黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

錦野旦さんの誕生日は12月14日

キャニオン  C-3015

オール・ビッグ・ヒット・ベスト20

発売: 1972年11月

ジャケット

A1 あなたに賭ける (尾崎紀世彦) 🅷

A2 花は流れて (藤圭子) 🅲

A3 哀愁のページ (南沙織) 🅽

A4 死んでもいい (沢田研二) 🅴

A5 夜汽車の女 (五木ひろし) 🅸

A6 雨 (三善英史) 🅴

A7 めぐり逢う青春 (野口五郎)☆ 🅴

A8 白いラブレター (布施明)

A9 折鶴 (千葉紘子) 🅳

A10 春・夏・秋・冬 (後藤明) 🅱

B1 喝采 (ちあきなおみ) 🅸

B2 狂わせたいの (山本リンダ)☆ 🅸

B3 友よ (大和田伸也)

B4 陽のあたる場所 (奥村チヨ) 🅳

B5 虹をわたって (天地真理) 🅼

B6 孤独 (和田アキ子) 🅲

B7 耳をすましてごらん (本田路津子) 🅳

B8 京のにわか雨 (小柳ルミ子)☆ 🆀

B9 夢ならさめて (にしきのあきら) 🅲

B10 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅾

 

演奏: キャニオン・ポップ・サウンズ

編曲: 小杉仁三、馬飼野康二(☆)

定価: 1,800円

 

先週水曜が泉谷しげる氏の誕生日だったので、その日にこのLPを持ってくればよかったじゃんと一瞬悔やみそうですが、この「春・夏・秋・冬」は泉谷の曲ではありません。72年9月25日に出た「春夏秋冬」はオリコン最高46位を記録していますが、その20日前にビクターから出た後藤明の「春・夏・秋・冬」は31位まで行っており、発売したキャニオンにとっては間が悪かった。まぁ、タイトルの読み方は違うし、音楽的に全くタイプが違うから、干渉し合うことはなかったけれど、「春・夏・秋・冬」の方を歌無盤に入れる決断をしたキャニオンの胸中は複雑だったでしょうな。今ではこっちの曲の方が、手軽に聴ける曲ではなくなってしまったけれど。オリジナルは深町純アレンジでなかなかピースフルな曲です。ここでもいい感じで再現していて、ミノルフォンのリンダリベンジのような悪意は感じられない(汗)。

強烈なレーベルカラーを打ち出すことはしていないけど、若い会社だけあって若さと勢いで20曲押し通すキャニオンらしい1枚。ジャケットのポップさもいいし、なんか80年代中期以降のポ二キャンが醸し出していた、エセ文化系でいきましょうみたいなところがないのがいいですね。大和田伸也のレアな歌手デビュー曲(奇遇にもこちらも有名フォーク曲と同名異曲だが、チャートインしていない)「友よ」を除くと、競合ヴァージョンの多い曲ばかりで特色を探すのに一苦労だが、フレッシュという要素はメリットと呼びたいところ。「夜汽車の女」は毒々しさが抜けてはいるものの、かなりロック度が高い演奏だし(ただエンディングはめちゃ目先を失っている感じに聴こえる)、「哀愁のページ」は落ち着いていて美しい演奏。こちらは逆にイントロ前半が残念。ただ、「雨」はビクターの大正琴ヴァージョン、「孤独」はワーナーのSOTWヴァージョンと、決定版に慣れすぎた耳には普通に聴こえすぎて物足りない。いずれも月並みな解釈ではないけれど。「白いラブレター」もあまり取り上げられてない曲だけど、布施明の曲の中ではソフトロック度が高い方で、ここでも好解釈。

馬飼野康二編曲の3曲だけカラーが違う演奏だが、ステレオ定位から判断するにこれらは『ダブル・ドラム』シリーズから持ってきたものだろう。特に「めぐり逢う青春」では、2台のドラムが勝手に自己主張する様子があまりにも可笑しく、よく聴くと同じようなマルチセッティングで録った2台のドラムを、チャンネルを逆にして定位したような響きだ。完全モノ定位で左右に振り分けた方が、落ち着いて聴けるのだけど。「ブラック・イズ・ブラック」化した「京のにわか雨」も異色。ドラムが走りすぎるせいでブラスがめちゃフライングしているところもあって、余計おかしい。このシリーズの1枚、箱買いで手元に来てやったと思い、盤を出したら全然違うものが入っていました(爆)。1枚通して聴いたら相当疲れそう。ラスト2曲も、ドラムは1台だけ右に固定するに留まりながら、このまま暴走するイメージで貫き通す。こんな感じでNAV時代まで駆け抜けて欲しかったです…

どうせなのでジャケットだけ載せます。