

発売: 1970年12月

ジャケット

A1 誰かさんと誰かさん (ザ・ドリフターズ) 🅰→21/6/14

A2 走れコウタロー (ソルティー・シュガー) 🅳

A3 ふたりの関係 (ヒデとロザンナ) 🅵

A4 中途半端はやめて (奥村チヨ) 🅱→24/4/18

A5 京都の恋 (渚ゆう子) 🅱→21/6/14

A6 別れたあとで (ちあきなおみ) 🅱→21/6/14

A7 情熱 (西郷輝彦) 🅰→21/6/23

A8 男の世界 (ジェリー・ウォレス) 🅱

B1 手紙 (由紀さおり) 🅹

B2 チュクチュク (ジミー・オズモンド) 🅴

B3 生きがい (由紀さおり) 🅵→24/4/18

B4 素晴しい旅行 (ザ・タイガース) 🅱→21/9/27

B5 京都慕情 (渚ゆう子) 🅰→21/6/14

B6 くちづけからもう一度 (九重祐三子)

B7 ロダンの肖像 (弘田三枝子) 🅰→21/6/23

B8 悲しき鉄道員 (ショッキング・ブルー)

C1 追いつめられて (加山雄三)

C2 嘘でもいいから (奥村チヨ) 🅷

C3 ドリフのズンドコ節 (ザ・ドリフターズ) 🅱

C4 昨日のおんな (いしだあゆみ)☆☆ 🅽

C5 愛のきずな (安倍律子) 🅼

C6 私生活 (辺見マリ)☆ 🅰→21/6/23

C7 黄色いさくらんぼ (ゴールデン・ハーフ)

C8 ケ・セラ・セラ (ゴールデン・ハーフ)☆ 🅱

D1 経験 (辺見マリ) 🅲→21/9/27

D2 愛は傷つきやすく (ヒデとロザンナ) 🅻

D3 花喰う蟲のサンバ (森山加代子) 🅲

D4 X+Y=LOVE (ちあきなおみ)☆☆ 🅺

D5 男と女の数え唄 (日吉ミミ) 🅵

D6 ドリフのほんとにほんとにご苦労さん (ザ・ドリフターズ) 🅴

D7 シャンゼリゼの夜 (ピーター) 🅱

D8 ヴィーナス (ショッキング・ブルー) 🅲

 

演奏: ありたしんたろうとニュービート

編曲: 福山峯夫、前田憲男(☆)、小杉仁三(☆☆)

定価: 2,400円

 

「黄昏みゅうぢっく」をやってきた5年の間に、山内喜美子氏、稲垣次郎氏、大野良治氏、そして「ありたしんたろう」の中の人ということになっている猪俣猛氏の訃報を聞いたことは、正に運命のいたずら。本当は他にももっと、影のヒーローと呼びたい人たちがこっそりこの世からいなくなってるかもしれないし。当時を語れる人の数が少なくなる一方のこの世の中、この失われた文化を語り継ぐ使命を背負ってよかったと改めて感じている。

ところで最近、レコード人気が再燃の中、何を根拠にそんな売り方できるねんと呆れずにいられない買取/販売サイトを何度か目にすることがあって、使われている図版も明らかにAIを使用して生成した非現実的なものばかりで余計まともに捉えたくなくなるのだが、こともあろうにその一つで「猪俣猛のレコードの価値が上昇中」と謳っていたのである。サウンド・リミテッド名義のジャズロック色が濃いレコードならまだわかるけど、それに加えてこのありたしんたろうや、キングでの「はらだたけしとそのグループ」名義の盤をシリアスな変名プロジェクトと定義して、少しでも価値を吊り上げようとしていたのには驚いた。

まぁ、解ることは解りますよ。「新宿マドモアゼル」を収録したニュービートのファーストアルバムとかであれば。帯付き美品なら4桁後半行ってもおかしくない。まぁ、自分はジャケットと盤を別々に合計4桁以内で買えたんですけど(これは幸運とお店の不注意の賜物…汗)。末期ニュービートでは中の人が入れ替わってる可能性さえ否定できないのに。特定の人の仕事を必要以上に崇拝するのも考えものですよ。歌のない歌謡曲なんて、所詮は雰囲気作りの道具。ここで32連発される強烈なビートに身を埋めるだけでいい。それ以上の意味を求めて何になる。例えばメッセージ色の濃いラップのトラックにするために数小節抜くとか。好きな人が気づいてニヤリとすればそれでおしまい。確かに他のレコードで既に聴いたトラックもあるけど、これだけまとめて投下されると痺れるしかない。個々の曲がどうとか言えない、時代を彩ったビートの塊。この人の5枚組ボックスも是非お願いしますよクラウンさん。というか、スタンダードな歌無歌謡をまとめたコンピがいつの間にか出ててびっくりしましたけど、そのオルタナ版というか、川原パーカッション・ブラザーズや飯吉馨、クニ河内あたりまで含めて(このところの初期シンセ音楽再発見に乗じて、アルファ・スペースGまで…は無理か)新しい視点からのコンピを切望したいところ。何なら宗内がやりますよ。いつでも話を持ってきて下さいね。ついでに他社も刺激しちゃいますから。それにしてもこの2枚目、「追いつめられて」を1曲目に持ってくるのはどうしたことか…この曲の裏話、「歌謡狂騒曲」でめぐさんから聞いたけどなかなか壮絶だったようで。「ケ・セラ・セラ」は当然ポールアレンジのヴァージョンの方。ええ、そうです。ミセスの曲じゃないです(爆)。

木琴

フィリップス FS-8063

カレッジ・フォーク・ギター・ベスト14

発売: 1969年12月

ジャケット

A1 まごころ (森山良子) 🅽

A2 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🅰🅰

A3 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー) 🅻

A4 風 (はしだのりひことシューベルツ) 🆈

A5 昭和ブルース (ザ・ブルーベル・シンガーズ) 🅵

A6 フランシーヌの場合 (新谷のり子) 🅾

A7 鳩のいない村 (藤野ひろ子) 🅱

B1 禁じられた恋 (森山良子) 🆉

B2 真夜中のギター (千賀かほる) 🅴

B3 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅾

B4 悲しみは駆け足でやって来る (アン真理子) 🆁

B5 どうして声がとどかない (ジャングラーズ)

B6 白いブランコ (ビリー・バンバン) 🆅

B7 時には母のない子のように (カルメン・マキ) 🆆

 

演奏: ギターラ・ロマンチカ

編曲: 石川皓也

定価: 1,700円

 

3ヶ月前に同タイトルのアルバムを出したばかりのフィリップスが、ダメ押しのように送り出すフォーク・コレクション。今回は「あなたにも弾けます」を打ち出し、得意の「MMOステレオ」によるミックスで演り手の欲望に執拗に迫ってくる、まさにフォークおぼっちゃま系パイオニアの意地だ。前作とかぶっている曲も3曲あるが、全てヴァージョンを変え、カラーを統一してのアプローチ。見開きいっぱいに広がる譜面を前に、早速トライ開始。左のチャンネルには歌メロを奏でるギターが固定され、右のみで再生すると完璧に消えるカラオケ仕様に。右のチャンネルに固定されているのはサイドギターとドラムで、リズムキープの練習にもなるという親切仕様。両方のチャンネルには正にフォーク同好会ムードという感じのシンプルなオルガンとベースが入っている。時にベースが目立ちすぎる部分もあって、音楽として親切なのかどうか。あくまでもギター実践者向きという趣になっていて、歌の練習には適していない。まぁ、他の楽器を重ねてみるのもなかなか乙なものですけど。

で、遂に禁断の🆉を超えてしまいましたよ、「或る日突然」が。27ヴァージョン目に苦し紛れに🅰🅰を充てさせていただきましたが、当時のレコ社の数から想定すると、1社あたり2~3ヴァージョンは出していたという計算になり、当時の激戦ぶりが偲ばれます。それに追いつけ追い越せとばかりに「禁じられた恋」も当アルバムで26ヴァージョン目に到達。「風」「時には母のない子のように」「白いブランコ」あたりが着実に追い上げてきています。69年の曲ではない「瀬戸の花嫁」も。

アルバムの内容に話を戻すと、「白いサンゴ礁」でちょっと流れが変わり、相当走ったドラムにリードギターの演奏がちょっと萎縮気味。やはり基本フォークと言うよりR&Bなんですよね。リバイバル時のイメージが強い「昭和ブルース」も改めてフォークの流れに組み入れられると納得、と言うよりここではドラムがなかなか派手で別印象。オルガンが不気味な音で幻惑している。自社の稼ぎ曲「禁じれらた恋」は敢えて下世話さの鎖を外したようなアレンジをしつつ、シンプルなサウンドによりかえってそれが強調されているような印象。「どうして声がとどかない」はスリーパー気味の自社曲をプッシュするような選曲だが、思ってみればフィリップスのカレッジフォーク系がまとめて顧みられないのはちょっと悲しい。原盤権の問題とかもあるんでしょうね。やはり歌無しだと曲のメッセージ性が伝わりにくいですね、と言いつつ…

今年は発売された1969年以降、最も「フランシーヌの場合」が重く響いた3月30日を過ごしたような気がする。ここではその後に「鳩のいない村」が。こういった曲を警鐘として歌い繋いでいかないといけないのに。殺伐としていただけ、1969年の視野は今よりずっと寛大だった気がする。学生運動とかに明け暮れていても、キャンパスにはいつも希望の響きが溢れていた。全ての武器がギターに変わる日がまたきますように。

喪失

エキスプレス EP-7786

ホット・ヒット・ハイライト・ベスト・14

発売: 1971年1月

ほんとごめんなさい

A1 生きがい (由紀さおり) 🅶

A2 中途半端はやめて (奥村チヨ) 🅳

A3 あのとき僕たちは (永田英二)

A4 ふたりの関係 (ヒデとロザンナ) 🅴

A5 私生活 (辺見マリ) 🅾

A6 誰かさんと誰かさん (ザ・ドリフターズ) 🅱

A7 誰もいない海 (トワ・エ・モワ) 🅾

B1 京都慕情 (渚ゆう子) 🅹

B2 銀座の女 (森進一) 🅷

B3 別れたあとで (ちあきなおみ) 🅵

B4 何があなたをそうさせた (いしだあゆみ) 🅸

B5 愛のいたずら (内山田洋とクール・ファイブ) 🅴

B6 女は恋に生きてゆく (藤圭子) 🅵

B7 さすらい (伊東ゆかり) 🅳

 

演奏: ニュー・サウンズ・オーケストラ

編曲: 森岡賢一郎

定価: 1,800円

 

コンプラ云々気にしちゃやってられない歌無歌謡総括ブログですが、遂に行き着くとこまで行きついてしまいました…ほんとごめんなさい…と言っても、目を凝らさずに見ると何が起こってるかわからない絵ではありますけど。左上にちょっと墨塗れば済む問題じゃありませんし。たとえ帯が付いてようが…というかこれは見開きジャケットなので、折り目と反対側に帯を付ける仕様にでもしない限り、売る側のデリカシーを刺激してもしょうがない。いや、そんなのなかったんでしょうね1971年って時代には。5歳だったから何も言えませんけど(瀧汗)。ちなみに東芝音楽工業がこれ以上に思わせぶりなジャケットの英国のプログレバンド、フラッシュのレコードをリリースしたのはこの翌年のことで、先見性があったって言っていいのでしょうか(瀧汗)。

こんなジャケットではありますが、明らかに東芝レーベルの歌無歌謡黄金律と違う方向を狙った意気込みが出ちゃった結果なのかもしれません。音の方が別方向に気合入っているので。それがエキスプレス・レーベルの先鋭性、なのかも。アルバム全部森岡賢一郎氏に任せた歌無盤は珍しくはないけれど、音の仕上がり的にここまでがんばってみせてる例はないんではないでしょうか。歌無歌謡特有の野暮ったさが希薄というか、普通の歌謡曲レコードさえをも凌ぐ向上性がそこここに現れていて、聴き応え充分。選曲面では10日前に紹介した和楽器アルバムとかなり共通しているけれど、そこで聴ける冒険性とはまた違った、曲そのものの魅力を演奏の力でさらに高めんとする姿勢が現れているし、録音にも相当気を遣っている。オーディオ面でもレベルが違うんだぞ、ってところを静かにアピールしているようだ。マルチ録音の効果というよりは、録音機器の性能が向上したためだろうか。ただ、「京都慕情」はかなりレイジーな解釈になっていて、琴の演奏も山内さんのそれとカラーがちょっと違うような。手慣れた感じ以上に、フレッシュな感覚を出したかったのかも。

慟哭

東芝 TP-7152

テナー・サックス・ムード (第二集)

発売: 1967年

ジャケット

A1 夜空を仰いで (加山雄三) 🅲

A2 ヤングマン・ブルース (赤木二郎)

A3 夜が来るたび (三条達也)

A4 霧雨の舗道 (加山雄三) 🅱

A5 サヨナラのキスをしないで (愛京子)

A6 さいはての男 (井沢八郎)

B1 さすらい東京 (城卓矢) 

B2 旅人よ (加山雄三) 🅲

B3 アリベデルチ東京 (坂本スミ子) 

B4 なぐりとばして別れよか (城卓矢) 

B5 夜霧に死す (克美しげる)

B6 誘惑 (三条達也) 

 

演奏: 松浦ヤスノブとムードキングス

編曲: 大西修

定価: 1,500円

 

ビートルズ来日という激動の記念碑を社史に刻み込んだ東芝音楽工業の1966年後半を、歌無歌謡で総括するという実に有意義な企画…と言いたいですが、やはり一つのレコード会社限定で歌謡曲シーンを俯瞰してみれば、そこまでカラフルでもなかったのかも、って感想は避けられません。なんとかファンシーなジャケットでモダンさを打ち出してはみたけれど、まだまだ長閑だったんだなぁ時代は。ただ、変わらないのは松浦ヤスノブのムーディなプレイ。この流れで聴くとめちゃ洗練されたという印象で、そのままのカラーが激動する歌謡史の中でキープされたことによって、効果的に時代の流れを捉えられるという仕組み。

当然のように加山雄三作品が3曲選ばれてますが、これがトーンを決定づけてるのがよかった。他の曲の野暮ったい感じがかえって浮き彫りになっていて、距離感を少しでも縮めてくれる。びっくりしたのは『幻の名盤解放歌集』で初めて存在を知った「ヤングマン・ブルース」が2曲目に登場すること。解説によると大ヒットしたらしいですが…90年代以降の耳で聴いたら、この「ヤング」が如何にアナクロだったことか。あの1966年代でさえこれですから。ビートルズを聴いてた者なんて、舟木一夫ファンに比べたら遥かにマイノリティだったという意見も一気に信憑性を帯びてしまいそう。以下、夜の女のムーディな囁きも、裏街で荒くれるヤンキー先駆け群のくだ巻きも、同じまな板上で次々と料理。お得意のドラマティックな転調で曲を劇的に着色する。特に最後3曲の荒くれ性が圧巻。9年後に起こることを思うと「夜霧に死す」の歌詞はまともに読めないな…

翌年(というかこの盤が出たのはその年になってから)、ビートルズが『サージェント・ペパーズ』をリリースし、ビーチ・ボーイズの『SMiLE』を紹介できず、そして国内シーンにゴールデン・カップス、黛ジュン、フォークル、阿木譲を送り出すことになる東芝音工の新たなドラマの影は、まだこの音楽の中には見えてこない。ちなみに内袋に載せられている「特選レコード」のリストには、ビートルズは『ヘルプ!』のみ選出されている一方、ビーチ・ボーイズはいきなりライヴ盤とベスト盤の2枚を冒頭に送り込んでいます。そして『サムライ・ニッポン(琴と三味線による日本の歌謡曲)」の演奏者の中には「山内キミエ」さんのお名前が…