黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

儚いテープと恋の生き別れ

ポニー 20PJ-6002 (8トラック)

琴 恋の雪別れ・夜空

発売: 1974年

ジャケット

1-1 恋の雪別れ (小柳ルミ子) 🅶

1-2 小さな恋の物語 (アグネス・チャン) 🅷

1-3 わたしの宵待草 (浅田美代子) 🅴

1-4 襟裳岬 (森進一) 🆃

1-5 なみだ恋 (八代亜紀) 🅾

2-1 夜空 (五木ひろし) 🅹

2-2 みずいろの手紙 (あべ静江) 🅴

2-3 浮世絵の街 (内田あかり)

2-4 女ごころ (八代亜紀) 🅴

2-5 海鳥の鳴く日に (内山田洋とクール・ファイブ) 🅴

3-1 神田川 (かぐや姫) 🅽

3-2 空いっぱいの幸せ (天地真理) 🅶

3-3 白いギター (チェリッシュ) 🅼

3-4 愛のくらし (加藤登紀子) 🅱

3-5 恋やつれ (藤正樹) 🅲

4-1 記念樹 (森昌子) 🅶

4-2 恋の雪割草 (藤圭子)

4-3 十五夜の君 (小柳ルミ子) 🅻

4-4 ふるさと (五木ひろし) 🅺

4-5 白樺日記 (森昌子) 🅸

 

演奏: 山内喜美子/オーケストラ名未記載

編曲: 無記名

定価: 3,200円

 

2日連続山内選手登板。そして、2本目の8トラック…なんですけど、今月紹介するネタが片付いた後、新たに1本購入したテープが、未開封状態だったにも関わらずプログラム1を再生したあとあっさり切れてしまい(涙)、経年したメディアの儚さを思い知らされることに。次回復活時、張り切って紹介しようとしてたのに。幸い、リペアしてくれる業者もあるみたいですが、経済的に無茶は控えたいところですし。

これは74年にポニーに残された録音なので、当然ポニキャンが原盤権を今も持っていると思われるし、サム・テイラーや木村好夫のポニー録音みたいにサブスクに乗ってもおかしくないと思うのですが、果たしてラブリーなポップ路線に琴が乗っているだけのサウンドに今需要はあるのでしょうかね。一聴すると、当時のクリスタル・サウンズとかと何ら変わりのない、ライトな演奏が展開されているけれど、そこに吹き込まれている空気が異質なのだ。ガチな音楽家魂を持っている山内さんなら、初見一発でメロディ奏でてセッション楽々終わり、なんだろうけど、やっぱり聴いてて鋭さが伝わってくる演奏に恋こがれてしまうわけで。特に71~72年の録音はそんなのばかりだからね。

「小さな恋の物語」のどポップなサウンドに、その異質さが集約されてる感じがあるけど、個人的には続く「わたしの宵待草」を比較対象にしたくなる。ノリを簡素化しながらも、リコーダーで純情さをマックスに高めているクリスタル・ヴァージョンに比べると、全体の演奏は洗練されているし、琴の音も純情では負けていないけれど、その間を取り持つ空気が何とも異様で、ポップという言葉が似つかわしくなくなる。まぁ、ノイズまみれのジャンク8トラではないメディアで聴けば、印象も変わってくるのだろうけど。襟裳岬も、ユピテルのメロトロン攻撃に慣れ過ぎた身にはあまりにもあっさり過ぎる。「らしい~」のとこのコードがIのメジャー6thになっているのは、予期せぬ妙なタッチだけど。さらに神田川という、もっと期待感溢れる選曲が来るけど、これは期待以上。やはりお琴で演られるとしびれる。クリスタルや森ミドリのヴァージョンがときめき度満点だった「空いっぱいの幸せ」も、木琴と絡んでなかなか面白い出来だ。他にも73年の歌無盤の常連曲が目白押しで、ポニーだけに決してチープな演奏じゃないのが安心感を高めているけど、ここでやっと登場する「浮世絵の街」はほんといい曲だよね…歌無盤数多あれど、これが収録された塩ビ盤が1枚もないなんて絶対おかしいですよ。探せばありそうだけど。オリジナル盤でも山内さんは弾いていそうですね。あと、藤圭子「恋の雪割草」もレアだが、タイミング的に不幸だったとしか言えない…