あらゆるイデオロギーを無意味にする歌無ポップスの坩堝
コロムビア KZ-7132
ビート・ポップス’84 時間の国のアリス/哀しくてジェラシー
発売: 1984年7月
A2 メイン・テーマ (薬師丸ひろ子)Ⓑ
A5 騎士道 (田原俊彦)Ⓐ
A6 君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね。 (中原めいこ)Ⓐ
A7 ケジメなさい (近藤真彦)Ⓑ
A8 上海エトランゼ (高見知佳)Ⓐ
A9 ワインレッドの心 (安全地帯)Ⓒ
B1 サザン・ウインド (中森明菜)Ⓒ
B2 気ままにReflection (杏里)Ⓐ
B3 Rock’n Rouge (松田聖子)Ⓑ
B4 晴れ、ときどき殺人 (渡辺典子)Ⓒ
B6 君が、嘘を、ついた (オフコース)Ⓐ
B7 モニカ (吉川晃司)Ⓐ
B9 真夜中すぎの恋 (安全地帯)Ⓒ
B10 もしも明日が (わらべ)Ⓒ
演奏: コロムビア・ポップス・オーケストラ
編曲: 前田俊明Ⓐ、坂下滉Ⓑ、大川友章Ⓒ
定価: 2,000円
さすがのコロムビアも、83年はアイドル攻撃のシビアさに圧倒されたのか、歌無ポップス路線を停止。東芝の2枚組2セットがその穴を埋めたようなものだけど、コロムビア版「君に、胸キュン」や「高気圧ガール」も聴いてみたかったもの。さすがに萌え萌えサウンドまでは期待しませんが…
84年に入ると、ヤングポップス路線が復活、全部で4枚アルバムが出た他、サザン、谷村新司、松田聖子に的を絞った作品集も出ている(この3作に関してはCDも出された)。これらの中では、「リバーサイドホテル」が切実に聴きたい…そんなわけで、84年夏に出されたこの盤ですが、さすがに当時のことを振り返るのは辛い。もちろん、人として多感な時期ではあったのだけど、精神的成長を押し潰すような要素も多々あり過ぎて、特に遠方にいた好きな人との絆が絶たれたことは、今に至るまで尾を引いている。逆に、そのことがきっかけでアイドル芸能に覚醒して、複数の「推し」と呼べる存在を得たのも事実であるが。そんなセンチメンタルな夏の日の思い出を、ライトな感覚で1枚に凝縮したのがこの盤。いろいろな思惑があってか、「ラビー・エイズ・オーケストラ」名義は撤去されている。やはり80年代中期ですからね…それ以上は言えないけど…演奏時間も82年の作品集以上にコンパクトにまとまっている。
このレコードが出た4日後、プリンス『パープル・レイン』が日本で発売され、そのレコードを発売日にお茶の水にあった「ヴィクトリア・レコード・センター」で購入し聴き狂う傍らで、60年代のサイケに没入し、来る社会人時代に向けての意欲など全く捨てていた自分ではあるけれど、このアルバムの収録曲の多くにはリアルタイムで思い入れが伴います。やはりチェッカーズの勢いは全然無視できるものじゃなかったし、友達とジャムる機会があった時とか、自然に出てきてしまいますから。「ケジメなさい」も「サザン・ウィンド」も、境界線なくいい曲だなと思うし(何かに似ていることを咎める立場じゃなくなった…汗)、「Rock’n Rouge」は翌年サンディ・ラムが広東語で歌ったヴァージョンを、91年に死ぬほど聴いてましたし。そのせいで、ここのメロディー違うじゃんと平然と言ったりするのです(広東語カバー曲は、アクセントの独自性が影響して、原曲のメロディーを大胆に改変するに至る例が多々ある)。個々のアレンジがどうのこうの言うより、そういった思い出の方がどうしても優先されるセレクション。最後まで真のときめきを待っても出てこなかったなんて、言うもんじゃないですね。まぁ多少期待はしてましたが、「待つわ」と「雨音はショパンの調べ」の前例がありますんで…「もしも明日が」とか、リコーダーが似合うっちゃ似合うけれどね…(汗
「モニカ」が2019年発売『歌謡ムード大作戦』の最後を飾る曲に選出された真意だけは、未だに理解できないのですけど。続編選曲のチャンス未だに待っております…