黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は山木康世さん (ふきのとう) の誕生日なので

ユピテル/博光 RH-6

遠くへ行きたい・誰もいない海 フォーク歌謡ベスト・ヒット

発売: 1975年?

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ジャケット



A1 遠くへ行きたい (ジェリー藤尾) 🅱

A2 空よ (トワ・エ・モア) 🅲

A3 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス) 🅴

A4 さよならをするために (ビリー・バンバン) 🅴

A5 花嫁 (はしだのりひことクライマックス) 🅴

A6 学生街の喫茶店 (ガロ) 🅴

A7 ひまわりの小径 (チェリッシュ) 🅳

A8 精霊流し (グレープ) 🅳

B1 誰もいない海 (トワ・エ・モア) 🅴

B2 若草の髪かざり (チェリッシュ) 🅲

B3 旅の宿 (吉田拓郎) 🅸

B4 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅴

B5 哀愁のレイン・レイン (チェリッシュ) 🅲

B6 白い冬 (ふきのとう) 🅰→4/9

B7 結婚するって本当ですか (ダ・カーポ) 🅱

B8 見上げてごらん夜の星を (坂本九)

 

演奏: ザ・フォーク・ライダーズ/ザ・サウンズ・エース

編曲: 無記名

定価: 記載なし

 

半掛け帯ならぬ「裏欠け帯」が印象に残るユピテルの「博光」ルートで出されたフォーク名曲集。例によって、市販された同タイトルのアルバム(YLT-111)と内容はおろか、スタンパーまで共有しているけれど、こちらの盤のジャケットは怖い…親しみやすさというか、ロマンチックなムード皆無。どのような販売網で売られたか、今になっては解明のしようがないのだけど、一般のレコード店向きではない印象はある。75年当時の最新ヒットのみならず、様々な時代から名曲が集められ、幅広い世代のピースフルな語らいに色を添えるにうってつけ。謎めいた演奏者クレジットではあるけど、のっけの「遠くへ行きたい」からして好夫節全開。何度もこの曲にタックルしていると思われる木村好夫先生だけど、ここでもさりげなく、軽いエフェクター使用をかましつつ、右側で聞こえてくるサイドプレイにまではっきりと個性を刻印している。ちょっと前の曲も、透明感のあるサウンド作りで70年代中期のムードに統一しており、「空よ」「若者たち」のフルート、「白い色は恋人の色」「花嫁」のオカリナなど、脇役も鮮やかに活躍している。「学生街の喫茶店もまさかのテンポアップにより、新しい色彩感が与えられているし、ソフトロック的感覚に彩られた「誰もいない海」が見せてくれる風景は鮮やかだ。「結婚するって本当ですか」の鍵ハモは息もあらわで、曲の根底にある執念を浮き彫りにしてみせる。蛇足だけどこの曲の森進一によるカヴァーは、「歌入り歌無歌謡」(70年代までのオリジナル歌手以外によるアルバム用のカヴァーを、個人的にはそう総称している)として格別の出来。一聴をおすすめする(各種サブスクにもあります)。

それにしても時間が止まるのは精霊流しが始まった時だ。まさにこのジャケットが語りかけようとしてるようなサウンド…ころころとテンポが変わるキング盤も執念深いイメージだったけれど、このユピテル盤の一見無表情でありながら、ラストで怨念を増すように鳴り響く鈴の音ったら…ジャケットのイメージと実際の音が一致した、歌無歌謡では稀な一瞬だ。市販盤の方のジャケは海上の風景で、こんな感じじゃ決してないのに…

今日は五月みどりさんの誕生日なので

ポリドール SLJM-1404 

クラビオリン 歌の旅路

発売: 1968年3月

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ジャケット

 

A1 函館の女 (北島三郎)

A2 霧の摩周湖 (布施明) 🅱

A3 函館ブルース (小野由紀子)

A4 榛名湖の少女 (布施明)

A5 東京ブルース (西田佐知子) 🅱

A6 新宿ブルース (扇ひろ子) 🅲

A7 熱海で逢ってね (五月みどり)

B1 京都の夜 (愛田健二)

B2 先斗町小唄 (小松みどり・マヒナスターズ)

B3 岐阜の夜 (朝丘雪路)

B4 琵琶湖の少女 (愛田健二)

B5 たそがれの御堂筋 (坂本スミ子)

B6 尾道の女 (北島三郎)

B7 別府ブルース (西田佐知子)

 

演奏: 小島策朗 (クラビオリン)/ポリドール・オーケストラ

編曲: 竹内一朗

定価: 1,450円

 

昨日に続いて異色楽器が活躍するアルバムの登場。今回の主役は、古き良き演歌になくてはならない電子鍵盤楽器クラビオリン。草臥れた温泉街の雰囲気を体現するその音は、60年代にしては相当先鋭的なテクノロジーの賜物だった。40年代にフランスで開発され、欧州のメーカーによる改良で一躍、音楽制作現場ではポピュラーな存在に。62年のトーネイドーズの大ヒット「テルスター」で主旋律を奏で、その音色が知られるようになったが、それ以上に強烈な印象を残したのは、67年発表されたザ・ビートルズ「ベイビー・ユアー・ア・リッチ・マン」だろう。最新鋭のおもちゃを弄ぶようなジョン・レノンのプレイは、この楽器名の印象を強烈に音楽ファンに刻みこんだはず。単音しか発声できないものの、後年のシンセの複雑な発音回路ではかえって得られづらいシンプルな鄙び加減が、なぜか日本の演歌界にぴったり着地し、いろいろなレコードで聴かれるようになった。そして、その音を全面的にフィーチャーした歌無歌謡盤も、何枚か作られたのである。

そんな1枚で、曲名を見て解る通り、所謂ご当地ソングのみを取り上げ、歌無歌謡で日本全国を巡ろうというナイスな企画。まずジャケットが素晴らしい。この単線SLが駆け抜ける光景、最早見られないけど、霧島あたりだろうか…旅はみんな大好き「函館の女」からスタート。哀愁たっぷりに歌い上げるその音こそ、まさにクラビオリンの真髄。霧の摩周湖はこの選曲の中ではポップス度が高い方だが、こちらではトーンを鋭く変えて、モダン感覚で迫っている。「新宿ブルース」はやさぐれ感を高めるような独自のアレンジで、右のチャンネルに入っているオルガンも特異な音色だ。「熱海で逢ってね」からの3曲では、琴と軽妙にデュエットしている。西に旅が進むにつれて、アーバンな色が濃くなり、旅路は別府で、淡白な音の独白と共におしまい。マルチトラック録音がそれほど発達してない時期にしては、個々の音がバランスよく録られており、そんな中を豊かなボリュームコントロール技術を駆使してすり抜けてゆくクラビオリンの音色がリードしていく。手許にある盤の状態がもうちょっと良かったら、なんだけどね問題は。

このアルバムの存在が影響を与えたかどうかは限りなく不透明だけれど、6年後には同じように日本全国のご当地ソングを、よりヤバい最新鋭鍵盤楽器=メロトロンの調べで綴るという怪盤、メロトロンズ『演歌の旅』(SJV-703)が制作されており(奇しくもトップが「函館の女」)、こちらはある意味黄昏みゅうぢっくの「極北」である。手を伸ばしたいのに伸ばせない、そんな世界だ…今ではもっとグローバルな選曲企画ができそうな気もする…「さらばシベリア鉄道」とかまで入れて。

 

最後に…クラビオリン奏者(後にメロトロンなど、各種電子鍵盤楽器への挑戦も果敢に行なっていた)としては日本随一の存在、小島策朗さんのご冥福をお祈り申し上げます…黄昏みゅうぢっく開始の2ヶ月後、6月18日に息を引き取られたそうです。一般には大きく報じられませんでしたが、日本音楽の歩みを考えると大きな損失でした。

1969年、今日の1位は「人形の家」

テイチク SL-1303

クレイジー・パーカッション タヒチアン・リズムによる人形の家

発売: 1969年12月

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ジャケット

 

A1 人形の家 (弘田三枝子) 🅵

A2 銀色の雨 (小川知子) 🅲

A3 涙でいいの (黛ジュン) 🅲

A4 今日からあなたと (いしだあゆみ) 🅱

A5 星空のロマンス (ピンキーとキラーズ) 🅲

A6 雨に濡れた慕情 (ちあきなおみ) 🅲

B1 バラ色の月 (布施明) 🅲

B2 ローマの奇跡 (ヒデとロザンナ)

B3 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅴

B4 何故に二人はここに (Kとブルンネン) 🅱

B5 まごころ (森山良子) 🅳

B6 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅵

演奏: クレイジー・ニュー・サウンズ・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

歌無歌謡の深い闇を探っていると、タイトルを見ただけで「一体これは何なんだ」と色めき立ってしまうレコードに出くわす事がある。そんな一枚がどっかから姿を現さないかなとときめきながら、特にこの2年近くの間電脳空間を彷徨っていたのだけど、いざ出てきたら我を忘れるんですよね…そんなわけで、今日紹介する盤は過去最高価格で買った歌無歌謡アルバムです。送料を含めると定価の2倍を軽く越える…まぁ、その位が限度ではあるんですけど。

ドラムならまだ解るとして、「パーカッション」を打ち出した歌無歌謡レコードは珍しいし、その上「クレイジー」ときた。一体どうクレイジーなのか…「人形の家」に針を落とした途端、始まる狂乱のリズムの応酬。フリーフォームな感じでそんな演奏が1分近く続いた後、やっと本編がスタートする。普通にジャズ・ロック色濃い演奏(ギターはちょっと好夫っぽいが、恐らく別人だろう)が続く中、後方でコンスタントにポコポコ言いまくり。グルーヴ感を高めるというより、脳髄を微妙にくすぐる感じの使われ方だ。カルト盤として密かに人気を得、この頃ユニオンから再発盤が出ていたチャイノの「アフリカ打楽器隊」を多少は意識した演奏かもしれないが、トロピカル感覚はそれほど感じられない。「涙でいいの」「まごころ」など、ムーディな感覚を強める役割に留まった曲もあるが、殆どの曲でオリジナルにない喧騒感の素としてパーカッションが配されており、中でも過剰なのは「今日からあなたと」だ。大丈夫なのか、この解釈で一体…ブラスも直線的に吠えまくり。「何故に二人はここに」も、途中とってつけたように爆走パートが挟まれる異色の解釈。「バラ色の月」が、原曲のポップさと最もバランスが取れたアレンジになっている。

ここまでの異色盤なのに、なぜかアレンジャーのクレジットがない。「悲しみは~」の編曲者として寺岡真三氏の名前があるが、オリジナル盤からコピペしちゃいけないとこまでコピペした結果と思われる。ギターのアンサンブルなんかには、山倉たかし色が濃厚に出ているの思うのだが。そして、ジャケットのモデル。濃厚に厚化粧を施してはいるけど、まさかこれ、涼川真里さんじゃ…同じ写真が色彩度を落としつつ、4面全てに使われており、練られ不足のまま市場に出されたのではと憶測される。まず企画が暴走したみたいな1枚ではあるけど、故に憎めない、そんなアルバムです。

歌謡フリー火曜日その28: 音楽が死んだ日

マーキュリー MCR-302L

ニュー・ヒット・ポップス・オブ・フルバンド

発売: 1972年

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ジャケット

 

A1 アメリカン・パイ (ドン・マクリーン)

A2 気になる女の子 (メッセンジャーズ)

A3 エスチョンズ67/68 (シカゴ)

A4 オールド・ファッションド・ラヴ・ソング (スリー・ドッグ・ナイト) 🅱

A5 ラヴ (ジョン・レノン) 🅴

A6 夕映えのふたり (ウド・ユルゲンス) 🅵

B1 木枯しの少女 (ビョルン&ベニー) 🅲

B2 ただ愛に生きるだけ (マルティーヌ・クレマンソー)

B3 ブラック・ドッグ (レッド・ツェッペリン) 

B4 恋は二人のハーモニー (グラス・ルーツ)

B5 マミー・ブルー (ポップ・トップス) 🅲

B6 悲しきジプシー (シェール)

 

演奏: マーキュリー・メモリアル・サウンズ・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,300円

 

謎の多い日本マーキュリー・レコード(米国の同名会社との関係はそれこそとんでもなく複雑で、正解を探すのも困難)には歌無歌謡のアルバムもいくつか残されていて、当ブログでも既にカセットを一本紹介しているが、こちらは洋楽の演奏アルバム。ジャケットを見ると、英国の廉価レーベルが出しそうなインストカヴァー集というニュアンスが伝わってくるけど、これは間違いなく国内制作である。曲名を見ただけでそう勘付く人は鋭い。

シカゴ、BS&Tなどの活躍で「イケてるもの」に奉り上げられてしまった「ブラス・ロック」の動きに微妙に反応したアルバム、という表向きの顔がある。確かに、ジャズ畑の人がシリアスなビッグ・バンド・サウンドでロックにアプローチしたアルバムがこの時期相当数出されており、いくつかは「和モノ」のまな板に乗せられて近年とんでもない値段で売買されたりしているけど、このアルバムにそれを期待してはいけない。まず思考回路を「場末の歌無歌謡脳」に切り替えておかないと、どえらい目に遭う。

まずはバディ・ホリーら3人の命を奪った59年の飛行機事故を「音楽が死んだ日」として嘆いた名曲アメリカン・パイ」。主題の悲愴さはどこへやらという楽観的で軽い演奏。語り的ニュアンスが強いメロディを直線的ブラス・アンサンブルで奏でられると、むしろこそばゆいし、正統派吹奏楽に乗っ取った和声感覚はこの曲には不釣り合い。中途半端に終わってしまい、なんかなぁと。続く「気になる女の子」は何度となくリバイバルヒットもしている、世界中で一番日本でヒットしたあの曲だが、断片化を解消できていないようなアレンジが無力感を募らせる。で、こちらは原曲みたいにあっさり終わらず、余計な2音を最後にくっつけているので余計気が抜ける。

問題のシカゴの曲は「クエスチョンズ67&68」を取り上げ、比較的忠実なブラスアレンジをしているが、右側に入っているクリーンなギターに興醒め…間奏のテンポアップ以降はなんか落ち着かない展開だし。続く2曲は、ポピュラーの王道的解釈でも許されるタイプではあるが、「オールド〜」はイントロを聴きながら曲名を見ると逆説的に「えーっ」となってしまうし、「ラブ」はレターメン盤に配されたハーモニーを踏襲したブラスのオブリガートがなんかおかしい。「Love is you」のところのコードとか、細かいとこに「これ違うんじゃ」という要素が散見されまくり。「夕映えのふたり」は、普通に「別れの朝」の歌無歌謡盤として聴けるので、最も違和感なし。むしろ、ここまでゴージャスな演奏は珍しいかも。

B面の冒頭2曲はまぁ普通に聴けるとして(「ただ愛に生きるだけ」は、似てる曲ありますよね…歌謡世界に)、その後が問題だ。パチ洋楽ファンなら仰け反り間違い無しの「ブラック、ドッグ」(ジャケ裏表記ママ)。どうアレか言葉に変えるの難しい…けど、日本民謡をストレートなブラスロックアレンジで演ったとしても、これよりはZEP濃度が高くなるのではとさえ思えてしまう怪演。「あー、あー」のところを普通そう解釈するか、という脱力加減に、無駄に張り切ろうとするギターが油を注ぐ。とどめに、この「音」で締めますか!最初に聴いた時、笑いが止まりませんでした。あと3曲、どうでもよくなります。「マミー・ブルー」に唐突にフルート入れられてちょっと困りましたが。シリアスな「悲しきジプシー」の最後にもあの和音がぶち込まれ、ダメ押しのダメ押し。やっぱこの辺の洋楽曲の多くにはただならぬ思い入れがあるので、補正かかるのは仕方ないですけど。

迫力ある吹奏楽を聴くのはスカッとするけど、プレゼンテーションの仕方は考えて欲しいな、と思わずにいられないアルバムだ。まぁ、そっち傾向への深入りも「黄昏みゅうぢっく」の重要なテーマなんですけどね。これ聴いて元のムードに戻りましょう。


www.youtube.com

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なんちゅう脱力加減。

 

今日は郷ひろみさんの誕生日なので

アトランティック QL-5034~5A 

華麗なるドラム・ベストヒット40 漁火恋唄・悲しみよこんにちわ

発売: 1972年11月

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ジャケット

A1 24000回のキッス (ゴールデン・ハーフ) 🅱

A2 悲しみよこんにちわ (麻丘めぐみ) 🅴

A3 春・夏・秋・冬 (後藤明)

A4 漁火恋唄 (小柳ルミ子) 🅳

A5 生まれかわれるものならば (いしだあゆみ) 🅱

A6 狂わせたいの (山本リンダ) 🅴

A7 虹をわたって (天地真理) 🅶

A8 小さな体験 (郷ひろみ)

A9 若草の頃 (小川知子)

A10 サラダ・キャンディ・オレンジ (平田隆夫とセルスターズ)

B1 恋の約束 (西城秀樹)

B2 同級生 (森昌子) 🅲

B3 死んでもいい (沢田研二) 🅱

B4 御案内 (ウイッシュ)

B5 あなたに賭ける (尾崎紀世彦) 🅳

B6 古いお寺にただひとり (チェリッシュ) 🅲

B7 放浪船 (森進一) 🅳

B8 ラヴ・ソング (井上順)

B9 恋の衝撃 (朱里エイコ) 🅱

B10 僕だけひとりぼっち (伊丹幸雄)

C1 夜汽車の女 (五木ひろし) 🅵

C2 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅴→7/1

C3 哀愁のページ (南沙織) 🅷

C4 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅱→4/30

C5 孤独 (和田アキ子) 

C6 ひとりじゃないの (天地真理) 🅺

C7 結婚しようよ (吉田拓郎) 🅷

C8 太陽の彼方 (ゴールデン・ハーフ) 🅳

C9 今日からひとり (渚ゆう子) 🅳→5/28

C10 嵐の夜 (にしきのあきら) 🅱

D1 恋の追跡 (欧陽菲菲) 🅷

D2 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子) 🅴→5/28

D3 ふりむかないで (ハニー・ナイツ) 🅲

D4 許されない愛 (沢田研二) 🅴

D5 誰も知らない (伊東ゆかり)☆ 🅲→7/4

D6 愛する人はひとり (尾崎紀世彦)☆ 🅱→7/4

D7 ちいさな恋 (天地真理)☆ 🅰→5/28

D8 友達よ泣くんじゃない (森田健作) 🅰→5/28

D9 涙 (井上順)☆ 🅰→5/28

D10 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅳

 

演奏: 市原明彦 (ドラムス)/ワーナー・ビートニックス

編曲: 原田良一、穂口雄右(☆)

備考: SQ方式4チャンネル・レコード

定価: 3,000円

 

歌無歌謡界でも最大級のリスペクトをもって扱われているHIROMI GOの誕生日、敢えて歌無歌謡的にはあまり目立たない2枚目のシングル「小さな体験」を取り上げたこのアルバムを引っ張り出してきました。72年、ワーナー・ビートニックス(+ブリリアント・ポップス77)の勢いは怒濤の如しで、1枚もののアルバム21作、2枚組を7作リリース。うち1枚もの4作と2枚組2作がドラムものでした。この2枚組には、当然のように1枚ものと同じテイクも多数収録されていますが、独自のセレクションもいくつかあり、ディープなリスナー(いたのか?)にはたまらない内容になっています。何せ、ドラムメインで40曲突っ走るのは並大抵の力じゃ無理だし、聴く方も相当の覚悟がいるはず。

個人的にはビートニックスのアルバムの中でも最も思い入れの強い『虹をわたって/死んでもいい』からもかなりの曲が流用されているので、そちらの方に温存したい話もいくつかありますが、とにかく飛ばす飛ばす。トップの、ゴールデン・ハーフにより蘇ったイタリアの古いヒット曲「24000回のキッス」からして快調すぎる。複数のマイクを使ってシャープに捉えられたドラム・サウンドをさらに2回重ね、あまりにも重厚すぎる音作りを試みているし、ギターも煽りまくり。悲しみよこんにちはは逆にメロウな雰囲気を地道に支える方に徹している。その次の「春・夏・秋・冬」なんて、殆ど記憶に残ってない曲だけど(泉谷しげるの曲が同時期だけど、当然異曲)、レゲエっぽいオルガンも入ったりしてなかなかかっこいい。と思えば、「漁火恋唄」ではパラドックス大爆発。どう凄いかは聴いてびっくり、だけど、これを走りっぱなしのアルバムにちゃっかり入れるところもまた、当時のワーナーの勢いの現れなのかも。以降も、もろフランソワーズ・アルディのアレな若草の頃や、厭世観がただならぬ「御案内」などをペースチェンジャーとして配しつつ、ひたすら走りまくるアトランティック・ドラム。「流浪船」など、のちの水谷公生&トライブ版「夫婦鏡」に通じる美学の萌芽さえ感じさせる演歌ロックも。何が一番凄いかというと「孤独」なのだが、これに関しては初出盤となる『虹をわたって/死んでもいい』を取り上げる日の主題に直結しているので、今日はノーコメントとします。

ジャケットいいですよね。誤字さえなければ、ですが(敢えて、本文内の曲名のみ修正してます)。添付された歌詞、「小さな体験」や「哀愁のページ」に一切漢字が使われてないのはどういう事の成り行きか、ミステリアスな部分もあります…

1977年、今日の1位は「ウォンテッド」(5週目)

ユピテル YL-2061~2 

’78年ヒット歌謡大全集

発売: 1978年

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ジャケット



A1 勝手にしやがれ (沢田研二) 🅱

A2 失恋レストラン (清水健太郎)

A3 カスマプゲ (李成愛) 🅰→4/23

A4 あずさ2号 (狩人)

A5 暖流 (石川さゆり) 🅰→4/23

A6 四季の歌 (いぬいゆみ) 🅱

A7 想い出ぼろぼろ (内藤やす子) 🅲

A8 秋桜 (山口百恵) 🅲

B1 渚のシンドバッド (ピンク・レディー) 🅲

B2 帰らない (清水健太郎) 🅲

B3 津軽海峡冬景色 (石川さゆり) 🅰→4/23

B4 青春時代 (森田公一とトップギャラン) 🅳

B5 おもいやり (黒木憲)

B6 どうぞこのまま (丸山圭子) 🅳

B7 悲恋白書 (岩崎宏美)

B8 昔の名前で出ています (小林旭) 🅱

C1 人間の証明のテーマ (ジョー山中) 🅱

C2 硝子坂 (高田みづえ) 🅱

C3 フィーリング (ハイ・ファイ・セット) 🅴

C4 おゆき (内藤国雄) 🅰→4/23

C5 メリー・ジェーン (つのだ☆ひろ)

C6 そんな夕子に惚れました (増位山大志郎) 🅰→4/23

C7 雨の桟橋 (森進一) 🅱

C8 愛のメモリー (松崎しげる) 🅱

D1 コスモス街道 (狩人) 🅱

D2 星の砂 (小柳ルミ子) 🅱

D3 能登半島 (石川さゆり) 🅱

D4 夢先案内人 (山口百恵) 🅲

D5 おんな港町 (八代亜紀) 🅲

D6 線香花火 (さだまさし)

D7 酒と泪と男と女 (河島英五) 🅰→4/23

D8 ウォンテッド [指名手配] (ピンク・レディー) 🅳

 

演奏: ザ・サウンズ・エース/インペリアル・サウンド・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 2,500円

 

78年と銘打たれてはいるが、実質的には77年を代表するヒットナンバーを集大成したもの。77年と言えば、ピンク・レディーの大活躍で表面的には華々しいイメージが象徴してる感じだけど、リアルタイムで通過した者なら解るように、戦後芸能界では屈指のスキャンダラスな年であった。そのことを嫌でも思い出させてくれる選曲の歌無歌謡盤は稀で、超メジャーとは言い難かったユピテルだからこそできた1セット、ってのは言い過ぎか。

大ヒット勝手にしやがれで第一線に復帰したジュリーでさえ、前年巻き込まれた「イモジュリー事件」の暗い影を完全に払拭したと言えなかった。今ならSNSで平然と行われているようないけないことを、公の場でやってしまった一般人に非があるのは当然だけど、同曲がレコード大賞まで獲ってしまったことで、世間はジュリーの味方をしたという、当然の成り行きとなったのだ。以後数年間のジュリーの勢いったらなかった。今振り返ればそりゃないだろというイメージ作りだろうが(「サムライ」や「TOKIO」は特に)、当時見る者にとってはカッコ良い以外の何でもなかった。

その後、今作に選曲されている二人をはじめとする多数の芸能人(一般的にそのイメージが最も強いと思われる清水健太郎は、当時はほんの新人だった)が巻き込まれた「マリファナ禍」があり、改めて不道徳な行為の恐ろしさを思い知らせてくれたけど、とどめは実質的には前年5月の出来事だった「克美しげる事件」だった。

事件発覚と発売が奇しくもタイミングを重ねてしまった新曲「おもいやり」は当然封印されることになり、最終的には克美の僚友であった黒木憲が同曲を救済して、12月にシングル発売。複雑な事情に絡われながら、結局7年ぶりのチャート入りヒット曲となり、それに伴ってこの歌無アルバムでも取り上げられたわけだ。大ヒット曲にはならなかったけど、ここに選ぶ価値ありと判断したユピテルの意地は、ジャンク棚に眠らせておくにはもったいない。

そんな77年を総括したアルバムではあるけれど、全体的にはノリが軽く、初期ユピテルにあった妙なカラーの名残はあまりない。「勝手にしやがれ」も、ここまで軽くしていいのかという感じのB級感溢れる仕上がり。一方で「四季の歌」ではクラウン盤に負けていないエレガントな感触を出したりしているし(リコーダーがいい感じの色付けを行っていたり)、秋桜のお嬢様っぽさもまた格別。「こんな」のとこで減速するアレンジは独特のものだ。あと、「メリー・ジェーン」が取り上げられているのも珍しい。勿論、問答無用のスタンダード・ナンバーだけど(初出は71年出たストロベリー・パスのアルバム)、当時トランスジェンダー・カルチャーを中心に息の長いヒットになっており、通常の歌無歌謡盤が着目しないところをしっかり見据えてるなと感じさせる。歌無歌謡としての独自性を感じさせるポイントとして、歌いにくいキーで演奏されている曲が多いと感じる。特に人間の証明のテーマ」は、女性が歌うにしてもかなりキツいかも。やはり、カラオケと統合した存在になるべきではなかったのだ、「歌のない歌謡曲」は。それにしても、オチが「ウォンテッド」という構成は見事すぎませんか。

今日は加藤和彦さんを偲んで

ビクター・ワールド W-7024 

恋人たちのフォーク・ロック/あの素晴らしい愛をもう一度

発売: 1971年10月

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ジャケット



A1 ふたりだけの旅 (はしだのりひことクライマックス) 🅳

A2 青春のわかれ道 (ジローズ)

A3 あの素晴しい愛をもう一度 (加藤和彦北山修) 🅲

A4 僕にさわらせておくれ (ピンク・ピクルス)

A5 誰もいない海 (トワ・エ・モア) 🅳

A6 秋でもないのに (本田路津子) 🅱

B1 花嫁 (はしだのりひことクライマックス) 🅳

B2 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス) 🅳

B3 風 (はしだのりひことシューベルツ) 🅸

B4 恋人 (森山良子) 🅴

B5 星に祈りを (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅱

B6 白いブランコ (ビリー・バンバン) 🅶

 

演奏: 猪俣猛オールスターズ

編曲: 小泉猛、八木正生

定価: 1,800円

 

2009年のこの日流れた、加藤和彦さんの訃報はあまりにも唐突過ぎ、悲しすぎた。訃報が伝えられた翌日の夜、予め行く予定だった早川義夫さんのライヴで、なんの前置きもなく歌い出された「からっぽの世界」(ザ・フォーク・クルセダーズのレパートリーとしても知られていた)に、全ての感覚が止まり、時代の終わりを感じた。あれから干支1周し、世界は少しでも回復できたのだろうか。全然、そうは思わないけど。

今日引っ張り出したのは、8月24日の『pop’s in rhythm』に続く大御所・猪俣猛氏のポップスへのアプローチ。当然、歌無歌謡ドラマーAとしての姿と切り離して考えたいアルバムであり、珍しくクレジットされたパーソネルの顔触れからも、先鋭的なジャズ・アルバムと変わらないスタンスが取られていたことがわかる。リード・ギターは川崎燎。当時、既に若き新進ジャズ・ギタリストとして勢いを増していた、後の大御所である。ベースはその筋には説明不要の寺川正興。歌無歌謡で聴ける「暴れまくるベース」と言えば大抵、この人のプレイだと思っていいだろう。クラウンからのリーダー作『ベース・ベース・ベース』は最早カルト盤としての地位を確立しており、ジャンク棚に現れることなど想像できない。フォーク・ギター界を代表する大御所・石川鷹彦が安定したプレイを敷き詰め、キーボードとアレンジは八木正生小泉猛というこれまた凄腕勢。ハーモニカに森本恵夫、フルーゲルホーンに福島照之という色付け要員を配し、曖昧なイージーリスニング・アルバムの域から一歩はみ出た作品に仕上げている。

フォーク・ブームに感じられた過激な一面を廃し、ポップ感覚を重視した選曲でロマンティックな色合いを強調しているけど、安定した演奏により生温いサウンドになっていない。ニュービートのアルバムと異なり、ドラムは完全にサウンドの骨格に徹し、ここぞとばかり前に出てくるところはないし(特にシャープなバスドラの音が印象的)、ベースも抑え気味な自己主張にとどまっている。全体的にギターの優しい音、リードをとるハーモニカやフルーゲルホーンの柔らかい音色が耳に残り、ピースフルというよりナチュラルな長閑さを感じる。まさか川崎燎がこんな譲歩するなんてというイメージもあるけど、「白い色は恋人の色」あたりのプレイには、若さゆえにちょっとかましてみたぜなんてニュアンスも。ユニオン盤では殺伐としたムードに包まれた「花嫁」もこちらでは、バカラック的雰囲気でメロウなアレンジだ。

フィリップス、RCAといった主力傘下洋楽レーベルが相次いで独立し、従来世界各国の独立レーベルと契約・総括する役割を果たしていたビクターの「ワールド・グループ」が69年から邦楽制作に参入。カントリー色の濃いレコードを制作する一方で、ヘルプフル・ソウルに代表されるニューロックを紹介もしていたが、その線上で作られた演奏アルバムとして貴重な1枚。黒レーベルのビクターに出せない味が確かにある。やりきれない悲しみをこんなふうに、愛の力で乗り切れたらいいのに…