コロムビア KZ-7143
ヤング・ヒット・ポップス WOMAN-Wの悲劇より-/飾りじゃないのよ涙は
発売: 1984年12月
A2 飾りじゃないのよ涙は (中森明菜)Ⓐ
A3 北駅のソリチュード (河合奈保子)Ⓐ
A4 哀愁情句 (早見優)Ⓐ
A5 天国にいちばん近い島 (原田知世)Ⓐ
A6 十戒(1984) (中森明菜)Ⓑ 🅰→23/11/18
A7 DREAMING GIRL 恋はじめまして (岡田有希子)Ⓐ
A8 ヤマトナデシコ七変化 (小泉今日子)Ⓐ 🅰→23/11/18
B1 ハートのイヤリング (松田聖子)Ⓐ
B2 ラストシーンは腕の中で (田原俊彦)Ⓑ
B3 永遠に秘密さ (近藤真彦)Ⓑ
B4 雪にかいたLOVE LETTER (菊池桃子)Ⓐ
B5 最愛 (柏原芳恵)Ⓑ
B6 哀しみのスパイ (小林麻美)Ⓑ 🅰→23/11/18
B7 ニュアンスしましょ (香坂みゆき)Ⓑ 🅰→23/11/18
B8 べらんめえ伊達男 (シブがき隊)Ⓐ
演奏: コロムビア・ポップス・オーケストラ
編曲: 前田俊明Ⓐ、大川友章Ⓑ
定価: 2,000円
84年2作出された「ビート・ポップス」シリーズの2作目(昨年11月18日紹介)の翌月に早々と一挙5作リリースされた「NEW B.G.M. SPECIAL」の1枚。昨日述べた通り、サザン、谷村新司、松田聖子の曲に的を絞った3枚と、大まかにニューミュージック編とアイドル編に分けられるヒット曲集2枚から成っていて、アーティスト編の3作は早々とCDがリリースされている。まだまだCDが普及したと言えない時期だっただけに、この試験的試みはどう受け取られたのだろうか気になる。当時のコロムビアは河合奈保子のCDをロングボックスに入れて出したり、結構手探り状態で色々やってましたからね…
アイドル編と言えども、この頃になるとニューミュージックとほぼ平行線というか、もう1枚の方は冒頭からチェッカーズ、吉川晃司、SALLYの曲だし、こちらにはユーミン、井上陽水、高中正義、竹内まりや、佐野元春、山下達郎、中島みゆき、玉置浩二、epoの作品が収録されてますし…80年代前半デビューのアイドルの曲も、この頃になると大人っぽさを帯びてきたというか、歌無ヴァージョンで聴くと落ち着いた雰囲気しか伝わってこない。インスト・ヴァージョンだとどっちもどっちというか、でもさすがに「最新歌謡ヒット」というニュアンスじゃなくなってきてます。曲によっては初々しい演奏でアイドル的タッチも出ているし、やはり音大生バイトが相当数現場に流れ込んで来てるのでしょうか。B面冒頭の3曲など、ものの見事にポップスの主流という感じに昇華されているし、というかシティポップそのものでは(汗)。「ラストシーンは腕の中で」は洋楽のカバーだけど、調べてみたらスコット・ベーオが82年に出したアルバムに入ってるとか。一部好き者の間では、ジャケットが『スリラー』にほんのちょっと先駆けていたけどそっくりなアルバムとして有名(本人も「最大の違いは、僕のアルバムが全然売れなかったこと」とSNSでネタにしていた)。これと達郎作品「永遠に秘密さ」が続くのですから。トシちゃんとマッチの曲だなんて、全く認識できません。シティポップのより正流として再評価が高まる桃子の「雪に書いたLOVE LETTER」のフルートは純情な響きではあるけど、桃子にしては大人っぽすぎるかも。パンフルートが丁度良かったかも。全体的に大胆さを敢えて出さず、落ち着いた演奏で観光の邪魔もしません。
この調子でより落ち着いた路線に歌無歌謡も導かれるのかなという予感が貫いた(かもしれない)1985年を、突然のおニャン子台風が襲います。リアルタイムで自分がどう対処したかは、今更振り返りませんが(というかあの年は、スクリッティ・ポリッティやプリファブ・スプラウトを熱心に聴くので精一杯だった一方で、本田美奈子や芳本美代子の登場に心躍っていたのだ…それ以上は言いません)、今振り返れば歌無歌謡制作陣が萎えるのもしょうがないのです。あの感覚を、歌詞と歌唱がない音楽表現で再現するのなんて不可能だし、それをやったとしても、ファンもアンチもついてこないのは目に見えてましたから。
今振り返れば、その後2年間、オリコンチャートの1位を週替わりの祭りに導いたおニャン子関係楽曲の音楽的なメリットに、別の面から光を当ててやるのも可能かなと思えるようになりました。それこそ旋律と演奏だけでも成り立つヴァージョンは、いくらでもできると思いますよ。近年のアイドル楽曲なんかに比べたら、なんて心ときめくのでしょう…リアルタイムヴァージョンに恵まれなかった哀しみを、なんとか解消してあげたい。