黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第21幕

恋焦がれたヴァージョンを一つ欠いたため、ランクが7位落ちました(涙)

 

18位(タイ)

恋の追跡

歌: 欧陽菲菲

作曲/編曲: 筒美京平

作詞: 橋本淳

72年4月5日発売/オリコン最高位5位

 

🅰山下洋治とハワイアン・オールスターズ (編曲: 山下洋治) 21/4/17

イントロだけ並べて聴くとどのヴァージョンも大して差がないのが今回のバトルなのだけど、このヴァージョンには独特のまったり感がある。ブラスが入ってないし、冒頭の音が一拍目から入ってないので間延び感があるし。5小節目のコードにも緊張感が。ただ、曲に入ってからのスチールのキュートな音に引き込まれてしまう。「あっ!」の所の音の落とし方とが激萌え。地味に支えるオルガンや、16ビートを刻むウクレレも盛り上げている。実にいい。

🅱ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 21/4/19

自社らしく走りまくったアレンジ。4チャンネルで聴くとパーカッションに翻弄されそう。Bメロのブラスが1拍ずれていてちょっとこけ気味だが。

🅲ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: ?) 21/5/8

普通に走っているがちょい地味。暴れまくるベースが聴きもので、「あっ!」のところは単独でふんばっているのが珍しい。ファズギターに鄙び感がある。

🅳市原明彦/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/5/28、21/10/18

ここぞとばかりドラムが目立ちまくるサウンド。ワーナー・ビートニックスらしいと言えばそれまでだが、ベースが曲を引っ張りながら全体のベースを落としてるような気がする。途中それこそチェイス感をもろ露呈する方向へとブラスが導かれている。

🅴松浦ヤスノブとテイチク・オーケストラ (編曲: 北野ひろし) 21/7/23

71年までのテイチクからは想像できないタイトな走り方、分離もよくてなかなかいいヴァージョンなのだが、これが入った2枚組『歌謡ポップス・リクエスト』に14曲中13曲抜粋された山内喜美子さんのアルバムから、唯一選ばれなかったのがこの曲という事情により、聴いてて複雑な気分にさせる…意図的に間延びさせたり、ファズでちょいサイケな方向に行ったりして、いいアレンジではあるけれど、やっぱ「太陽がくれた季節」の衝撃を思うと、山内ヴァージョンの不在が惜しい。

🅵三笠輝彦/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 青木望) 21/8/22

イントロに妙なビート感があり、曲に入ると🅰とも違ったまったり感に包まれる。一言で言えばアダルトな感じ。遠くの方でオルガンが存在感を出している。

🅶奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 21/9/11

「今宵踊らん」ヴァージョンなのに、他と大して差がないのが不思議。ピアノや一部ブラスに保守的な響きを感じるが、ブラスで躍動感というのは元からあるため、あと東芝だし、オリジナルに熱い眼差しを送っている感がある。2コーラスで転調し、ちょっぴりジャジーなムードが出てくるのがユニーク。スネアの音も地味に面白い。

🅷ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 土持城夫) 21/12/1、22/3/14

ラクルサウンズ同様、ちょっと鄙び感があっていかにも「初期の音」。コンガが目立ち過ぎというか、左に寄りすぎ。「あっ!」のところの音が謎だ。

🅸MCAサウンド・オーケストラ (編曲: ?) 22/1/10

「ふたりは若かった」同様、これも土持アレンジの可能性があるが、🅷と決定的な温度差があり、こちらは全ヴァージョンの中でも最も走った演奏。エコーも強く、全体の音にスパイスを振りかけている。レーベルカラーの違いが大きい。

🅹マーキュリースタジオグランドオーケストラ (編曲: ?) 22/3/7

めちゃ鄙びているはずのマーキュリーなのに、イントロで一丸となって襲い掛かるところはそのイメージを覆している(汗)。地方のキャバレーバンドなりにがんばっているという感じだが、強いて言えばドラムが普通すぎ。

🅺大野雄三/ワーナー・ビートニックス (編曲: 小谷充) 22/3/19

ハーモニカに合わせてかペースは若干落とし気味。これまたイントロ5小節目のコードが不安感を煽るが、ユニークなアレンジ。特にBメロの意表の突き方がはっとさせる。16ビートを刻むハーモニカというのは滅多に聴けるもんじゃないよ…

🅻原田寛治とオールスターズ (編曲: 前田憲男) 22/4/10

ドラムだけ際立ちがちなミックスはされているのだけど、疾走感もしっかりあって乗れるヴァージョン。ドラムソロは僅かな長さだが、音処理まで含めてアイアン・バタフライ感が強く過激な響き。エンディングがしつこい。

🅼バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ (編曲: バッキー白片) 22/4/27

思わずミックが叫び出しそうな冒頭から歌に入る直前まで、独自の処置が実にバッキーらしいし、Bメロの合いの手まで改変。間奏など「二人の銀座」へのオマージュ感まである。本来の意味での「アレンジ」術を思い知らされるヴァージョン。でも不思議と乗れる。

『バッキー白片 ニュー・ヒット歌謡ベスト14』

🅽コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 荒川康男) 22/5/1  

荒川康男らしく大胆にいじってはいるのだけど、元からファンク感がある曲だけにそこまでのヤバさは感じない。ベースが暴れている割に目立たないミックスのためか。熱いギター・ソロまで含めて、アルバムでこの後に続く「鉄橋を渡ると涙がはじまる」のファンク地獄への序曲といった趣きだ。

🅾ザ・ゴールデン・ブラス (編曲: 鈴木邦彦) 23/6/25

最後は正統派ブラスロック仕立て。ドラムなどを抑え気味にミックスして、ブラスの迫力を強調している。鈴木邦彦先生の筒美氏への熱い眼差しを感じるヴァージョン。葉山ユリの「17才」なんてコケてたんだけどな…(汗)

 

以上、15ヴァージョン(17枚収録)。意表を突くという点で🅰に王冠を。参考までに、山内ヴァージョンのリスニングレポートはこちらに(汗)。