黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その50: 君がしたかったのは借金アップだろ(違

CTA ST-8085 (8トラック)

ポップス・ゴールデン・パレード

発売: 1977年

ジャケット

1-1 ソロモンの夢 (レーモン・ルフェーブル) 

1-2 哀愁の南十字星 (セバスチャン・ハーディー)

1-3 ホテル・カリフォルニア (イーグルス) 🅱

1-4 愛の涙 (?) 

2-1 星空のふたり (マリリン・マックー&ビリー・デイヴィス・Jr.)☆

2-2 夜明けのカーニバル (ポール・モーリア)

2-3 悲しみのバラード (エルトン・ジョン)☆

2-4 白銀のテーマ (バリー・ホワイト)

3-1 告発 (?)

3-2 ファンキーでいこう (KC&サンシャイン・バンド)☆

3-3 オウン・ウェイ (フリートウッド・マック)

3-4 反逆のテーマ (リズム・ヘリテッジ)

4-1 カリブの夢 (オリエンタル・エクスプレス)

4-2 回想 (スティーヴィー・ワンダー)☆

4-3 ソウル・バンブル・ビー (ウォルター・マーフィー)

4-4 ムーヴィン (ブラス・コンストラクション)

 

演奏: ニュー・サウンズ・オーケストラ (☆: 歌入り)

編曲: 無記名

定価: 2,000円

 

「歌謡フリー火曜日」までもを蝕む8トラック・シンドローム。これも辛うじて、最後まで再生してくれました。現在もサブスクに音源提供したりして健在のCTAレーベルに残された、77年のヒット洋楽カバー盤。ケースを見た限りだと、歌入りか歌無しか読めないし、元々インストの曲もいくつか入っているけど、いずれにせよ歌入りでもネタ要素が高そうな曲が目白押しだから、決して損はしないだろうと。案の定、いい意味でノックアウトされました。ただ、「愛の涙」「告発」のオリジナル・アーティストが調べられなかった。原題や作者名がクレジットされていれば助かったのだけど。前者はソウル・バラードっぽい。後者はハイテンポのディスコ・ムード音楽で、クラが奏でる主旋律が歌謡曲っぽい。所謂ラブ・サウンズのアーティストにしたって、新曲は出ていたけど、77年にもなるとディスコやフュージョンに食われ、トレンディな色がほとんど失われていたし。

のっけは大御所、レーモン・ルフェーヴルの曲で、流暢なストリングスが入ってガチなサウンド。ジャンク8トラノイズがなければ、使用に耐え得る(最初に取り上げた山内さんのホメロス盤に比べると、マスタリング技術が進化したのか、S/N比も優秀)。それに続くのは、なんと当時ユーロプログレ勢の新勢力として密かに人気があったセバスチャン・ハーディー(出身はオーストラリア)の曲。オリジナルは21分に及ぶ組曲の1部だったが、この選曲にはおったまげましたよ。最初邦題を見た時は、グレン・キャンベル「哀愁の南」の方かと思ったし(こちらもアラン・トゥーサンの曲だし、気になるけど)。マリオ・ミーロに負けない熱いギターソロが展開されていて、正に新しいラブ・サウンド。これだと「イースターのスイカ」もいけそう。

その後問題作ホテル・カリフォルニアが来るが、ここで正統派歌無歌謡ヴァイブがやってきて安心する(爆)。リズムの組み立てなど、オリジナルを完璧に脱構築してるし、ハーモニカの音が73年頃のフォークの色を現出させる。これで歌が入れば、完璧に腰砕けネタになるんだけどね。そんな歌入りのナンバーがここに4曲収録されているけれど、案の定、破壊力半端ない。「星空のふたり」は歌の上手いシンガー二人ががんばっている感じに過ぎないけど、「悲しみのバラード」はまじで笑うしかない。いきなり「わらわらがらどぅー」だもんな。84年頃のトシちゃんとマッチの中間っぽい歌い方で、Z級パチ歌謡以上の聴く笑撃ガス度。淡白ながらリリカルなサウンドとの落差もなんとも言えないし。もちろん「回想」はそれを凌ぐ。恐らく同じ人が歌ってると思われるけど、無駄に力が入った歌唱に、バランスが悪いサウンド。やはり、エルトンやスティーヴィーが相手となると、しょうがないのだな。もう一つの目玉曲「オウン・ウェイ」は歌入りではないが、これは笑うしかない、大丈夫かとしか言えないアレンジとサウンド。その後47年間、驚異の生命力を持続させる『噂』の誕生ドラマと運命を、当時のパチテープ制作陣は知っていたのだろうか…「ファンキーでいこう」ももしやスウィートの “Funk It Up (David’s Song)” かと思って期待したけど、KCの方でした。その曲の邦題は厳密には「ファンクで行こう」なんですけどね。

ここには入っていないけど、この時期のクイーンの曲「愛にすべてを」には、まじで酷い歌入りパチヴァージョンがあることも追記しておきます。いずれにせよ、この頃の洋楽には思い入れ半端ないですからね。パンク台頭寸前とはいえ、ちゃんと聴いてはいたからね。