キャニオン C-1032
ダブル・ドラム
発売: 1971年8月
A1 砂漠のような東京で (いしだあゆみ) 🅵
A3 ふたりだけの旅 (はしだのりひことクライマックス) 🅶
A4 太陽のかけら (美樹克彦) 🅲
A5 暗い港のブルース (ザ・キング・トーンズ) 🅱
A7 さらば恋人 (堺正章) 🅳
B1 サインはピース (オーシャン) 🅱
B2 明日への願い (リンゴ・スター) 🅲
B3 ブラウン・シュガー (ザ・ローリング・ストーンズ) 🅱
B4 さすらいのギター (小山ルミ) 🅺
B5 トラ・トラ・トラ (ザ・ベンチャーズ) =異国のひと (小幡圭子)
B6 喜びの世界 (スリー・ドッグ・ナイト) 🅲
B7 美しき人生 (ジョージ・ハリスン) 🅱
演奏: 長芝正司、小津昌彦/キャニオン・ポップ・サウンズ
編曲: 中島安敏
定価: 1,500円
昨年11月9日に第2弾を紹介した『ダブル・ドラム』シリーズの第1作。何せまだ発足から1年経っていなかっただけあり、帯裏にはそれまでのキャニオンのアルバムリリースがずらっと表記されている(「小鳥のシンフォニー」は密かな愛好盤)。やはり新規発足メーカーは冒険がお好きというか、今時の音楽業界ではあり得ない発想が窺い知れますね。フリージャズ+ポエトリーリーディングを実践した近藤正臣「植物誌」なんか、公式な再評価が望まれます(3000番台のためか、この帯裏には載ってない)。そしてやはり、ドラムセットを2組バトルさせるというアイディアも、新規メーカーだった故か。
なんか断片化解消されてないというイメージしか抱けなかった第2作に比べると、意外に違和感なく聴けるというか、成功してる感じですね。二人のドラマーの画像も裏に載せられていますが、いずれも実態のあるガチプレイヤーという印象。やはり半分を洋楽にしているという構成が、違和感を感じさせない原因なのでしょうか。オープニングの「砂漠のような東京で」から、骨格丸出し、原曲の要素を極限まで端折った演奏で挨拶がわりといった雰囲気。笛を使いながらも相当爆走しているジミー竹内ヴァージョンもいいですが、それに挑戦状を叩きつけてる感じ(あとやっぱり「雨のバラード」を幻聴してしまう…)。そこから「わたしの城下町」に導かれますが、こちらも骨格丸出し。しかも「間奏メロ」で演奏されてるし、この意表の突き方にはやられます。さすが中島安敏というか。A面最後の筒美名曲2連発もそこまで違和感なく、健闘が感じられます。「また逢う日まで」はなんか変わった形の「自社推し」ですね(当時ズー・ニー・ヴーはキャニオンに移籍してました)。
B面の洋楽サイドもそれなりにがんばっていて、シカゴ11のヤバすぎヴァージョンと違い忠実なこなしでリンゴへのリスペクトが光る「明日への願い」とか、ベンチャーズ歌謡インスパイヤ路線の自社推し曲(ならばそのタイトル「異国のひと」を採用して欲しかった)となった「トラ・トラ・トラ」(解説ではベンチャーズの作品とされてますが…ジェリー・ゴールドスミスを怒らせると怖いですよ…)なども聴き物ですが、奇遇にも「トップ・オブ・ザ・ポップス」収録ヴァージョンと同じ響きの笛を持ち出してきた「喜びの世界」に耳が止まります。アレンジとか全然違うのに、同じ奏者を起用したんでしょうかね。ミステリーだ…さすがに「美しき人生」あたりに来ると疲労が見えてきたのか、左右のチャンネルに分かれたドラムの演奏から調和感が薄れていて、次作の「違和感」の兆しも少々。やはりジョージの曲に激しいドラムは無茶がありますね。
ちなみにジャケットを飾る女性は80年に出したシティポップ名盤「スマイル」で知られるジュディ・アントン。13歳の頃から日本で芸能活動をしていたそうで、このジャケット撮影当時は22歳。純粋なオリジナル供給画像なんですね。