黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

いくらわけあり娘だって二十歳まで盃を交わすのは自粛

コロムビア KW-7062

ギターとテナー・サックスによる有線ヒット歌謡 みれん心/ふたりの旅路

発売: 1975年10月

ジャケット

A1 みれん心 (細川たかし) 🅵

A2 北へ帰ろう (徳久広司) 🅷

A3 女の純情 (殿さまキングス) 🅲

A4 私でよければ (石川さゆり) 🅲

A5 新小岩から亀戸へ (潤まり)

A6 弟よ (内藤やす子) 🅶

B1 ふたりの旅路 (五木ひろし) 🅶

B2 気がかり (黒沢年男) 🅱

B3 深夜劇場 (中条きよし)

B4 中の島ブルース (内山田洋とクール・ファイブ) 🅶

B5 夜のカウンター (江利チエミ)

B6 さだめ川 (ちあきなおみ) 🅲

 

演奏: 木村好夫/ジェイク・コンセプション/コロムビア・オーケストラ

編曲: 佐伯亮、坂下晃司

定価: 1,500円

 

昨日の2枚組のB面の延長線上にある、飲み屋のねーちゃん誘惑シリーズの1枚。このジャケットはその道のプロの方でしょうか。新人歌手を使うケースも多々あったのですが、松原のぶえみたいな解りやすい顔の人ならまだしも、この顔の歌手は思い浮かびませんね…飲み屋にくすりを出されると困ってしまいますが(汗)。解りきってるからして、飲み屋モードで安心して聴ける。ユピテル盤「襟裳岬」の入魂のプレイが印象に残るジェイクのサックスも、夜の色に染まりまくり、ママさんの色気を助長するし、好夫ギターがより安定の境地に入っている。チージーなオルガンも、スナックの片隅にあるやつそのものの音を出しているし。やっぱ演歌は染みるねと安心して聴いていたら、A面5曲目に思わぬ罠が…当時現役ポルノ女優、潤ますみでもあった潤まりが、下町の夜の女の悲哀を歌い綴るわけあり歌謡新小岩から亀戸へ」だ。さすがに「幻の名盤解放歌集」で聴くまでその存在を知らなかった曲が歌無歌謡化されていたなんて思わなかった。藤本卓也作品や「かもねぎ音頭」ならまだ解るが…これもヒットしていたんだな、と意外な感慨が。歌詞に目を通すだけで、このアルバムの他の収録曲と桁違いのドラマに襲われる。この哀しい曲より「ひと夏の経験」の方が不純なんて、言いたい人は言えばよい(汗)。

この1曲の存在で他の曲が霞んでしまう1枚だけど、75年の夜に思いを馳せられるアルバム。さすがに10歳児じゃこの世界はね(瀧汗)。ただ、自社故に「弟よ」のイントロはリコーダーで奏でてほしかったな。「深夜劇場」を歌った人も、今では別の世界であんなことに。オマージュを捧げられた(作詞が吉田旺だし)と思しきちあきなおみと好対照だ。