黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

テクニカルなジャケットほど開帳しづらい

キャニオン C-1096

スチール・ギター・ヒット歌謡16

発売: 1975年7月

ジャケット

A1 恋の暴走 (西城秀樹)Ⓐ 🅴

A2 千曲川 (五木ひろし)Ⓐ 🅷

A3 巴里にひとり (沢田研二)Ⓐ 🅵

A4 雨を見ていた人 (あべ静江)Ⓐ

A5 初めての涙 (天地真理)Ⓐ 🅲

A6 シクラメンのかほり (布施明)Ⓑ 🅼

A7 ペパーミント・キャンディー (チェリッシュ)Ⓐ 🅵

A8 女がひとり (森進一)Ⓑ 🅳

B1 十七の夏 (桜田淳子)Ⓑ 🅶

B2 よる (中条きよし)Ⓑ 🅳

B3 カッコマン・ブギ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)Ⓐ 🅲

B4 なみだ心 (殿さまキングス)Ⓑ 🅲

B5 内気なあいつ (キャンディーズ)Ⓐ 🅳

B6 面影の君 (森昌子)Ⓑ 🅱

B7 ひと雨くれば (小柳ルミ子)Ⓑ 🅴

B8 ともしび (八代亜紀)Ⓑ 🅶

 

演奏: ラヴ・アイランダーズ+ストリングス

編曲: 小杉仁三Ⓐ、横内章次Ⓑ

定価: 1,500円

 

先月某日、「エロジャケ・ラウンジ」なるイベントに(宗内の母体=DJ Raccoとして)呼ばれまして、ここぞとばかり歌無歌謡の真髄を開帳しました…もちろん、このブログにジャケ写を貼り付ける際、盤で覆ったり帯の位置をずらしたりする類のものばっかり選んだのですが(汗)、それでも音楽的に聴かせる価値のあるものを優先しましたし、お客さんの殆どが女性だったという想定外の展開にも関わらず、受けてよかったです。ちなみに1枚だけここで紹介していない盤があって、「八代亜紀ヒット・メロディー」(昨年11月26日)の項で解明した「Hit Action 1500」シリーズの1枚『日本の詩情/美しき日本の旋律』がそれでした。その盤から流れ出る「早春賦」の長閑な調べのアンバランス感が、その場を大いに凍らせ、違和感なく歌無歌謡(一部ロック含む)に導入できてよかったです。

今日紹介するこの盤も、いかにもなジャケットで(しかるべき位置に帯を被せる以外に処置方法がなかった…けど、「蝶」は隠したくなかった…)持って行ったのですが、聴かせどころに困ったのですよね。スチール・ギターの音に耽美感を覚えるとか、具体的に説明しづらいのもあるし。ただ、このジャケットが絡むと、夏色で健全なはずの音になぜかエロスが加味されてしまう。これこそが歌無歌謡マジックなんですよね。プレイヤー名が伏せられてはいますが、ガチさと親しみやすさが同居した音で、意外と柴田晴代さんという可能性もありますね。もしくは、クラウンに居場所がなくなった山下洋治氏か…ただ、若々しい感触もあるし、断定は難しいです。

聴いてて特徴がわかりやすいのはペパーミント・キャンディーですかね。リコーダーをフィーチャーして可憐さを押し出したコロムビア・ヴァージョンに比べると、かなりフリーキーというか、ファズの効いたギターやギラギラしたシンセが入って派手な音の分、スチールの音のラブリーさが目立つ仕様になってる。そして、サザエさん色も強い(爆)。シクラメンのかほりも、イントロから特徴的なハワイアン・コードが入り、ありがちなヴァージョンと一味違う。この曲、所有枚数は断トツに多いのに、ヴァージョンがまだ13番目。面白い聴き比べができそうなんですけどね。「カッコマン・ブギ」に隠れていたカントリー・フィーリングを滲み出させたり、そこから違和感なく殿キンに導いたりと、魔法を秘めているスチール・サウンド。70年代においても、まだまだ「ナウかった」のです。