黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第14幕

また逢う日まで」は7ヴァージョンしか集まらず(しかもそのうち1つは「ひとりの悲しみ」…汗)。その分、続くこの曲に期待が集まったというわけですね。

 

25位 (タイ) 

さよならをもう一度 

歌: 尾崎紀世彦

作曲/編曲: 川口真 

作詞: 阿久悠

71年7月25日発売/オリコン最高位2位

 

🅰ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 福井利雄) 21/5/21

ブルーナイト名義のファースト・アルバムの1曲目という名誉たる位置に選ばれた名演。落ち着いて聴けるけど躍動感高い。地味にベースが暴れているし、女性コーラスが爽やかに盛り上げる。ちょっと高い声が苦しそうだけど初々しい。

🅱三笠輝彦/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 田辺信一) 21/7/4、21/11/21

こちらもワーナー・ビートニックスとして初リリースの盤に収められていたもので、歌無歌謡新時代の曙を象徴する曲の一つになった。最後の方でフリーフォーム度が加速して断片化したような演奏になるものの、なかなか落ち着いた出来。

🅲稲垣次郎、オール・ヒット・パーティーズ (編曲: 河村利夫) 21/7/18

「オール・ヒット・パーティ」は短命に終わったものの、これも新時代突入の色が濃い。ただ、コードを簡素化しているところに場末色が残っていて、そこが若干減点ではあるけれど、ファズ・ギターが暗躍してたりしてALS品番のイメージから脱却する様子が伺える。

🅳木村好夫/キャニオン・ポップ・サウンズ (編曲: 竹村次郎) 21/8/6

ちょっぴり乗りは軽いが、例の好夫ギターが全開していて真夜中のドライブムードが充満する。不気味に忍び寄るチージーなオルガンも無視できない。

🅴石丸元、田中清司/ユニオン・オール・スターズ (編曲: ?) 21/8/11

ロックフィーリングと場末感が同居したいい演奏だが、「花嫁」や「知床旅情」の破壊力を前にすると地味。最後の方に行くにつれて爆裂するドラムは、恐らく石松氏一人によるものだろう。

🅵いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/8/16、22/3/1、22/4/7

例の調子で場末色が濃いいとうサウンドだけど、安心感は只者ではない。絶対このベースは寺川正興だろう。

🅶市原明彦/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/10/25

こちらもビートニックスの初リリースのもう一枚に入っていたもの。🅴と聴き比べるとはっきり個性が刻印されたドラムをフルに活かした録音技術が、正にワーナーの面目躍如。三笠サックスや、フレージング的に🅵に共通する部分もあるので寺川氏の線が濃厚なベースも花を添えてのパワフルな演奏だ。

🅷中西義宣とビッグ・サウンズ (編曲: 高見弘) 21/12/20

典型的なビッグバンドサウンドで特に派手なカラーを感じないけど、全体から見れば最も場末感が強いという印象が浮かび上がる。

🅸グリーンポップス・オーケストラ (編曲: ?) 22/1/12

ブルーナイトのミノルフォンカラーと意図的に区別を図ったかと思えばそうでもない。当時の若者に向けたヒップなアルバムのオープニングにするには地味だったか。女性コーラスの聴かせ方も🅰の勝ち。

『ヤング・ヒット・ポップス・ゴー・オン さよならをもう一度』

🅹テイチク・オールスターズ・オーケストラ (編曲: 土橋啓二) 22/1/21、23/11/10

先月10日取り上げた実験的アルバムの最後に入れられたヴァージョンでは、いまいち地味な印象しかなかったが、コンピ盤でアレンジャークレジットを再確認して納得。エコーの深い場末感溢れる音場の左側にたたずむオルガンがチージーすぎて特異。

🅺まぶち・ゆうじろう’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 22/2/21

サックスがむせび泣くだけで最早安心感が。いとうヴァージョンほどのこじんまりイメージはないものの、これが王道歌無歌謡だ。ベースは寺川っぽいが他の人が意識して弾いてる可能性も。

🅻奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 22/4/2

めちゃテンポを早めている「今宵踊らん」ヴァージョン。これを宴の最後に流すと余韻が遠のきそうだ。16回転再生モードを搭載したプレイヤーで流せば効果覿面かも(爆)。「今宵踊らん」で好夫ギターが聴けるのは異例。

🅼オーケストラ・ルミエール・ブルー (編曲: ?) 22/5/16

ラクルサウンズ以前の東宝に残された貴重なアルバムより。演奏が所々噛み合ってなく、鄙びたイメージがあるけれど、それは制作者の不慣れさの現れかも。

🅽長芝正司、小津昌彦/キャニオン・ポップ・サウンズ (編曲: 中島安敏) 23/11/9

左右のチャンネルでドラマー二人がせめぎ合い、何の曲を演ってるかさえ最早関係なくなっているヴァージョン。中立を装いつつ地味に自己主張するベースに耳が行ってしまう。

 

以上、14ヴァージョン (18枚収録)。一部ヴァージョンに感じられた「オー!ダーリン」感をより強調するヴァージョンが続出する曲が、明日登場します…