黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

ミックス違いの甘い罠

ミノルフォン RM4T-7001 

‘72最新ヒット歌謡 AUTUMN

発売: 1972年9月

ジャケット

A1 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅼→22/3/14

A2 心の痛み (朱里エイコ) 🅸

A3 夏の夜のサンバ (和田アキ子) 🅳

A4 旅路のはてに (森進一) 🅸

A5 どうにもとまらない (山本リンダ) 🅳→22/3/14

A6 BABY (平田隆夫とセルスターズ) 🅴→22/3/14

A7 せんせい (森昌子) 🅳→22/3/14

B1 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅻→22/3/14

B2 素足の世代 (青い三角定規) 🅵

B3 雨 (三善英史) 🅳→22/3/14

B4 鉄橋を渡ると涙がはじまる (石橋正次) 🅷

B5 芽ばえ (麻丘めぐみ) 🅷→22/3/14

B6 あなただけでいい (沢田研二) 🅴→22/3/14

B7 旅の宿 (吉田拓郎) 🅽→22/3/14

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ

編曲: 土持城夫

定価: 1,800円

 

今回もブルーナイト・オールスターズ、ありますよ…しかし、14曲中9曲が既に語った2枚組に再収録されている。5曲だけじゃ萎えるな…と思いきや、まさかの落とし穴があった。

これはいつものKC品番ではなく、4チャンネルレコード用に特別設定された規格でリリースされたQUAD MIX盤。しかし、ブルーナイトに関する限り、これだけで打ち止めになっている。RM方式を採用して、通常のステレオでも聴けることを強調しているのを見過ごしていたら、ビクターのCD-4盤みたいに普通に聴けないじゃんとスルーしていたに違いない。レーベルも特殊だし、特別感は出したかったのだろうけど、東芝のゴールデン・サウンズ盤みたいに価格的に高貴な方向に持っていっていないし(それでいいのだ。東芝は自社のデコーダーを売りたかった故、そうしたのだろうな)。

とはいえ、季節ものシリーズの1枚故、他の盤と均一性を持たせることが命にもかかわらず、細かいことが気になる体質をのっけからくすぐってくれるのだ。「京のにわか雨」1曲だけでもそれは明白。先述した2枚組、KC-7007Sに収録されたヴァージョン(そっちの方が2ヶ月後の発売)が、完全に4チャンネル対応ではない別ミックスになっているからだ。そっちのミックスでは、イントロのギターが左に、京琴が右に固定された、いわゆる「ハードパン」状態になっているし、バックのオルガンも奥深いポジショニングでありつつ、それほど広がりがない音。対して、この盤ではハードパンではなく、逆相気味の真ん中寄りになっていて、4チャンネルデコードするとはっきり左か右に寄って出てくるはず。オルガンも引っ込み気味で、こちらは4チャンネルだとリアから出てくる感じか。バンド全体の音もライヴ感やや増し。マルチ録音をどうまとめるかで、両者の間に差が出てくるようだ。残る8曲も聴き比べたいけど、キリがない。ただ、ギターフレーズが違うとか、そこまでの差はないだろう。ただ、2チャンネルミックスの方が落ち着いて聴けるのは確か。残る5曲もステレオミックスがあって、テープで出てたりするのだろうか…気にせず聴けば、別に違和感ないのだけど。「夏の夜のサンバ」はファズが焼け付き、全歌無ヴァージョン中でも最もハッシッシー度が高い(爆)。「旅路の果てに」も何気にサイケ感があるし、B面には他社に必殺ヴァージョンがある曲が並んでるけど、ブルーナイトならではの付き合いやすさで「これも悪くないな」と思わされる。「素足の世代」の2番の鍵ハモなんて、マキシムヴァージョンのリコーダーに負けてない純情サウンドだし。 間奏で守りに入ったプレイをしているのもツンデレ感がある。秋に向けて出されたとはいえ、雰囲気的には5年遅いサマー・オブ・ラブの色が漂ってくる1枚。