黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

ゲストコメンテイター登場その4: 木山吉子の巻

Finger FC-2025 (カセット)

新曲歌謡速報

発売: 1975年

ジャケット(特別出演: AI生成による木山吉子のイメージ)

A1 あなたの私 (石川さゆり)

A2 なやみ (杉良太郎)

A3 北へ帰ろう (徳久広司)

A4 想い出まくら (小坂恭子) 🅷

A5 さようならこんにちわ (天地真理) 🅱

A6 リリー・マルレーン (加藤登紀子、他)

A7 なみだ心 (殿さまキングス) 🅳

A8 天使のくちびる (桜田淳子) 🅶

A9 考えさせて欲しいのよ (西川峰子) 🅲

A10 ふたりの旅路 (五木ひろし) 🅷

B1 時の過ぎゆくままに (沢田研二) 🅹

B2 誘われてフラメンコ (郷ひろみ) 🅶

B3 面影 (嶋崎由里) 🅳

B4 至上の愛 (西城秀樹) 🅶

B5 心のこり (細川たかし) 🅹

B6 深夜劇場 (中条きよし) 🅱

B7 みれん心 (細川たかし) 🅶

B8 白いくつ下は似合わない (アグネス・チャン) 🅵

B9 ささやかな欲望 (山口百恵) 🅷

B10 貴方につくします (八代亜紀) 🅷

 

演奏: フィンガーサウンズ

編曲: 無記名

定価: 1,600円

 

「黄昏みゅうぢっく」をご覧の皆様こんにちは。1978年の妄想世界フニルからやってきました4人目の旗手、木山吉子です。今月10日にシングル「帰り来ぬ青春」でデビューしたばっかりです。でも、実は5年くらい前に少年合唱団に入っていて、小さなレコード会社が出した童謡のレコードで歌を歌わせてもらったこともあるんです。なので芸歴はちょっと長いんですよ。歌を作り始めたのは今年になってからなんですけどね。こんな新人なのですが、デビュー前に早くも映画に出させてもらったりして、ラッキーな子だと思います。今回頂いたテープは、そんな私が前お世話になったようなあやしいレーベルから出されたものです。

 

実は私、ローリング・ストーンズが大好き!今年も久々にアルバムが出て、大活躍ですね。コンサートを観ることは多分、この先もないかも…だから、もっとロックっぽいアルバムが回ってくれば嬉しかったのだけど、このテープは半分位演歌…それでも、全然構いません。小さい頃からいろんな音楽を聴いて、良さを吸収してたし、お父さんが歌う「霧にむせぶ夜」とかたまんないなと思って聴いてましたから。で、このテープ、3年ほど前のヒット曲が多く入っています。最初の「あなたの私」って、石川さゆりさんの曲だなんて知らなかった…そんな流行った覚えないし、1曲目の割に地味な曲。でも、歌いやすそうでいい曲ですね。テープ全編で咽び泣くテナー・サックス。これが大人の音、なのかしらね。ストーンズのレコードで聴けるメル・コリンズの演奏と全然違うけど、きっと吹いてみたら私も泣いちゃうかもしれません。「想い出まくら」なんて懐かしいな。意味もわからずよく歌ってました。12歳だったけど(汗)。大好きなジュリーの「時の過ぎゆくままに」は、リズムのとり方が面白いですね。

 

第二次世界大戦のことを思うと辛くなるリリー・マルレーンがここに入ってますけど、もうあんな世の中に向かわないでほしいですね。それを祈って、私も歌っています。私達の帰り来ぬ青春に、泥を塗ることなどしないでくださいね… (木山吉子)

 

無事ストーンズのライヴが観られる世界線を通過して、現実に戻ります。怪しいカセット祭りもこれで大団円に…ありふれた表情がかえって新鮮なジャケット、こういうのをもっと見たいという気持ちもありますが、謎のメーカーの意地の見せ所でしょうか。音の方もいかにもマイナーという感じでせこくはありますが、ドラムの聴かせ方に気合が入っているところがユニークと言っちゃユニークかも。「至上の愛」で聴ける控えめな女性スキャット、その酔いをぶち壊すような強烈なディストーション音など、マイナーらしからぬ展開も。