黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1971年、今日の1位は「また逢う日まで」

テイチク BL-1045 

ニュー・ヒット歌謡ベスト10 また逢う日まで

発売: 1971年7月

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ジャケット



A1 また逢う日まで (尾崎紀世彦)

A2 わたしの城下町 (小柳ルミ子)

A3 砂漠のような東京で (いしだあゆみ)

A4 三人家族 (あおい輝彦)

A5 恋仁義 (藤圭子)

B1 おふくろさん (森進一)

B2 棄てるものがあるうちはいい (北原ミレイ)

B3 愛のおもいで (安部律子)

B4 愛情物語 (ヒデとロザンナ)

B5 おんな町 (美川憲一)

 

演奏: 松浦ヤスノブ (テナー・サックス)/テイチク・ニューサウンズ・オーケストラ

編曲: 北野ひろし

定価: 1,000円

 

満を持して黄金時代1971年のヒット曲集が到来。テイチクの10曲収録、1000円というある意味では美味しいシリーズ「BEST & BEST」の1枚。ジャケットは共通デザインのものに高紙質スリックを貼り付けたのみという便利な作りの一方、曲数が少ないので片面の演奏時間が15分前後と、音質的心配は無用。難点と言えば、雰囲気作りとして非実用的なことくらいである。当時のシングル盤2.5枚分の価格でこの内容なら、気軽に買いでしょう。

さて、ギター界に木村好夫がいれば、テナー・サックス界にはこの人という位、各社に大量の録音を残している松浦ヤスノブ。最新ヒット曲をスピーディに届けるというシリーズの目的には、まさにうってつけのプレイヤーである。また逢う日までを除くと、主に71年5月発売の新曲をフィーチャーしており、程よいタイムリー感で市場に届けられたと言える。他の曲が発売に漕ぎ着けた頃、チャートのトップに君臨した「また逢う日まで」のノリの軽さには多少違和感もあるが、それはしょうがないかなと。ベースがかなりがんばりを見せているが。

オリジナルの笛に代わって妙なワウギターがイントロを奏でる「砂漠のような東京で」。この曲で笛フェチが目覚めたようなものなので(汗)、歌無しヴァージョンの解析にも熱が入るのはしょうがない。間奏のストリングスだけ聴くと、山倉たかし編曲かと思えてしまう。北原ミレイのデビュー曲「ざんげの値打ちもない」のヒットがあまりにも予期せぬパターンだったため、続く「棄てるものがあるうちはいい」が相対的に歌無し歌謡化される頻度が高まったというのは、いかにもなストーリーであるが、今ではこちらの曲ほとんど語られないですよね…どの曲も程よい咆哮でムーディーにまとまっている。

今日は西城秀樹さんを偲んで…

東宝 AX-2024 

最新歌謡ヒット ゴールデン・ギター・アルバムVol.5

発売: 1973年12月

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A1 恋の雪別れ (小柳ルミ子) 🅱

A2 愛の十字架 (西城秀樹) 🅱

A3 魅せられた夜 (沢田研二) 🅱

A4 一枚の楽譜 (ガロ) 🅱

A5 心もよう (井上陽水) 🅳

A6 夏色のおもいで (チューリップ)

A7 青春のバラード~ひと粒の涙~ (森田健作)

B1 ひとかけらの純情 (南沙織) 🅱

B2 白いギター (チェリッシュ) 🅱

B3 わかれの夜道 (三善英史)

B4 女ごころ (八代亜紀)

B5 裸足の女王 (夏木マリ)

B6 雨の軽井沢 (つなき&みどり)

B7 花物語 (桜田淳子) 🅱

 

演奏: 木村好夫、ジミー・スコット (ギター)/ミラクル・サウンズ・オーケストラ

編曲: 福井利雄

備考: RM方式4チャンネル・レコード

定価: 1,500円

 

誕生日が火曜日だったので、ヒデキを歌無歌謡で讃えることができなかった…その分、命日にしみじみ偲びたいと思います、というわけで決して派手になることなく聴かせるギターアルバム。そして、木村好夫御大の名がはっきり主役級クレジットされているアルバムが、やっと当ブログ初登場。過去、クレジットはないものの明らかに好夫ギターと解るプレイが聴けるアルバムが数作ありましたが。今作も、決して派手な登場ではなく、東宝の歌無歌謡に頻繁に登場するジミー・スコットなるプレイヤーと連名になっている。好夫オーラの出てない方のリードプレイがジミーと思っていいでしょう(爆)。

例によって4チャンネルの利点を生かしまくった凝ったミックスではあるものの、所々アラが出てしまってるのは東宝らしくない。守りに入っている好夫ギターがうまく噛み合っていない部分があったり(「魅せられた夜」ではチューニングが微妙に合ってなかったり)、石油ショックで迷いに入りそうなレコード業界の焦りを反映してるのだろうか? 聴き進めて行くうちに、孤高の輝きを放つ逸品が登場する。「心もよう」だ。

当時の音楽業界を震撼させた井上陽水の名曲に手堅く挑む好夫ギター。そのバックで蠢く音の数々に耳が奪われる。4チャンネルのあちらこちらに配置されたそれらの音が自己主張しつつ、完全なる混沌に満ちたエンディングへと導かれて行く。あまりにも謎に満ちたこのサウンドが表現するのは一体なんなんだ?まさに本盤最大の聴きもの。好夫ギターの真髄が炸裂した曲という点では、「白いギター」にとどめをさす。ミラクルサウンズ名物の鍵ハモも数曲で健在だし、当時のムードを手っ取り早く楽しめるアルバムだ。

今日は美川憲一さんの誕生日なので

クラウン GW-5047

釧路の夜 魅惑のスチール・ギター・ムード

発売: 1968年10月

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ジャケット



A1 釧路の夜 (美川憲一)

A2 恋のときめき (小川知子)

A3 新宿そだち (大木英夫・津山洋子)

A4 小樽のひとよ (鶴岡雅義と東京ロマンチカ)

A5 星影のワルツ (千昌夫)

A6 天使の誘惑 (黛ジュン) 🅱

A7 ガラスの涙 (西郷輝彦)

B1 花と蝶 (森進一)

B2 星を見ないで (伊東ゆかり) 🅱

B3 札幌ブルース (青江三奈)

B4 愛の園 (布施明) 🅱

B5 思案橋ブルース (高橋昭とコロ・ラティーノ)

B6 マイ・ダーリン東京 (城野ゆき)

B7 星とお月さま (響かおる)

 

演奏: 山下洋治と’68オールスターズ

編曲: 小杉仁三

定価: 1,500円

 

4月17日以来の登場となる山下洋治のスチール・ギター。こちらは68年のヒット曲がずらり。72年のヒット集に比べるとまだまだ泥臭い内容だけあって、ハワイアン・スタイルには程遠く、通常のオーケストラ演奏に乗ってスチールが咽び泣く。といっても、「釧路の夜」は最後の一音だけで楽園へと飛翔してしまうのだ。エグいはずの「新宿そだち」にはキュートな風味が加えられ、元からハワイ志向が強い「天使の誘惑」はよりエレガントに(その分、リズム的には普通のキューティ・ポップに降格)。「ガラスの涙」では、GS的乗りとも意外にマッチするところを聴かせてくれる。ラスト2曲がクラウン自社アーティスト推し枠。「マイ・ダーリン東京」はオリジナルより軽くポップなノリで聴かせ、「星とお月さま」はオリジナル以上にはじけまくり。音色の個性が強すぎる分、カラオケにはなり辛いが、乙女な方は唱和するとモテるかもよ(汗)。クラウンGS(一人GSも)の野暮ったさが好きという方には、このラスト2曲はたまらないものになるはず。

1973年、今日の1位は「赤い風船」

RCA JRS-7283

恋する夏の日 さわやか!! 最新ヤングヒット

発売: 1973年9月

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ジャケット



A1 恋する夏の日 (天地真理) 🅱

A2 避暑地の恋 (チェリッシュ)☆ 🅱

A3 情熱の嵐 (西城秀樹) 🅱

A4 危険なふたり (沢田研二) 🅱

A5 草原の輝き (アグネス・チャン) 🅲

A6 夕顔の雨 (森昌子)☆

A7 恋にゆれて (小柳ルミ子) 🅱

B1 裸のビーナス (郷ひろみ) 🅲

B2 燃えつきそう (山本リンダ)

B3 恋人時代 (堺正章)☆

B4 森を駆ける恋人たち (麻丘めぐみ) 🅲

B5 君の誕生日 (ガロ) 🅱

B6 傷つく世代 (南沙織) 🅱

B7 赤い風船 (浅田美代子)☆ 🅱

 

演奏: 森ミドリとレモン・ポップス

編曲: あかのたちお、森ミドリ(☆)

定価: 1,800円

 

「エレクトーン」はヤマハ製電子オルガンの商品名ですが、ヤマハ以外のメーカーとの連帯力を強めたいレコード会社も当然あったわけで、親会社が電子オルガンを作ってたビクターはまさにその代表。横浜スタジアムのバックスクリーン近くに設置されていたことでお馴染みビクトロンがその商品名で、その普及大使的存在に君臨していたのが森ミドリさんだ。自らのラジオ番組も持ち、一部ではアイドル的人気も高かったお嬢さん。当時は日本ビクターの直系レーベルだったRCAから4枚のアルバムをリリースし、他のレーベルにも数枚録音を残している。今やRCAの発売権がビクターではなく、ソニーにあるというのが皮肉なものだが(ソニーはエレクトーンの重要なサポーターの一つであった)。

さて、「さわやか」というのは70年代初期の重要なキーワードの一つ。プロボウラーの中山律子さんがその立役者であることは言うまでもないが、ここでの森ミドリさんはさしずめ「音楽版中山律子」というか、軽いフットワークで駆け抜けるイメージ。当時のヤングスターのヒット曲をずらり、軽快なアレンジでこなしまくる。楽譜と軽いアドバイスも添えられていて、実践派にも優しい(主旋律のみの記載なので、各自自由にアレンジできる特権も与えられるというわけ)。当然ジャケットはご本人登場。以下、聴きどころ。

トップはさわやかさの象徴みたいな「恋する夏の日」。緻密に組み上げられたバックのアレンジも爽快そのもので、きらびやかな音色が冴える。減衰音系の冴えはエレクトーンを凌ぐと言ってもよく、この種の曲には持ってこい。と思いきや、2曲目で劇的な展開を見せる。バンドサウンドが消え、ビクトロンだけの伴奏に彼女自身と男性1名による歌声が乗る「避暑地の恋」。海辺の効果音も加わりシュールな展開。歌詞を歌わないボーカルはサービス以外の何でもないが、制作者の萌えのツボが伝わってくる(爆)。続く「情熱の嵐」から通常モードに戻るが、回転スピーカーの低音の震えが集音の負担になってるようで、その辺は当時の録音テクノロジーの限界を露呈したか。「危険なふたり」もここまでさわやかにこなされた例は他にないし、乙女度の高い曲では個性全開。「夕顔の雨」では多重録音のビクトロンのみで長閑に聴かせ、クラウン時代に残した愛唱歌集を思い起こさせる。

B面はさらに楽しそうに盛り上げる外野の声が入った「燃えつきそう」や、いずれも疾走感たっぷりの筒美曲3曲を経て、ラスト「赤い風船」に辿り着く。こちらも「避暑地の恋」と同様の作りになっているが、こちらの方がシュールでかつ萌えること必至(汗)。オリジナルがオリジナルだけに、彼女の色の加え方にも相当の工夫が窺えるが、ボーカルだけは仕方ないと言ったところ…その辺をカバーするように、エンディング近くに鳥のさえずりが加わり始め、ピンク・フロイド『ウマグマ』さながらの世界。これもまた、歌無し歌謡の「番外編」的な美学。続いて出されたシリーズ第2弾に、この歌詞なしボーカル路線が含まれなかったのが残念(しかし、そこには別の「お楽しみ」が用意されている…)。後に東芝から出した自作曲アルバム『想い出草』では、ふんだんに歌ってくれているのだが。

今日は山田パンダさんの誕生日なので

ミノルフォン KC-5003~4

最新ヒット歌謡BEST30

発売: 1975年8月

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ジャケット+盤



A1 人恋しくて (南沙織) 🅱

A2 夕立ちのあとで (野口五郎)

A3 シクラメンのかほり (布施明) 🅴

A4 内気なあいつ (キャンディーズ) 🅱

A5 たんぽぽ (太田裕美)

A6 この愛のときめき (西城秀樹)

A7 哀愁のレイン・レイン (チェリッシュ) 🅱

A8 スモーキン・ブギ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)

B1 はだしの冒険 (アグネス・チャン) 🅱

B2 巴里にひとり (沢田研二) 🅱

B3 22才の別れ (風) 🅱

B4 ひとり歩き (桜田淳子)

B5 東京 (マイ・ペース)

B6 白い部屋 (沢田研二)

B7 夏ひらく青春 (山口百恵) 🅱

C1 千曲川 (五木ひろし) 🅱

C2 心のこり (細川たかし)

C3 ひと雨くれば (小柳ルミ子) 🅱

C4 湖の決心 (山口百恵)

C5 私鉄沿線 (野口五郎)

C6 我が良き友よ (かまやつひろし) 🅲

C7 黄昏の街 (小柳ルミ子)

C8 夜の訪問者 (小川順子)

D1 昭和枯れすゝき (さくらと一郎) 🅱

D2 面影の君 (森昌子)

D3 哀恋記 (五木ひろし)

D4 いつか街で会ったなら (中村雅俊) 🅱

D5 さよなら友よ (山田パンダ)

D6 浮草の宿 (殿さまキングス)

D7 ともしび (八代亜紀)

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ&ストリングス

編曲: 福井利雄、神保正明、斉藤恒夫、矢野立美 (曲別表記なし)

定価: 2,000円

 

やっと初登場、ミノルフォンブルーナイト・オールスターズ。この名義での初リリースは71年で、遅くとも79年までコンスタントに作品をリリース。強烈な芸風を刻印することなく、いい感じで雰囲気作りに徹するその演奏は、74年以降に限ればクリスタル・サウンズの次にお気に入りである。ジャケット的にも女性のポートレイト一辺倒でなく、風情溢れるイラストを採用したり、文字だけという異例の盤があったり、さらに帯デザインにも個性を出したり…いろんな意味でそそる楽団だ。難を言うと、クラウン程ではないにせよ、買いすぎると同じヴァージョンの重複に悩まされることくらいである(爆)。とはいえ、個々のアルバムに最低1曲はユニークな選曲があり、それがたまらないのであるが。

75年のヒット曲を30曲集めまくったこの2枚組。個別アレンジャークレジットの不在が残念ではあるが、他社の同系統盤で腕をふるった面々が大集合。それでいて、ブルーナイトサウンドの色に染まりまくっていて、安心して聴ける。冒頭の「人恋しくて」の乙女心に満ちたフルート、「夕立ちのあとで」でアンニュイな雰囲気を倍増させる鍵ハモとエフェクティヴなギターから強力に引き込まれる…どの曲もソリッドなリズムが底辺を固め、分離のいい録音で引き締まった音を聴かせる。先に挙げた3つの楽器がこのアルバムのサウンドを特徴づけているのだが、特にフェイザー系エフェクトを多用したギターの存在感は強烈で、「ひとり歩き」「私鉄沿線」のイントロで聴ける過剰なその音は滑稽の域に滑り込みかけているし、22才の別れの泥臭さはこの曲の全ヴァージョン中でも屈指だろう。「夜の訪問者」は自社推し枠のレア選曲だが、アレンジ的にはどうってことない。左右に広がりまくるソリーナや緩やかにオートパンする電気ピアノなど、この時期ならではのサウンドも存分に味わえる。

今日はバート・バカラックの誕生日なので

国文社 SKS-102

ギター・ムード

発売: 1976年

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ジャケット



A1 ジャンバラヤ (カーペンターズ)

A2 レイン・レイン (サイモン・バタフライ)

A3 コンドルは飛んでゆく (サイモン&ガーファンクル) 🅲

A4 イエスタデイ・ワンス・モア (カーペンターズ)

A5 雨にぬれても (B.J.トーマス) 🅲

A6 あまい囁き (アラン・ドロン&ダリダ)

B1 シクラメンのかほり (布施明) 🅳

B2 ひと夏の経験 (山口百恵)

B3 哀愁のレイン・レイン (チェリッシュ)

B4 挽歌 (由紀さおり)

B5 二人でお酒を (梓みちよ) 🅱

B6 よこはま・たそがれ (五木ひろし)

 

演奏: ニュー・サン・ポップス・オーケストラ

編曲: Y. Okada (A)、M. Sumi (B)

定価: 2,200円

 

国文社の第2回発売分のうち数枚は、片面洋楽もう片面歌謡曲のカヴァーという方針で制作されたが、それじゃ無茶すぎと悟ったのか、シリーズ完結後内容を組み替え再発売されたケースが4枚あり、今作のA面は『サックス・ムード』のA面と組み合わされ『ゴッドファーザー(愛のテーマ)』(SKS-121)として、B面は同様にB面同士組み合わされて『シクラメンのかほり』(SKS-119)として、それぞれ再発売されている。いずれも、実物を見たことはありません…ということで、当ブログではそれぞれのオリジナル盤を取り上げます。

16チャンネル最新録音超立体音響の効果を生かすべく、タイトなサウンドが終始展開。ギターを主役に据えつつ、カラフルに多彩な音色が盛り上げる。ジャンバラヤは当然カーペンターズ盤が元になったアレンジだが、多重録音のギターに加え、フルートが張り切りまくる。「コンドルは飛んで行く」の冒頭で奏でられる笛はケーナではなさそう。その後、アルトフルート、通常のフルートが絡み、一丸となって爽やかに襲いかかる。どの曲でも、決して出しゃばらず、主題をさりげなくアピールする、ムードメーカーとしてのギターが聴ける。

歌謡サイドではより守りに入った演奏に徹しているが(A面に「レイン・レイン」を、B面に「哀愁のレイン・レイン」をそれぞれ入れたのは確信犯的で笑えるが、この曲はクリスタル・サウンズ盤の圧勝すぎ)、ラストを飾るよこはま・たそがれが鮮やかすぎる。国文社第2回の中でも屈指の名演。

イントロを飾る不思議な音は、アルトフルートとアルトリコーダーのそれぞれの低い音を1オクターブずらして重ねたもの。Bメロではそのまま主旋律を奏で、ますます魅惑的世界へと誘ってくれる。特にリコーダーの録られ方が素晴らしい。このアイディアはもっと実行されてよかった…いくらギターががんばろうが、この曲では完全に脇役。ミノルフォンの「ふるさと」と並ぶ、「歌無五木」の真髄としか言いようがない。

歌謡フリー火曜日その6: 日本のメロディー

コロムビア KW-7510

日本の郷愁 ベスト・コレクション

発売: 1973年9月

 

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A1 夕やけこやけ

A2 赤とんぼ

A3 七つの子

A4 おぼろ月夜

A5 さくらさくら

A6 浜辺の歌

A7 故郷

A8 待ちぼうけ

A9 中国地方の子守唄

A10 野バラ

B1 早春賦

B2 月の砂漠

B3 この道

B4 宵待草

B5 里の秋

B6 荒城の月

B7 花

B8 あわて床屋

B9 砂山

B10 からたちの花

 

演奏: コロムビア・ミリオン・ポップ管弦楽団

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

たまにはポピュラーと趣を変えて、童心に戻れる「愛唱歌」のイージーリスニング化を。こういうレコードの良さも、こんな時代になってやっと解ってきたというか、きっかけなんてどっから巡ってくるかわからないもんね。そもそも、歌無歌謡のレコードをジャンクヤードから拾い集めるにあたって、複数枚買うとディスカウント価格になるというチャンスに巡り会った時、帳尻合わせに童謡のレコードを入れて、「ただ単にエロジャケ集めてんじゃねーぞ」という意地を見せたりして…いや、それじゃ余計変態か。といっても、真剣に童謡に取り合おうと思ったきっかけは、僚友のひとりがDJイベントで流した、米国ヒップホップの異端Edanによる、「ふたあつ」を大胆にサンプリングした怪作 “Sing It, Shitface” を耳にして衝撃を受けたことで、それこそ最初の頃は「ふたあつ」を収録した盤を重点的に買っていたり(汗)。そんな過程で、クラウンが70年代末に出していたカラーレコードの童謡シリーズが無意識に集まってきたり。そのシリーズの1枚、ゴダイゴの「ビューティフル・ネーム」をカバーした盤がもしどっかのリサイクル店から姿を現したら、多分その場で10cmほど飛び上がりますよ(爆)。あと、自分でフルートを吹き始めて、あらゆる世代の方々と音楽的交流を深めるにあたって、その辺の曲をもっと知っておかなきゃという思いに駆られたのも大きいし。

前置きが長くなりましたが、今日紹介するのは、コロムビアが廉価盤ベストセレクションの1枚としてリリースした、日本の愛唱歌イージーリスニング化作品。それまでに出ていた数枚のアルバムから曲を集めてコンピレーション化したもので、よってアレンジャーのクレジットがない不親切な仕様(その割に解説はしっかりしている)。どうやら東海林修氏がその大半を手掛けているようだ。

はっきり言って、これは名盤すぎます。決して硬い表情にならず、頬を緩ませながらおなじみのメロディーに耳を傾け、時折途轍もない感傷的想い出が蘇ってくる位の郷愁ムードに包まれる。1曲目、「上を向いて歩こう」のような軽快さで「夕やけ小やけ」が始まると、家へ帰るムードもどこへやら、うきうき紀行の始まりだ。マジカルなアレンジが僅かな時間の間に雑多な風景を見せてくれる。「風の谷のナウシカ」のようなイントロで始まる「赤とんぼ」、恋に落ちるとカラスが鳴くのと教えてくれるような「七つの子」、セルメン並みのペースで花咲かせまくる「さくらさくら」と、快演が目白押し。ジェームス・テイラーのようなイントロで始まり、途中「サムシング」や「美しき人生」のニュアンスまで加わる「待ちぼうけ」が前半のクライマックス。後半では、不思議なサイケ感覚からシュールな異世界へと吸い込まれる「月の砂漠」ノベルティ感覚に包まれた「あわて床屋」に導かれ、まるでワーナー・ビートニックスがやりそうなハードなロックに生まれ変わった「砂山」が最大の聴きもの。決して妙な方向に行きすぎず、コンテンポラリー感覚を適度に活かしたナイスな流れで、情緒教育にも最適ですよ。意外と手に入りやすいし。当時の学校の音楽室の常備アイテムの一つだったんだろうなと想像できます。

 

郷愁ムードとはまるで無縁の問題作(笑