黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

唇よ熱く笛を弄れ

コロムビア HS-10009-J

ニュー・ヒット14/ラテン・フルート

発売: 1969年10月

ジャケット (裏)

A1 今日からあなたと (いしだあゆみ) 🅸

A2 恋の奴隷 (奥村チヨ) 🅽

A3 わかれ雨 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱

A4 昭和ブルース (ブルーベル・シンガーズ) 🅴

A5 禁じられた恋 (森山良子) 🆆

A6 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ) 🅺

A7 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🆈

B1 おんな (森進一) 🅻

B2 真夜中のギター (千賀かほる) 🅳

B3 夜の柳ヶ瀬 (カサノヴァ7) 🅳

B4 天使のスキャット (由紀さおり) 🅶

B5 港町ブルース (森進一) 🆅

B6 どしゃ降りの雨の中で (和田アキ子) 🅲

B7 みんな夢の中 (高田恭子) 🅼

 

演奏: ホセ・ルイスとロス・ルンべロス

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

今までも通算16回、「フルート」タグをつけたエントリがありましたが、100%フルートをフィーチャーした歌無歌謡アルバムを取り上げるのはこれが初めて。まぁ、隅から隅まで探せば、10枚位はフルート歌無歌謡アルバムがあると思うのですが。大体サックス・プレイヤーがちょっとだけ演った盤に限られてしまうんですよね。意外と味があるからそれもいいんですけど、ガチフルート奏者の立場がなくなってしまうじゃん…ついでに言えば、72年以前のアルバムでリコーダーやオカリナが使われている場合も、大抵はサックスやクラリネットがメインのプレイヤーが演っていると想像していいかも。一昨日のアルバムの「雨のフィーリング」なんて、メイン楽器の傾向が全然違う人が出した音というニュアンスしかないし。ガチリコーダーの人がいたとしても、「歌謡曲なんて演ってられますか」なんて態度だったかもしれないし。昨今のガチな人が、積極的に「演ってみた」に挑んでいるのと対照的。まぁ、ガチ楽器アピールの一環なんでしょうけどね(汗)。どうせ演るなら、昭和歌謡をお勧めしますよ。特に70年代前期のマイナーアイドルの曲を(瀧汗)。

ここでのフルート演奏は、ラテン・パーカッションを賑やかにフィーチャーした派手な音作りの中を華麗に舞っている感じ。ジャジーなアドリブも随所にかましており、そっち系のバックグラウンドがあるプレイヤーが「ホセ・ルイス」の仮面を被ってるのだろうと想像できます。力みがちのプレイに走っても、純情が見え隠れ。演る人の息に「乙女心」を潜ませる魔法の杖。それを活かすのに有効な名メロディーの応酬。昨日取り上げたスチール・ギターのアルバムと8曲も重なっているけれど、いずれにも全く対照的なカラーを投影している。賑やかなカーニバルを横目で見ながら、ひと気のない公園でこっそり逢い引き。そんなニュアンスがある。特に凄いのが「わかれ雨」。この2日間の更新で連続登場するまで、1度も出てこなかったクール・ファイブの第2弾シングル曲だが、ヘヴィなグルーヴがオリジナルのニュアンスを劇的に崩壊させ、『クレイジー・パーカッション』とコロムビア・ニュー・ビートの荒川康男アレンジ曲の中間点という感じの仕上がり。こんな派手な音の渦に埋れず、ムーディに盛り上げるフルートが魅力的だ。「昭和ブルース」も絶望感が軽減され、レゲエを先駆するようなリズムにフルートが美麗に舞い上がる。思わずソフトロック感が現出してしまう港町ブルースも拾い物。

こんなフルートがキマったアルバムのジャケットにこの写真持ってきていいんですか…花をあしらう位置が意味深ではありますが、ということで裏を載せますが、内ジャケの曲目表示の箇所にチラッと顔を出す女子の顔が一番フルートっぽいのが皮肉でしかありませんね(瀧汗)。

 

というわけで明日からは、昨年に引き続き年末恒例の「アレ」をやります。個別にアルバムを聴くより遥かに面白いのではないか、と個人的に思う「全ヴァージョン総括大会」!その調査中、ヴァージョンカウントミスがいくつか発覚したり、まさかのヴァージョン被りを発見したり…最終的結論は、こっそり進めている「歌無歌謡ジュークボックス」の構築が完了するまで下せないのですが、とりあえずのところは過去のエントリの修正など行わず、来年以降の更新でこっそり改めていければと思っています。

一件だけ、21年6月17日に取り上げた『ニュー・ヒット歌謡14 十五夜の君』と、昨年2月15日取り上げたカセット『ティーンエイジャー編 最新歌謡界速報!!』に共通している5曲、「十五夜の君」「色づく街」「胸いっぱいの悲しみ」「ひとりっ子甘えっ子」「草原の輝き」のヴァージョンが同じだったのに吃驚しました。この手のヴァージョン被りと縁がなかったはずのテイチクと、マイナーレーベルのカセットにヴァージョン被りがあったなんて…恐らく、前者盤の八代亜紀の2曲以外、外部制作原盤をリースして収録したという事情は考えられますが、1年前まで歌無歌謡乱発の王者だったテイチクとは思えない…ちょっと前のカセット聴取環境であれば、決してこの事実に気づくことはなかったと思います。やっぱ、耳が肥えた効果はありましたね(汗)。