黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌を入れないことで問われるアイドル楽曲の真価

ビクター SJV-789

あなたが唄う 麻丘めぐみ桜田淳子ビッグ・ヒット

発売: 1975年

ジャケット(表)

A1 芽ばえ (麻丘めぐみ)Ⓐ 🅻

A2 悲しみのシーズン (麻丘めぐみ)Ⓒ 🅲

A3 森を駈ける恋人たち (麻丘めぐみ)Ⓑ 🅸

A4 女の子なんだもん (麻丘めぐみ)Ⓑ 🅸

A5 白い部屋 (麻丘めぐみ)Ⓑ 🅱

A6 わたしの彼は左きき (麻丘めぐみ)Ⓑ 🅸

B1 天使も夢みる (桜田淳子)Ⓐ 🅳

B2 天使の初恋 (桜田淳子)Ⓐ 🅲

B3 わたしの青い鳥 (桜田淳子)Ⓐ 🅴

B4 花物語 (桜田淳子)Ⓒ 🅴

B5 黄色いリボン (桜田淳子)Ⓓ 🅴

B6 三色すみれ (桜田淳子)Ⓒ 🅲

 

演奏: ビクター・オーケストラ

編曲: 高田弘Ⓐ、筒美京平Ⓑ、あかのたちおⒸ、森田公一

定価: 1,800円

 

4月7日に紹介した「チェリッシュ・ラブ・サウンドスペシャル」はインストカバー盤の皮を被ったオリジナル・インスト・ヴァージョン堪能盤で、筒美京平ファンにはたまらないブツでしたが、こちらは正真正銘のカラオケユース盤。ビクターなので当然オリジナル・トラックで統一されており、たまらない予感…と同時に、あの名盤「さわやかなヒット・メロディー」の再来を予感させ萌えまくりなんです、針を下ろす前から…とは言え、ジャケット完全腐食状態のブツが届き、中から出てきた歌詞カードは全然違う盤のもの。奇遇にも「悲しみのシーズン」「白い部屋」が収録されているアルバムの付属物だったんですが、これは元の持ち主というより管理者の責任かな…まぁ、盤の方は辛うじて使えるものだったので、よしとしましょう。

まずはめぐみさんサイド。所謂「純カラ」ではなく、参考程度にフルートによる主旋律を入れており、歌う人には親切な仕上がり。そのフルートの音色もそこまでガチプレイヤーっぽくなくて、アイドル予備軍の性格に寄り添うというか、そこがたまらなく魅力的なんですよ。音大生バイトというより、幼少期からフルートを持たされてきた思春期のお嬢様、みたいな。そこが裏目に出ちゃった部分が「女の子なんだもん」にあるのですが。これは譜面を書いた人の責任かもしれません…1オクターブ下が見え隠れ、じゃなくて実際1オクターブ下の音を吹いていますので。それにしてもこの曲、オリジナルのトラックを聴くと余計凄さが堪能できます。特にドラムが凄い。こういうカラオケ盤は目から鱗ですね。ちなみにめぐみさんの主だった曲の純カラはボックス・セットでCD化されてますが、「芽ばえ」だけ現存してないようで、このアルバムのヴァージョンが流用されてるようです。蛇足ながらお姉さんの明美さんのシングル「愛のメロディ」は、純カラをB面に入れた仕様で、そこは先駆者的存在でしたね。まぁ、古巣のミノルフォンのことを考えるとそうでもないか…(汗)。

一方淳子さんサイドは、筒美曲がないことで期待度が薄まりはするけれど、それ以外の点でめちゃ気になる…主旋律は「天使の初恋」から「黄色いリボン」までピアノに譲っていますが、その方が彼女らしいのか何か。音の密度が濃く、バック・コーラスも重厚に入っているので、フルートじゃ役不足だったという判断でしょうか。そして、元の段階でリコーダー満載だった「三色すみれ」に行き着くのですよ。まさに花園です。この1曲で「さわやかなヒット・メロディー」を補填できます(汗)。やはり、カラオケのガイド・メロディーにはリコーダーは向いてないんだな、という結論に達しました。というより、昨今のアイドル曲を楽器で再現するのは無理…絶対無理…

ジャケット(裏)