黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

小田啓義さん (ブルー・コメッツ)の誕生日は12月23日

コロムビア JPS-5190

華麗なるピアノ・ヒット14 雲にのりたい/天使のスキャット

発売: 1969年10月

ジャケット

A1 雲にのりたい (黛ジュン) 🅺

A2 禁じられた恋 (森山良子) 🆁

A3 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー) 🅸

A4 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🅽

A5 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🆄

A6 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ) 🅶

A7 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅻

B1 天使のスキャット (由紀さおり) 🅵

B2 フランシーヌの場合 (新谷のり子) 🅻

B3 涙の糸 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅴

B4 粋なうわさ (ヒデとロザンナ) 🅺

B5 涙のびんづめ (伊東きよ子)

B6 七色のしあわせ (ピンキーとキラーズ) 🅽

B7 涙の中を歩いてる (いしだあゆみ) 🅼

 

演奏: テディ池谷クインテット

編曲: テディ池谷

定価: 1,500円

 

「愛して愛して」「雲にのりたい」は、やたら歌無歌謡アルバムのタイトルに採用されがちな曲だ。今振り返ってみれば、比較的地味でアーティストの代表曲とは言い難い曲だし、後者が長山洋子にカバーされてからも36年経っているし…大衆的物差しからすれば、お客さんを引き寄せやすい効果があったんでしょうとしか推測できない。前者は今日取り上げる盤で12ヴァージョン目、後者も11ヴァージョン目である。この頃がやはり、歌無歌謡史上最も激しい激突が起こった時期と言えそうだ。

クラウンの『あなたと夜とミュージック』シリーズでお馴染みテディ池谷氏がコロムビアに残した、同一路線ながら多少洗練度を高めた1枚。筒美京平氏の『ヒット・ピアノ・タッチ』に真っ正面から挑んだ、ガチながらも癒しの要素を感じさせるアルバム。ラテン・サウンドを基調に、ホテルの最上階のラウンジのムードを充満させる音作りに、大ヒット曲のメロディーがすっぽりはまる。これは車の中で聴いちゃいけない音楽だ。SSS方式の恩恵を受け、ピアノのサウンドは完璧にステレオ対応、臨場感が抜群。息吹きまで伝わってきそう。「禁じられた恋」もこじんまりまとまっているなと思いきや、キハーダはちゃんと使っているし、「白いサンゴ礁もラウンジに冴える巨大な水槽の図が思い浮かぶ演奏だ。「或る日突然」に至っては、これで21ヴァージョン目…各レコード会社に2ヴァージョン以上、確実に存在した計算になる。筒美ヴァージョン以上に突っ走っている「粋なうわさ」は意外。どの曲も高貴さを漂わせながら、ちゃんと歌謡の強靭な基本に誘ってくれる好解釈だ。こんな演奏を、昨今の若手ガチ勢は果たして聴かせてくれるんでしょうか…それはそれで、間違った類の聴衆しか獲得しかねないけれど(瀧汗)。

さて明日は、いよいよ冒頭で述べた2曲に過激な解釈を加えたあのアルバムが遂に登場します…乞うご期待。