黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その51: ビートルズで踊る資格とは

東芝 TP-60227~8

今宵踊らん/ビートルズで踊ろう

発売: 1977年

ジャケット

A1 エスタデイⒶ 🅷

A2 涙の乗車券Ⓐ 🅳

A3 ガールⒷ 🅳

A4 プリーズ・プリーズ・ミーⒷ 🅱

A5 シー・ラヴズ・ユーⒷ 🅴

A6 オール・マイ・ラヴィングⒶ

A7 抱きしめたいⒷ 🅴

B1 アンド・アイ・ラヴ・ハーⒷ 🅵

B2 すてきなダンスⒷ

B3 アイ・ニード・ユーⒶ

B4 ペニー・レインⒶ 🅱

B5 フール・オン・ザ・ヒル 🅵

B6 キャント・バイ・ミー・ラヴⒶ

B7 オブラディ・オブラダⒷ 🅶

C1 ミッシェルⒸ 🅴

C2 ヘイ・ジュードⒸ 🅵

C3 ア・ハード・デイズ・ナイトⒸ 🅳

C4 ヘルプⒸ 🅲

C5 エリナー・リグビーⒸ 🅲

C6 ユア・マザー・シュッド・ノウⒸ

C7 デイ・トリッパー Ⓒ 🅴

D1 レット・イット・ビーⒶ 🅶

D2 オー・ダーリンⒶ

D3 ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロードⒸ

D4 サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド

D5 ヒア・カムズ・ザ・サン

D6 ア・デイ・イン・ザ・ライフⒷ

D7 サムシングⒸ 🅲

 

演奏: 奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ

編曲: 山本有信Ⓐ/五十嵐謙二Ⓑ/高野志津男Ⓒ

定価: 4,000円

 

ビートルズで始まった今回の復活月間(+1)、計ったようにビートルズで幕を閉じることに。その間に取り上げたアルバムにも、ビートルズ関連の曲が多く登場していたし、なんか運命的な展開になりましたね。本来は別の「今宵踊らん」シリーズのアルバムを用意していたのですが、今年に入って間もなくこのアルバムを見つけ、3ヶ月ルールはクリアしてるわけだしと、こちらに差し替えることにしました。

 

主に稲垣次郎氏を偲ぶため、ビートルズ・カバー・アルバムを引っ張り出して、3月31日に更新できるよう準備を整えている間に、ネット上でビートルズ周辺が大騒ぎに。そりゃ、ある種の人々を挑発するような言葉が飛び出したら、その対象でなくとも感情が荒ぶりますわな。特に自分は、ビートルズ以外のとあるアーティストに関してその発言主から多大な啓蒙を得たと思っているので、余計複雑な気分になりましたよ。と思ってたら、今度はそのアーティストの日本に於ける権威の一人であろう方の訃報が伝わってきて、さらなる感情の揺さぶりに襲われましたよ。他にも、なんか音楽や芸術表現、ジャーナリズムを取り巻く荒れた雰囲気がネット上に充満した1ヶ月間でした。それも、政治とか世界情勢と全く関係がない部分で(あ、YOASOBIの例の件は別としてですが)。そんな中、よく細々と歌無歌謡のことを1ヶ月間語れたと思います。ニッチなジャンルだからこそ、その手の渦に溺れにくいのでしょうか。確かに、際どいジャケットの盤はたくさんあったけど。あれはあれ、昔のことだからと、今を生きる人は黙認してるのでしょうか。

こんなまったりしてるわけにいかない、他にやらなきゃいけないことがあるからと、気軽な気分でこの「今宵踊らん」を流し始めましたが、やはりこのシリーズ、じっくり考えを委ねることなんか許してくれません。1曲目が「イエスタデイ」なので、ここはまったりロマンチックにチークモードなんだろうなと想像していたら、鮮やかに裏切られました。このシリーズを10作以上聴いた人でないと、怒りに燃える可能性さえありますからね。どの曲も「今宵踊らん」の黄金律に乗じて、有意義なふれあいを演出することを優先したアレンジ。やはり、当時30代あたりに差し掛かった現役世代を、ピンポイントで狙ったのでしょうか。「Exotic Beatles」シリーズに収められていたフラメンコ・ヴァージョンを彷彿とさせる「オール・マイ・ラヴィング」とか、一瞬「時の流れに身をまかせ」が始まったのかと思わせる「ペニー・レイン」、意外にもサザエさんEDモードに走っている「フール・オン・ザ・ヒル」「サムシング」など、見事な変貌技の連続。「アンド・アイ・ラヴ・ハー」など、映画「AHDN」の関係曲はサントラ・ヴァージョンのアレンジに近くなっており、マニアックなくすぐりもあるけれど、その曲でのラブラブモード誘発はむしろここでは異色。「エリナー・リグビー」も9日取り上げた盤と好対照な、告別式で踊るような感じになっているし、その雰囲気そのままに「ユア・マザー・シュッド・ノウ」が始まるからびっくりだ。ここではみんな、胸に黒薔薇を挿しましょう(汗)。アゲアゲなタンゴアレンジの「レリビー」には悲愴感が全くないし、それ以上に「ロング・アンド・ワインディング・ロード」はにこやかな気分を誘発する。翌年の映画化を見越して選曲したのか、『サージェント』関係の2曲もごらんの通り。「久美子のコンサートへ」ほどの腰抜け状態には及ばないものの、この調子でアルバム全曲やってほしかったと切望させる。まったりしたムードの中にちゃんと緊張感も生かされている「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」で締めるわけにはいきませんでしたね、やっぱり。43秒間繋いだ両手を大空にモードで締めくくってほしかった(爆)。

この選曲で「赤盤」並みに演奏時間が短いのですから、まったりするどころじゃありません。こういう盤を語れてこそ、ビートルズを解っていてよかったと思うのですよ。当然、このシリーズの価値に導いてくれた「歌のない歌謡曲」のおかげと添えなきゃいけないのですけどね。

 

あっという間の復活月間でしたが、「黄昏みゅうぢっく」としてしばらく潜伏期間に入る一方で、宗内世津の母体・丸芽志悟として、明日から始まる1年間があらゆる意味で「岐路」となるのを契機に、新たなネットコンテンツを始めることにしました。その内容に関しては、まだ詳しくは言えないのですが、スタート開始を予定している5月20日あたりに、このエントリのコメント欄にリンクを投下する予定ですので、歌無歌謡ファンの皆様にもどうか、見守って下さることをお願いします。さて、その前に重要な仕事が控えている。これが上がる頃には終わってると思いますが。「とあるアーティスト」へのリスペクトモードに戻らなきゃ。いずれにせよ、ネットコンテンツは金のためにやってるわけじゃないですから、何やってもいいのですよ(瀧汗)。活字コンテンツは…そうじゃないとは言い切れません(涙)。

 

最後に…君が音楽から受け取る波長は、君が生み出すステップに等しい(そしてジミー竹内の激しいドラムフィルに続く)。また逢う日まで