アポロン KSF-1389 (カセット)
ポップス&ニューミュージック ヒットメロディー20
発売: 1983年
A2 美貌の都 (郷ひろみ)
A3 1/2の神話 (中森明菜) 🅲
A4 心こめて愛をこめて (あみん) 🅱
A5 ピエロ (田原俊彦) 🅱
A6 速達 (ばんばひろふみ)
A7 セカンド・ラブ (中森明菜) 🅱
A8 初恋 (村下孝蔵) 🅱
A9 晴れのちBLUE BOY (沢田研二) 🅱
A10 ボディ・スペシャルII (サザンオールスターズ) 🅱
B2 ミッドナイト・ステーション (近藤真彦) 🅱
B3 う、ふ、ふ、ふ、 (epo) 🅲
B4 MY MARINE MARILYN (山本達彦) 🅱
B5 め組のひと (ラッツ&スター)
B6 通りすぎた風 (高田みづえ) 🅱
B7 19:00の街 (野口五郎) 🅱
B10 Sing A Song (松山千春) 🅲
演奏: ニュー・ポップス・オーケストラ
編曲: 無記名
定価: 2,500円
大団円(仮)を翌日に控え、やっとのことで老舗テープメーカー、アポロンが黄昏みゅうぢっくに初登場!歌無歌謡の歴史を語る際、このレーベルの業績を無視できますか。レコード「も」発売し始めたのは80年のことだが、それに至るまで日本の音楽テープ業界をポニーと共に支えた重要レーベルで、特に渡辺プロダクションとの提携で、レコード会社の壁を越えた夢の企画をコンスタントに市場に送り、ドライヴァーを中心とするテープ愛好者層の支持を着実に集めた。78年までは、それまで渡辺プロが資本提携していたワーナー=パイオニアとの強固な関係により、その豊富な洋楽カタログのテープ発売権を独占。クイーンのテープ独自企画『クイーンのすべて』など、伝説のリリースもいくつかあり。そんなこともあって、71~73年にはワーナー・ビートニックスの音源をテープで出していたけれど、それ以前とそれ以後に扱っていた歌無歌謡音源は独自企画中心で、他では聴けないものが多い。当然レコードやCDでは聴けないし、サム・テイラーや木村好夫のポニー録音みたいにサブスクに乗る気配もない。根気強くテープを探すしかないのだ。ありふれた音源のはずなのに、なかなか巡り合わないものである。そのうちのいくつかを、父のカーステレオやら他の機会に耳にした記憶はあるのに…
辛うじて、80年代のものが2本手に入ったが、3ヶ月ルールに則り、とりあえずこの83年版を紹介。ジャケ裏にも明記されている通り、ピュアカラオケ版が次の番号で同時発売されており、完全にカラオケ対応の伴奏があることを前提に作られた作品だけど、このメロディーの乗せ方を聴くとどこに需要があったのかという疑問が湧く。トップの「天国のキッス」、多少もたつき気味の演奏に、ちょっと色気を出してみましたという感じのサックスが被さり、場末絶頂期の歌無歌謡が放ったオーラは皆無。所々妙なコードが混じっている感触があり、カラオケ前提の割に気が抜けた感じが否めない。2コーラス目でサックスが大幅にメロディーを逸脱したアドリブを展開するのも落ち着かない展開で、やはり70年代の曲とは勝手が違う、ってイメージを助長する。2曲目、中島みゆき/筒美京平という異色コンビによる「美貌の都」も、メロディーを奏でるギターが色気出しすぎって感じだけど、クラリネットやアコーディオンが配されたバッキングや、間奏に登場するねーちゃんの声など安堵要素もあり。「心こめて愛をこめて」は、純情たっぷりの東芝盤には負けるが、アコーディオンが主旋律を奏で、はりきっている。「速達」なんて忘れていた曲だけど、プリンス「セブンティーン・デイズ」より…早いんだな(汗)。「晴れのちBLUE BOY」は、よくよく聴くとオリジナルのオケを流用してる。これはアポロンの特権だな…妙なコーラスが目立つポニー版とは一味も二味も違うね。主旋律を弾くギターが完全に負けちゃってるが。ナベプロ系の曲は今回これ1曲だけか…
このテープの珍演大賞は、悲しいけれど「時をかける少女」に決定。オリジナルのキーなのはいいけれど、ムーディに歌い始めるサックスが、Bメロが始まった途端やる気のない演奏に転じ興醒め。と思えば2コーラス目でアドリブかましに転じ、余計オリジナルの美学を破壊している。フルートかリコーダーで演った方がよかったのに…やっぱ、駆け出しの頃から原田知世は非凡な歌手だったことを、改めて再認識。フュージョン志向のメロディーこなしと不釣り合いな「カラオケ前提」アレンジが歌無歌謡のカラフルなパレットを奪っていったのかと、しみじみ悲しい気分にさせる1本。74~79年のアポロンのテープ、情熱の限り探していきますので高騰化はやめてね(汗)!