黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

LFOの波に悪酔いしてジャンクの海に溺れる

CAMEL C-47

ヒット歌謡パレード

発売: 1976年

ジャケット

A1 あなただけを (あおい輝彦) 🅳→22/5/28

A2 追想 (嶋崎由里)

A3 若き獅子たち (西城秀樹) 🅲

A4 北の宿から (都はるみ) 🅰→21/4/28

A5 最後の一葉 (太田裕美) 🅳

A6 少年時代 (森昌子) 🅱

A7 針葉樹 (野口五郎) 🅳

B1 さざんか (森進一) 🅰→21/5/23

B2 さくらの唄 (美空ひばり) 🅰→21/5/23

B3 あいあい傘 (石川さゆり) 🅱

B4 想い出ぼろぼろ (内藤やす子) 🅴→22/5/28

B5 ねえ! 気がついてよ (桜田淳子) 🅰→21/5/23

B6 置き手紙 (細川たかし) 🅱

B7 霧のめぐり逢い (岩崎宏美) 🅳

 

演奏: スターライト・オーケストラ 

編曲: 無記名

定価: 1,800円

 

出た!Z級レーベルの誘惑。このところ、アニソンや洋楽カバーを中心にパチソン熱がごく一部で燃え上がり、音源やレーベルの情報交換が活発にネット上で行われるのを目にするし、それに従ってレコードの価値も俄に上昇してたりすると、風の噂で聞くのだが(実際能動的にその手の情報を探しに行くと胸が痛むので…)、それは果たして歌無歌謡に及んでたりもするのであろうか。某オークションを覗いてみて、「MURO」とか「XXXL」とかと同じ水平線上に「黄昏みゅうぢっく」というタグが記されていたりすると、まじで責任感を覚え塩化ビニールの沼に溶けたくなるよ…

幸い、この盤は普通にジャンクヤードから救済できたのだけど、ジャケット上部が裂けていてそこから盤を出し入れするのが可能な程酷使されていたし、盤そのものもノイズの海に溺れている。たかがパチレーベルから出た歌無歌謡だよ、どこの誰がそこまで酷使するのか…わざと痛めつけたわけでもなさそうだし。恐る恐る盤に針を落とす。ノイズの海の中から、今物議を醸す例の問題の最初期の証言者になり得る人が放ったNo.1ヒット「あなただけを」が流れてくる。小気味よいサウンドの中、妙にモジュレーションの効いたシンセがメロディーを奏で、異次元に誘ってくれる。2番になるとさらに滑稽な音色に変え、異様なボリュームコントロールを加えて余計不安定な境地に陥れる。

このヴァージョンは、丁度1年前に語ったカセット「夜の有線大賞」に収められていたものと同一だが、確かにカセットのローファイな音(しかも聴取環境が小型テレコ)と、針音まみれでは全く印象が異なるし、こちらの方が強烈に思えるのも仕方ない。以下、「さざんか」を含めた3曲が、そのテープと同じテイクとなっているし、他にもエルム系レーベルで出た盤と同じテイクがいくつかリサイクルされている。これはエルムあるあるとして、2曲目追想(歌詞掲載欄では「追憶」となっているが、それはジュリーだろ)に行くと、「Gメン’75」のスケールのでかい世界がチージーなシンセで台無しに。オーケストレーションはエルムの割にしっかりしているし、この温度差はなんなのだ。それこそ、歌のないパチソンの醍醐味としか言えない。さらにおかしいのが若き獅子たち。イントロのトランペットの内1台が不安定な音程なのがやな予感を煽るが、例のシンセの音色でそれが的中。しかし、この曲に限ってめちゃ針飛びしまくり、まともに曲が吟味できない。前の持ち主が秀樹ファンだったのか、複雑な感情を盤に打ち付けた結果なのだろうか…2番のシンセがまじで変な音になっているだけに、これはほんと悲しい。店頭に並べる方も並べる方だが、まぁジャンクハンターのさだめですからこれは。「北の宿から」でやっと、好夫モードのギター(絶対本人ではないはずだ…2年前は「明らかに好夫」とか書いてたけど、やっぱ耳が肥えてきましたんでね)が出てきて落ち着くが、これも既に1度出てきているヴァージョンだ。以下、筒美曲3曲(但し「霧のめぐり逢い」はギターで奏でられ、しかも完成度が高い)や、先にカセットで聴いていた疾走感とのアンバランスが凄い「想い出ぼろぼろ」も含め、チージーなシンセ沼を嫌というほど堪能できるが、個人的には「あいあい傘」に耳が止まる。ここでもギターがフィーチャーされているので、別のプロジェクトから持ってこられたと思われるが、リコーダーのフレーズをフルートでやっている分、コロムビア盤よりは勝ちである(汗)。これに1800円とは、強気な時代でしたねほんと。